清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使 ⑮
狐のお茶室の狐時間
「ちょっと 起きなさい」狐の声がした
また風呂で眠ってしまった
どこにいても日々の規律は出来上がる
風呂で眠るのが習慣になってしまった
自堕落だ わかっているが気持ちがよくってやめられない
バスローブで出て行くと 「ちゃんと服を着なさい 気まずい映画の男優みたいな恰好ばかりして
だらしないんじゃ」と怒鳴られた
「お前はなんで 大阪の千日前のおかんみたいになってるんだ」
あれ、目の前がよく見えないと思ったらなんかに思いっきりぶつかってひっくり返った
「うぐぐぐ」しばらく額を押さえて耐えたが痛みが引かなかったので絨毯の上をぐるぐる回って
痛みが引くのを待った
よろよろ立ち上がると目の前に強力な結界が張ってある
その中から狐がにゅうと顔を出して言った
「何で千日前限定なんじゃ?」
「じゃあ 韓国の南大門だ それなら満足か?」
「まあいい」 「いいのか なんだその線引きは」
「それよりお前何を持ち込んだ?」
「狐のお茶室」 「なんだそれ?」
「お茶をたてるって言ったでしょう だから借りたんじゃ稲荷様に」
俺は落ち着きを取り戻しつつ言った
「ああ天使にか? なんでお茶室まで持ってくる必要がある それにお前ずけずけ言うなよ
相手は傷ついているかもしれないんだ それにしてもよく稲荷様が貸してくれたな」
「お前が困っているって式神とばしたら速攻で来たぞ 愛されてるねぇ」と言って狐がニヤッと笑った
「それは俺があの人のわけのわかない悩みをよく聞くからだ どの辺が悩みなんだかさっぱりわか
らんが・・・」
「たぶん 全部なんじゃろう それに本当に傷ついたことはなかなか言えんものなのよ
お前はだって全力で金粉少年だったこととか 玄武様のマグロとして愛用されたことか知られたくない
でしょ」
「頼む言わないでくれって言うか言わないでください お願いします」 知られるのも嫌だが思い出すのも嫌だ
「だから私が仲介に入ってあげるから お茶室を借りたのは中は狐時間になってるからなの
15分もかからんとにかく服着て来なさい」
と言って顔が引っ込んだ
なんという押しつけがましさだろう でも時間もないし俺も気になるのでしょうがない




