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冒険者ギルドで働いてます

タイトル考えて思いつかなくてテキトーに決めたんですが、なんか書籍化したなろうの小説で、こんな感じのタイトルのものがあったような無かったような…。

自分のやってきた事が…大袈裟に言ってしまえば人生が、どうにも情けないものに思えるようになってしまったのはいつからだろうか。自分では一生懸命頑張ってきたつもりでも、ソレに結果は伴わず、頑張ったと言い訳をしても、言い訳したせいで自分が余計に情けなく思えてしまう。

別に失敗したわけではない。どちらかと言えば、まだ良い方なのかもしれない。でも、それじゃあ満足できない自分が居た。なんで、満足できなくなったのかは一応分かっている。簡単に言ってしまえば、下らない事だ。

下らないことだと分かっていながら詰まらない生き方をしてしまっている自分が、余計に嫌だと思った。

こんな事ばっかの俺の思考はループして、どんどんと下へ下へと落ちていくことがハッキリと分かった。




「っあーっ! 一汗かいた後の水浴びはいいなァ!」


「そうですね」

目の前に居る大男が豪快に桶いっぱいの水を頭からかぶっていた。

当然、周りの事など気にしているわけもなく、水しぶきが俺へとかかった。今いるのは訓練の後などに水浴びをするためだけの部屋。

元々は屋外にあったのだが、ご近所に色々言われて水浴び場を簡単に壁で覆ったらしい。

大男が頭を横に振ると、短くそろえられた髪(お年もあり少し薄め)についた水がこちらに飛んでくる。俺はそれを気にすることはなく、俺も大男同様に桶いっぱいの水をかぶった。

ヒンヤリしている水は運動した後の火照った体には余計に気持ちいい。


「何と言うか、こう…気持ちいいものがあるよな」


「そうですね」

簡単に気持ちいいと言えば良いのではないか、と思ったが言わないでおこう。無駄に訂正しようとすると、本気ではないが殴られる。理不尽に殴られる。

本気ではないと言っても痛くないわけではない。痛いのは嫌だ。


「普段訓練生の相手ばっかさせられっから、体が鈍っちまいそうでよ…ホント、お前みたいな丁度良い相手が居てくれて助かるぞ!」


「こちらこそ、ガイルさんと練習試合させてもらってありがたいですよ。

ガイルさんの戦い方見てると自分に足りないものがいくつか見つかりますし」

この目の前の男、ガイルは普段冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受けられない様な低ランクの冒険者に訓練をする事が仕事の人だ。そういう仕事を受ける人は他にもおり、ガイルさんも同様であったが依頼を受けていない暇な時に小遣い稼ぎとして訓練をする事が多い。

この頃のガイルさんはもう60近くなので、依頼を受けることを控え低ランクの冒険者の訓練を熱心に行っている。

それでも、この人は十分強い。まだまだやっていけるレベルだ。さすがはBランク冒険者である。

ちなみに生活は、この都市の中でも大きな商会に勤める息子さんが養ってくれているらしい。


そんな半分引退状態のガイルさんのムッチムチな筋肉ボディは水で光が反射して輝いて見える。


「それにしてもガイルさん、相変わらず筋肉凄いですね」


「あ? おう、俺の自慢の筋肉だかんな!」


「触っていいですか?」

こういうモリモリ筋肉に小さいころ憧れたことがあった。

鍛えても鍛えても、こうはなれなかったけど。


「おい、やめろ! 俺は野郎に触られて喜ぶような性癖はしてねぇ!!」

俺がつい、という感じでガイルさんの方へと手を伸ばした。そして、俺から逃れるように身を引いているガイルさんの体に手が触れる瞬間…。


「何をしているんですか、ユートさん」

扉が開き、そこから一人の女性がこちらを見て呆れた表情をしていた。

俺はそれに思わず固まってしまわずにはいられなかった。


「あなたに話すことがあります。それに、もうすぐ受付に入ってもらう時間です。早く体を拭いて服を着て来てください」


「…あ、はい。了解です、ミリアさん」

俺が返事したのを確認すると、その女性…ミリアは扉を閉めた。



「……俺、すっぽんぽんだったんですけど」


「あ? 別に気にするようなことじゃねーだろ。それよりも、お前は大男相手に手をワキワキさせてた場面を見られたことを心配しろや」




   ─  ─


「やっと来ましたか。

何をしてたか分かりませんが、自分の仕事の事をきちんと考えて行動してください。別にあなたが何をするかは勝手です私はあなたを束縛するつもりはありませんよ、何をしようとも私はあなたの味方です。

なにをしても…どんな性癖でも、です」


「仕事のことを考えず時間かけてしまい申し訳ありませんでした、ミリア様」

俺はホモじゃないです。筋肉に憧れていただけです。


「さて、では本題ですが少し前にこちらのウェールズさんに冒険者の方々から連絡がありました」

ミリズさんの横でウェールズが「はーい」という様な感じで元気に手を上げ椅子ごと回っていた。


「連絡ですか?」


「はい。

あなたが数日前に受付で対応したケモノ森の依頼ですが、ダブルブッキングとなっていた様です」


「え、…でも俺はちゃんと確認したはずですけど」

ダブルブッキングとは同じ依頼が複数の冒険者ギルドの支部に貼られていた際に、本当にたまたま同時に依頼を受けてしまう事だ。

基本的にこういう事が起きないように冒険者ギルドの支部で依頼を担当する範囲を決めており、その範囲での依頼しか貼らないようになっているのだが、2つの支部の範囲と範囲の間に魔物関連の依頼が発生しやすい森や洞窟などがあり(今回の場合ケモノ森)、こういった場所関連の依頼でダブルブッキングはなりやすい。

こんな事にならないように支部同士で定期的に連絡を取り合っているし、基本的に依頼主には複数の支部への依頼はしないよう頼んでいる。


「はい、私が確認しましたけどユート先輩は問題なく依頼の対応してましたよ」

ウェールズが俺の不安を消してくれた。


「今回の場合は、依頼主はこちらに先に依頼をしていた様なのですが、なかなか依頼を受けてくれる冒険者がおらず焦った結果もう片方の支部へも依頼したようです。

その際、こちらへ依頼していた事を伝えるのを忘れてしまっていたのも今回のダブリの原因の一つにもなりますが、それは今回気にすることではありません。依頼主への注意はあちらの支部がやってくれます」


「じゃあ、今回の問題って?」


「今回のダブリで負け…つまり依頼の受諾をしたのが遅かったのは我々の方なのです。

つまり、こちらから送った冒険者は無駄足を踏みました。冒険者ギルド側のミスで」


「…っ」


「これにより、今回の措置はケモノ森への運賃の支払いと5000ギルまでのギルドショップによる買い物を半額。それと1食限定ではありますが、ギルドの横にある食堂での食事もタダになりました」

本来、依頼された場所へのお金は報酬に入っている。だが、今回依頼を受けたのに報酬はもらえない。だからギルドから運賃を払うというわけだ。

ギルドショップとは依頼に出かける際の魔物を狩るための罠や剣や盾、防具や応急処置を行なうための『冒険者セット』など冒険者にとっては必要な物が揃っており、よく買われるのは冒険者だけではなく旅人も買ったりする携帯食料だろう。でも、その分だけ少し高い。

正直言うと、この処置は冒険者からすると凄く嬉しいものだ。


「今回ユートさんのミスではなく、あちらの支部に依頼されたのもダブりがないか確認の連絡をしたすぐ後だったようで、あちらの支部もこちらも知ることが出来ないものでした。なのでミスというより事故といった扱いになります。なので、私からも支部長からも説教などはありません。

ですが、今回被害を受けた冒険者への謝罪はユートさんがする必要がありますので、宜しくお願いしますね」


「了解しました」

正直、一番これが面倒だと言ってもいい。人によっては噛み付かれる。


「よし! では報告も終えたので私達三人は受付に回る時間です。行きますよ」


「はーい」

ミリアさんの言葉に元気よく返事したウェールズと、ちょっと気が重くなった俺はミリアさんの後ろについて歩き出していた。ミリアさんの後ろで一つに纏められた髪を引っ張りたくなった。

受付のために事務室から出れば、受付とその横に依頼が貼られる掲示板、そして他のスペースは冒険者が座る椅子とテーブル、そして依頼も受けずに暇を酒で潰している冒険者(酔っぱらい)どもだ。





受付の仕事はわりと簡単だ。

ただ冒険者が依頼を受けに来るのを待つ。それ以外の時は書類があるときはそれの処理、無いときは暇を持て余すだけである。ちなみに俺、ウェールズ、ミリアさんの配置で座っている。

時々、同じ依頼を受けようとして冒険者同士の争いになるが、これらは俺達が止める立場だ。俺の場合はよくコイントスで決めることが多く。コイントスで勝った奴は依頼が終わった後に負けた方に酒一杯奢れ、という事で終わらせる。それでも不満をもつ冒険者は居るが、その時は優先して楽で報酬の多い依頼を回せばいい。



「それにしてもアレですよね、ミリア先輩とユート先輩が受付に居る時って一番掲示板の辺りが静かになりますよね。

なんでですか?」


「いや、静かではないだろ。昼間っから酔っぱらいばっかだし」

冒険者ギルドはいつもガヤガヤ煩い。俺が言った事に対して『俺は酔っ払いじゃねぇぞぉ、馬鹿ゆぅと!』と大声で言った後、周りの奴らと一緒に大きな笑い声を上げながらビールを一気に飲んでいる奴まで居る。

馬鹿といったほうが馬鹿なのだ。


「ウェールズさん、彼はまだまだ仕事は半人前ですけど一応Aランク冒険者でした。ここの大体の冒険者は彼の実力は認めてますから…簡単に言うと怖がってるんですよ」


「どちらかと言ったらミリアさんに良く見られたいってだけで騒がないヤツのほうが多いと思うけどね」


「へー、ユート先輩ってAランクだったんですか。元冒険者って事しか知りませんでした。

…あ、そういえばユート先輩って有名な人達とパーティ組んでたんでしたよね?」

俺の言葉はスルーされたようです。

ちなみに酔っ払い共は細かくヤジを飛ばしてくる。それらを俺がスルーしているだけだ。


「そうですよ。

Sランク冒険者になってから国からスカウトされて騎士団に入った『炎帝』サイラス、そしてSランク目前でサイラスと同じように国からスカウトされて宮廷魔術師になったシリウス。今、話題の2人ですけど、どちらもユートさんと同じパーティでしたね」

もう国にスカウトされてから3年ぐらい経っているのに、まだあいつらは話題の2人なのか。


「へー……そんな有名で国にスカウトされる人達とは違い、何でユートさんは冒険者ギルドの支部で働いているんですか?」

ウェールズのその質問に俺は答えたくないのでそっぽを向いているが、どうやら元々俺に聞いていたわけではなくミリアさんにウェールズは視線を向けていた。

そして、くそ酔っ払い共が腹を抑えて笑いを堪えているのが無性に腹が立つ。


「もともとシリウスは才能があったとしか言えませんね。でも、サイラスはダンジョンの奥で強力な炎を操れるマジックアイテムをシリウスと一緒に見つけたんです。

まあ、マジックアイテムは万人が使えるようなものでもありません。こちらも結局のところ才能としか言いようがありませんね。現にシリウスはそのマジックアイテムを扱うことが出来なかったようですし」


「…? そのシリウスさんと一緒って? ユート先輩はどうしたんですか?」

そこでどうやら俺に話が振られたらしく、首おかしくなるんじゃねーのとしか思えないような勢いでウェールズがこちらを向いた。


「……」

それに対しても黙っていると、ウェールズの向こうのミリアまでこちらをジッと見つめてくる。理由を知ってるくせに…。

…。

……。


「…微熱だよ」

そこで堪えきれなくなった酔っぱらい達が盛大に吹き出し始めた。

『何度聞いても笑えるぜ』『せっかくのチャンスを微熱で…っ』『ぶふぉッ』『きたねぇ!! 酒吹き出すんじゃねぇよ!』『ユートたん可愛い』というようなものが聞こえてきた。最後のには寒気がした。


「仕方がないだろ! 少し体弱ってるだけでも危険だって言われて、ベッドに押し込まれたんだからよ!」

俺が怒鳴っても酔っ払い共は静まることを知らない。

実際ダンジョンは魔物が普通よりも強力になり、地上とは違い魔物に限りがない。そんな所に弱った体でいくのは危険だし、ダンジョンはまだ解明されていない事も多く、なにか病気になるような菌が居たかもしれない。

だから仕方がなかったことだ。

そう、仕方なかったのだ。


「まあ、とりあえず…そのダンジョンで見つけたマジックアイテムを使いこなしサイラスはユートさんがCランク冒険者だった時にSランク冒険者へと一気に昇格。

元々、魔術師として優秀だったシリウスは研究結果を魔術協会に時々提出していて目をつけられていたようで丁度いいから、という感じでサイラスと同様に国にスカウトされて今の立場という事です」

ミリアさんがそういった後に、ウェールズの耳元に口を近づけこちらをチラチラと見ながら付け加えるように話しだした。


「これは内緒ですが、一気に突き放されたユートさんは努力して努力して2人を追いかけて結果Aランクまで来れたけど、結局追いつけなくて落ち込んで、逃げて冒険者を辞めた結果が今のお仕事です。

そのくせ、逃げた事にいつまでもくよくよしてるんですよ。もう、この仕事に就いてから2年は経っているのに」

聞こえているからな?

ミリアさんの隠され無さすぎな内緒話が追い打ちをかけたのか余計に酔っ払い共を煩くさせた。


「実際Aランクでも凄いことです。しかもユートさんの歳でAランクと言ったら天才と言っても良いレベルでしょう。先程から騒がしい酔っ払ってる冒険者たちは大体がBかC、それ以下の人たちは今もランクを上げるためにせっせと依頼を受けてますから。

でも、2人の仲間に置いてきぼりをくらってるみたいで満足できなかったんでしょうね。Aランクでは」


「そうなんですか、ユート先輩…可哀想な子」

こいつ腹立つ。


「あ、でも確かその2人って今、むぐっ」

ウェールズが何かを言い出そうとした時にミリアさんが口を抑え、耳元で此方には本当に聞こえないほどの声で何かを言ったのが見えた。そこから4秒程度で伝え終えたのかミリアさんはウェールズの口から手を離す。


「…やっぱり、なんでもないです」


「…?」

なんだ、どうしたんだ?

またあの2人が凄いことでもやったのだろうか? それをミリアさんがわざと俺に伝えないようにでもしているのかもしれない。

何故だ。何か2人が凄いことしたんだとしたら、手紙でも送って祝ってやるのに。


「さて、私とユートさんはもう今日のお仕事は終わりの時間ですね。ウェールズさんは夜まででしょう?」


「はい、お疲れ様でした」

もうそんな時間か。窓から外を覗けば真っ赤に染まった空が見える。

夕暮れだ。


「私は着替えて来ますけど、ユートさんは?」


「俺の私服はガイルさんとの訓練でボロボロになって捨てちゃったから、このまま帰るよ」


「そう、じゃあ待っていて下さいね」

俺が返事する前にミリアさんは既に事務室への扉の向こうへと消えていた。

ウェールズと話しながら、少し待っていると今まで一つに纏めていた髪をほどき冒険者ギルドの制服から着替えたミリアが出てきたのでウェールズにお疲れ、と言って立ち上がった。


「せっかく早めに帰れるのだから、今日は私が料理しましょう」


「え、いや…でも」


「ふふふ…私、これでも料理の練習したんですよ? この前のように焦がしたりはしません。

お隣のカーラお婆ちゃんに習いましたので!」


「う、ん…じゃあ、それならミリアを信じようかな……うん、信じる」


「ええ、その信頼に答えるために頑張ります。

ちなみに何が食べたいですか? いつまでも、くよくよし続けるあなたのために好きなものを作ってあげましょう」


「んー…ゆで卵とか?」


「分かりました。今日はシチューにしましょう」

絶対ミスしないであろう料理(?)を言ったがミリアには無視された。

ちょっと晩御飯の事が心配になりつつも俺はミリアと共に冒険者ギルドを出た。




そんな2人が出て行った冒険者ギルドでは…。


「イチャイチャしやがって…くそがっ。

本人はなんだかんだ言ってるが、結局あいつも成功してる方だろ」


「綺麗で仕事もできる完璧なミリアさんと結婚してる時点で……ミリアさん料理下手なんだな。なんか興奮するわ。

俺もシチュー食いたい。失敗して焦げててもいいから食べたい、皿まで舐めたい」


「お前気持ち悪いぞ。

そういえば、あれだろ? ミリアさんがユートに知られないようにしてっけど、サイラスのやつ何が理由かまでは知らないが女性不信になってるんだろ? それにシリウスは仕事に熱中しすぎて嫁と子供に逃げられたとかいう話もあるし」


「ユートはなんだかんだ言ってサイラスが憧れみたいなもんだからな。知らせたくないんだろうよ…まあ、あくまで噂の話だから事実かは分からんがな」


「はー…リア充むかつく」

そんな事を言いながら酔っ払いたちは更に飲んでいく。

主人公が2人の元仲間と比べてばっかりで自分の幸せが見えていない、という様なものを書こうとしたんですが昨日8時間近くかけて書いてみて自分が書こうとしたものとは少し違ってました。

なかなか上手くいきませんね。


誤字・脱字があればご報告宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 俺は闇、の第二部?あたりから焼き芋さんの作品を読ませてもらってますが、何か文章の雰囲気が変わったかなと今回の短編を見て思いました。 主人公が徹夜君じゃないので、一人称での物事のとらえ方や考え…
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