清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使⑤
「あの まずい すごく悪いんだけど今日は帰ってくれないか?」というと
きょとんとした
「あの連れが帰ってきてたぶん酔っぱらってる 酒癖が悪くて・・・」
青龍はぼそぼそ言った
「ああ 君はハネムーンなのか?」向こうがとんでもないことを言ったのでびっくりした
「ちがうちがちたちがガチガチ」首を振ると
「どうしたんだ 急に慌てて」不思議そうな顔をした
「違うんだ あいつは血族で まあ母親というか」なんだっけ
「まあそんなもんだ とにかく酒癖が悪くて」そこまで言うと甲高い歌声が聞こえた
何この曲 さざえさんのテーマなんでだ?
でもまだ向こうはまだ気づいていない
「じゃ 失礼するよ 楽しかった」天使は立ち上がった
なんだか急に罪悪感に襲われた
「あの 山で寝てるのか?いくら天使でもあそこは寂しいだろう」思わず口が動いて言った
天使は信じられないほど知的な目で俺を見て言った
「大丈夫泊まるところくらいある それより君は部屋にこもりっきりなんだろう」
「ああそうだが・・・・」
「じゃあ よかったら 明日案内しようか 迎えに来るし通訳するよ」
「ええ いいのか」 思わず感動してしまった
俺は親切に慣れていない さすが天使なんて親切なんだろう
そのとき (じゃーんけーんぽーん うふふふ)などという下劣な声がしたので慌てて結界を張った
天使は立ち上がって窓に向かった それから手を伸ばして自分を抱きしめた
何が起こったかわからなかったがそこには微塵もいやらしさはなく芝居がかってもいなかった
伸びやかな腕は暖かかった
(これがハグってやつか)と思った時 油断して結界が切れたらしい
「ちょっと 何やってんのよ」と言いながら葛の葉が入ってきた
そして絶句した
固まった葛の葉にも笑って手を振ってその姿は消えてしまった