清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使㉙
けんけんけのけ
とうりゃんせ
いつもの歌を過ぎてお茶室に入る
座ると葛の葉がすぐに口を開いた
「聞いたか 宣戦布告じゃ」
「ああ だが時間がない」青龍が答えた
「延泊はかまわんよ」葛の葉は慣れた手つきでお茶をたてながら言った
「やった キッシーから式神が来たのか?」思わず身を乗り出した
「ああ来たが お前何を書いた?」 葛の葉が赤く燃え立った炭の様なものを懐紙に包んで出した
「なんだこれ あちちち」つまんで開けると怒りが凝縮されたような字で
( 俺は 平気でうそをつく人間が嫌いだ )と書いてあった
「ええ 俺 嘘なんてかいたかあ?」青龍は考えて青くなった 嘘しか書いてない
「あのね いくら偽装結婚でも一応 夫でね、スポンサーなんじゃ怒らせるな だからわしから
お母様に連絡した」葛の葉がため息をついて言った
「んで?」 青龍は一礼して茶碗を取った
「いい まずね 今回は相手の正体がはっきりわかっていないのよ これは致命的
そしてね いわゆる戦的な戦いじゃない 天使を守らなければならない
そのことを話したらね
石榴姫を送ってっくださるとおっしゃった」
青龍は思わずお茶を吹き出してしまった
慌ててぬぐったが 畳から狐の形の頭が伸びて来て正坐した足にかみついた
「わあ悪かった 悪かった」 狐たちは作法に厳しい
それでもまさかこんな名前が出るとは思わなかった
畳から生えてきたキツネがいなくなってから 「石榴姫だと」もう一度つぶやいた
葛の葉が真顔でうなづいた




