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Re:氷天の波導騎士  作者: 牡牛 ヤマメ
01〈勇者の帰還〉編
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終章〈帰るべき場所〉

 

 帰りのホームルームを終えるを告げるチャイムが鳴ると同時に机の脇にかけた鞄をひっ掴むと、教室を飛び出して一目散に玄関に駆ける。その背後を幼女先生が怒鳴りながら追いかけてくるのを適当にあしらって校門を飛び出すのが、ここ最近の日課となっていた。

 右目の視界にちらちらと入る包帯の端。俺は走りながら片手で器用に取っ払うと、そのまま鞄のなかに無造作に突っ込んだ。


 あの激闘からすでに二週間が経とうとしていた。

 魔術師を自称したテロリスト・ディクトリア=レグルドはニーナの渾身の一撃でほとんど事切れていたらしく、俺の波導で完全にとどめを刺された形になったらしい。『組織』の調査員とやらが教会を訪れて確認したことをアウルに教えてもらった。

 その後、相次ぐ爆発にニュースなどでテロリストの仕業だと大騒ぎになり学校も臨時休校になりかけたが、『組織』が裏で根回ししてくれたらしく今ではすっかり風化した話題となっている。

 そして教会の地下室に幽閉されていた子供たちは『組織』が迎えに来るまでアウルが預かり、俺も暇さえあれば彼女を手伝っていた。

 最初はニーナのように怯えていた子供たちだったが、俺たちの献身的な世話のおかげか、はたまたニーナの口添えがあったからか、すぐにとはいかずともわりと早めに打ち解けられたと思う。どうしてか年長組だった女の子たちになつかれてしまい、何度か泊まるはめになった。

 科学者に慰み者にされたのだ。男である俺なんかには近づくのも苦しかったはずなのに不思議でならなかった。訊いてみたところ、彼女ら曰く「お兄さんの近くはポカポカして落ち着きます」とのことだ。俺はどっちかって言うと冷たいと思うのだが。

 しかしそれも一週間前まで。『組織』の使者が迎えに来て、本拠地に帰っていった。

 今ではあの騒がしさが嘘であったように静かな時間が流れている。

 俺の隣には、誰もいない。


「…………」


 俺は息を整えながら自動ドアを潜る。すると目敏く俺を発見したらしい顔馴染みになったカウンターのお姉さんがにこやかに手を振ってくる。苦笑いを作りつつ手を振り返して、目的地に歩を進める。

 いくつかの角を曲がって一番奥にある白く清潔感のあるドアの前に立った。

 その脇の壁には彼女の名前の書かれたネームプレートが掛けてあった。ここが彼女の部屋であることを確認。何度も来ているから間違うことはないだろうが、同じようなデザインばかりでもしかしたらということもある。

 確認も済み、ドアを開けて部屋に入る。

 開け放した窓から吹き込む風にカーテンが揺れている。部屋の中央にはベッドがあり、その上に――半裸の少女が背を向けて座っていた。


「え、先輩……?」


 飛び込んできた光景に無意識に思わず息を呑んでいた。

 そこにいたのは暴力的なまでの美貌の少女だったからだ。

 細身で華奢、儚げな印象ではあるが、内に秘めた研ぎ澄まされた刃のような鋭さがある。幼さが残しながらも均整の取れた体つきとすらりと伸びた背筋。美を体現したような少女が、肉付きは薄いが柔らかそうな曲線を描く胸元を隠すように服を手繰り寄せている。

 ぎこちない仕草で半分ほど振り返った彼女は一瞬だけ驚きに目を見開いたかと思えば、すぐに蔑むように細めた。


「せめてノックくらいしたらどうなんですか?」

「あ、いや……悪い」

「そう思ってるなら早く閉めてください。私の裸を誰かに見せるつもりですか?」


 光をも凌駕する勢いでドアを閉めた。バキッ、と金具が壊れる音が聞こえた気がするがどうでもいい。


「なんでそんなに慌ててるんですか……」


 透き通るような白い肌をほんのり赤く染め、真宵後輩は呆れ声で言った。

 そりゃあ慌てるだろう。真宵後輩の肌をほかの誰かに見せてたまるか。

 つんと澄ます真宵後輩の横顔に、俺は安堵を覚えた。

 あのとき、俺はほんとうに真宵後輩が命を落としたのかと思い我を忘れて慟哭した。なにせ精霊の代わりに術式を組み上げるなど前代未聞の事態である。ただでさえ波導をまともに制御できていない状態でそれを行い、全身から血を噴き出して昏倒すれば勘違いだってするだろう。

 俺の慟哭に呼応して体内に内包された波動が暴走。復元されたままの天剣が叩き込まれたエネルギーで形状が変化するほど波動が封入され、礼拝堂に絶対零度の竜巻が吹き荒れた。

 左目からは血涙がとめどなく溢れ、全身に浮かんだ幾何学的な模様がどす黒く変色していく。

 アウルやニーナの声など耳には届かない。

 ただただ白塗りの感情に心を押し潰され、化物に成り下がろうとしていた。

 しかしその直前、真宵後輩の一言が俺を踏みとどまらせた。


「うるさいです」


 真宵後輩らしい一言だった。空気の読まない実に彼女らしいひと声によって、しかし俺は我に返ることができた。

 だが安心するには早かった。真宵後輩の軽口に反してやはり精霊代行の代償は高くつき、全身の波脈が破裂していたのである。

 俺の場合は真宵後輩が治してくれるからある程度は融通が利くが、逆はそうでない。俺は回復波導を一切扱えないため、真宵後輩を治療するには公共機関に頼るほかなかった。端的に言えば病院である。

 といってもさすがにこの重体を一般の病院に見せるわけにはいかず、『組織』の息のかかった場所を紹介してもらった。

 波脈さえ無事だったら入院の必要はなかった。真宵後輩も回復波導を使えるようになったらすぐにでも退院すると豪語していたが、予定通り二週間かかったのをみるに波脈は再生しなかったようだ。


「ところで先輩。着替えたいのですが、いつまでジロジロ見ているつもりですか?」


 そう言って身動ぐ真宵後輩。

 ほどかれた黒髪が流れ背中が露になる。薄い傷痕をいくつも残す、痛々しい背中が。


「ああこれですか? すぐに治せれば残りませんでしたけど、仕方ありませんね」

「……悪い」

「なんで先輩が謝るんですか」

「いやだってよ、俺がお前に無茶させなきゃそんな傷もできなかったわけだしさ……」


 後ろめたい気持ちでいっぱいになり言い淀んでしまう。真宵後輩を大切にしたいなどと言っておきながら、 結局最後は彼女に頼らざるを得なくなり、傷つける結果になってしまったのだ。これが謝らずにいられるか。

 すると俺の心象を悟ったらしい真宵後輩はこれみろがしに嘆息した。

 背中を向けたままではあるものの、俺が見ているにも関わらず真宵後輩は着替えを始める。


「あのときも言いましたけど、私は先輩に生きていてほしいと願っています。それは今でも変わりません。私が傷だらけになったのは私の選んだ選択です。それは確かに先輩のためではありますけど、先輩が背負うようなことではありません」


 ぱちっと下着のホックを填めて『しゃらっぷ!』の文字が斜めにデザインされたティーシャツに袖を通す。


「こんなのは私のわがままなんです。ですから気にする必要はありません」

「お前にそう言ってもらえたら気は楽になるけど、それじゃあ俺は……!」


 納得できねぇよ、と叫ぼうとして気づいた。

 いつもの無表情が俺を見つめてくる。有無を言わさない毅然とした態度に、俺は瞼を閉じてしばし逡巡した後「観念した」とぼやいて軽く肩をすくめた。


「それに、先輩以外に肌を見せる相手もいませんからね」

「は? それってどういう……」


 聞き捨てならない言葉に戸惑った俺に少しだけ嬉しそうに微笑んだ真宵後輩は、


「そういう意味ですよ、先輩」


     ***


 退院の手続きをさっさと済ませ病院をあとにする。

 真宵後輩の主治医の先生が帰り際、気怠そうにもう二度と来るなよ、と煙草を片手に白衣を翻して去っていった後ろ姿には呆れを隠せなかった。

 この二週間で通いなれた道を踏みしめながら、隣の少女に言葉を投げる。


「俺んち寄っていけよ。つみれが退院祝いに腕振るってご馳走するってさ」


 朝から包丁を握り締めて気合いを入れていた妹を思い出す。連れてこなかったら刺しちゃうから、と実際に刃物を持って目からハイライトを消して言われたときの恐怖は半端ではない。

 魔王を斃した元勇者を戦慄させるとは我が妹ながら恐ろしい。なんだか開けてはならないパンドラの箱の中身を覗いてしまった気がしてゾッと悪寒が背筋を通り抜けた。


「では遠慮なくお邪魔させてもらいますね」


 そんな俺の内心など露知らず、入院中の荷物をまとめたボストンバッグを片手に真宵後輩は答える。

 すぐ近くでは倒壊した電波塔や一部が崩落したビルを直す復旧作業が行われていた。偶然にも病院の近くだったらしい。


「そういえば先輩、左目はどうなったのですか?」

「…………」

「先輩?」


 俺はぽりぽりと頬を掻く。冷や汗がどっと噴き出してきて、嫌な寒気がした。

 はたと真宵後輩が立ち止まる。背中にとんでもない殺気が突き刺さってくる。きっと今の彼女は恐ろしいまでに眦を吊り上げ、俺を睨んでいることだろう。

 真宵後輩はおそらく、俺がそれを訊いてほしくないと思っていることを直感している。直感した上で、訊かなければならないと理性が訴えているのだ。


「……ああもう」


 呻き観念して足を止める。振り返れば、真宵後輩の目つきは想像より遥かに恐ろしいものだった。底無しの奈落のように深い闇色の瞳。

 俺は左目を隠すように伸ばした前髪を掻き上げる。

 一切の光を失った左目で真宵後輩を見つめ返す。

 転瞬、真宵後輩は表情を崩した。


「先、輩……見えてないの、ですか……?」


 無言は肯定の意。

 真宵後輩は口元に手を当て、小刻みに肩を震わせた。

 波動が暴走したとき、左目に宿る波脈が修復不可能なほどに壊れてしまったのだ。運良く眼球は弾け飛ばなかったが、もはや日常では使い物にならない付属品に成り下がってしまった。ブーストしていけば見えるようになるかもしれない。

 しかし第三段階ブーストスリーでは話にならない。せめて第八段階ブーストエイトくらいは必要だ。


「まあ、左目が見えなかろうが大して日常に支障はねぇよ。元から右目だけで生活してるようなもんだしな。それに――」


 真宵後輩の目尻に浮かぶ涙の粒を指で掬い取る。


「俺にはお前がいる。左目なんかとじゃあ比べ物にならない大切な女の子がな」

「……そういうキザなセリフは先輩には似合いません」

「だけど事実だ」


 もし左目ではなく真宵後輩が犠牲になっていたら、なんて考えたくもない。

 精霊の真似事をした代償が左目だけでほんとうによかった。


「わかりました。これから私はあなたの左目となり、いつなんどきも――」

「そういうのいらねぇから」


 何やら勝手に誓いを立てようとする真宵後輩のおでこにデコピンを喰らわせる。

 ばちん、と乾いた炸裂音。予想以上の威力に驚いたのは真宵後輩だけではなかった。

 目を白黒させて赤くなったおでこをさする真宵後輩に罪悪感が込み上げてきた。

 だがしかし、俺はそんな彼女を置き去りにする。


「お前は俺のために弁当作ってくれりゃあいいんだよ。つまんねぇこと言ってねぇでさっさと帰んぞ。あんまり遅くなるとつみれに刺されちまう」


 ほんとうに刺したりしないだろうけど、あんな姿を見せられては不安でしょうがない。刺されてもたぶん大丈夫だろうが痛いのは勘弁してほしい。躱せばいいだけの話か。

 真宵後輩が慌てて追いかけてくる。

 隣を陣取ると、何事もなかったように俺の歩幅に合わせてきた。


「つまり私は先輩の胃袋をがっちり掴んでいるということですね」

「そんまま離さないようにしろよな」


 そう言うと途端に赤面して挙動不審になる真宵後輩。

 なんだろう。異世界から帰ってきて真宵後輩の表情が豊かになった気がする。

 様子のおかしい真宵後輩と久しぶりに帰路を楽しんでいると、軽快な足音が近づいて来るのを察知した。あっという間に俺たちに追いついた足音は砂埃を巻き上げながら脇を通過し、靴底を激しく摩擦させて停止した。

 爽やかな汗を振り撒き、


「真宵さん! 退院おめでとうございます!」


 我が賢妹が腰を九十度に曲げて挨拶を口にした。

 包丁は――さすがに持ってないか。


「ん? どしたの兄ちゃん?」


 上体を起こして乱れた髪を整えるつみれ。


「なんでもないなんでもない。それよりお前、何をそんなに急いでたんだ?」

「あ、そうだった。はいこれ!」


 そう言ってつみれは両手に抱えていた包装紙に包まれた箱を突きつけてくる。

 俺は首を傾げつつそれを受けとる。ずっしりとした重みが腕に伝わってきた。


「なんだこれ? 退院祝いなら本人がいるんだから直接渡せよ」

「違うよー。それはお隣さんに。ほら、最近引っ越してきたでしょ?」

「……そうだったか?」


 たしかに隣の家は長い間空き家になっていたはずだ。俺の部屋の窓から行き来ができるほど近く、引っ越しでドタバタしていたなら気づきそうなものだが、最近の記憶を掘り起こしてもそんな覚えはない。

 俺がさらに首の角度を傾けていると、つみれはいたずらを思い付いたような笑みで、


「あーでも、兄ちゃんは真宵さんのことばっかで頭がいっぱいだったから気づかなかったのかなー? それじゃあ仕方ないかなー」

「からかうんじゃねぇよ」


 コツンと軽く拳骨を頭に落とせば、楽しそうに悲鳴を上げる。


「とにかくお隣さんにそれ渡してきてよ。あたしは真宵さんの退院祝いのご馳走を気合い入れて作んなきゃなんないからね。明日は休みだし、今日は張り切って騒ぐよー!」


 つみれは拳を茜色の空に突き出して元気よく宣言する。

 そのテンションの高さに肩をがっくりと落とし溜め息をこぼす。


「真宵後輩はまだ本調子ってわけじゃねぇんだから無理させんじゃねぇよ」

「いえ、大丈夫ですよ。せっかくですから泊まらせてもらいます」

「……そうか?」


 できれば大事をとって休んでもらいたかったが、真宵後輩がそう言うなら無下に断るわけにもいくまい。それに俺の目が届く範囲なら無理させることにもならないだろう。

 ……実を言うと俺が真宵後輩と一緒にいたかったから、というのが大きい。

 真宵後輩には見えないように親指を立ててナイスだとゼスチャーで伝えれば、つみれは気持ちいいほどの笑顔を浮かべて照れくさそうに鼻頭を掻いた。

 つみれは踵を返すと颯爽と家のなかに入っていく。


「とりあえずさっさと届けてゆっくりしようぜ」

「そうですね」


 言ったあとで俺だけで行けばよかったんじゃないかと思ったが、まあいいだろう。どうせ隣の家だし届けるだけで長話をするわけでもないのだ。

 ドアの横にあるベルを鳴らす。板一枚を隔てた向こうでインターホンが響くのが聞こえた。次いで誰かが転げる音が騒々しく続くが、何故か応答する気配がなかった。堂々と居留守にとはいい根性してやがる。ご近所付き合い嘗めんじゃねぇぞ。

 もう一度ベルを鳴らす。反応はない。

 ぴきりと青筋が浮かび上がるのをはっきりと感じた。

 真宵後輩が宥めてくれるが、ここで逃げ帰っては負けた気分だ。

 三度目の正直。ボタンが壊れるのではないかというほど強く押し込む。


「すみません。隣の冬道ですけど――」


 最後まで言い切る前にドアが勢いよく開け放たれた。中から小さな影が飛び出してきて、つい反射的にそれを抱き止めてしまう。

 腹部に走る軽度な衝撃。

 だが、それは始まりに過ぎなかった。

 俺が何を抱き止めたのか確認するよりも早く家のなかから大量の影が涌き出てきた。それらは俺を標的にしたのか一斉に飛び掛かってくる。まるで波のような押し寄せに抵抗する暇さえなく、せめて真宵後輩だけは逃がそうと風系統の波動を無理やり練り上げ避難させる。

 ふわりと安全圏に降り立った真宵後輩。見届けて安堵した俺に、波が襲いかかった。

 体勢を保てなくなり背中から倒れる。一瞬だけ過呼吸に陥る。右目だけの視界が火花を散らし、ちかちかと明滅した。

 突然の襲撃に混乱して何の対応もできなかった。血が凍えるような感覚が絡みついてくる。


「おにい、さん……!」


 そんな彼女の声が俺の耳に届いた。唯一動かせる首を動かして俺にのし掛かったそれの正体を確認する。

 癖っ毛でわずかにウェーブのかかったクリーム色の髪。穏和な顔立ちに添えられた緋色と蒼色の瞳。そしてシルバーフレームの右手と左足。


「ニーナ? それにお前ら……」


 俺を押し倒したのはニーナを筆頭とした子供たちだった。状況が呑み込めず間抜けな声をこぼしてしまう。この前ここを発ったはずの彼女たちがなんで隣の家にいるのだろうか。


「なにをやっているんだ冬道?」

「お前までいんのかよ……」


 相変わらずダークグレーのスーツを着込む『組織』からの追跡者が、両手にパンパンに膨れ上がったスーパーの袋を下げながら俺を見下ろしてた。


「なんだよお前ら。あっちに行ったんじゃなかったのか?」


 地面に押し倒されたまま訊けば、アウルはなんとも言いがたい表情になる。

 真宵後輩が俺の身を心配してかしゃがんで顔を覗き込んでくる。するとどうだろう。スカートの奥に隠された布地が絶妙なアングルで見えるではないか。しかも本人に気づいた様子はない。

 じゃあこのまま堪能させて――いやいやいや! 真宵後輩は俺を心配してくれているのだ。それなのに俺は何をしようとしているのだろう。罪悪感で胸が精神的にも、そしてニーナたちの重みで物理的にも潰されてしまいそうだ。

 俺はさっと目を逸らし、ニーナたちに退くように言う。


「ああ。ほんとうなら戻ってくるつもりはなかったんだが、彼女たちがどうしてもお前たちのそばにいたいと言ってな。仕方なくしばらくこっちで過ごすことになったんだ」


 自由になった体を起こして立ち上がり、ついた汚れを叩いて落とす。


「そんなんでいいのかよ。危険じゃないのか?」


 ディクトリアを退けてもニーナたちは『機械人形』の最先端の技術の結晶だ。いちおう『組織』の庇護下に入ったといってもほとんど野放しのようなものだ。狙ってくる輩がいないとは考えにくい。


「だからお前の近くを選んだんだ」

「他力本願も甚だしいぞ……」


 そもそもなんで『組織』の一員でもない俺を宛にしていやがる。アホなのか。

 妙な脱力感に辟易しながら、ぞろぞろと俺たちを取り囲んでくるニーナたちを見る。


「おにい、さん、おねえ、ちゃん……これからも、よろしくお願いします……!」


 ニーナが挨拶すると、それに習って子供たちが復唱する。

 大勢の声に引かれて周囲にいたご近所さんたちの視線が集まってくる。微笑ましい光景を見るような、なんでこんなに子供たちがいるのかと訝しむような視線と様々だ。

 しかし俺以外は気にした素振りも見せずに笑顔で花を咲かせている。


「……まあ、いっか」


 俺はそう呟いて茜色の空を仰ぐ。

 どうやら元勇者おろかものの綴るあとがきは、もう少し続きそうだった。


 

 これにて01〈勇者の帰還〉編完結になります。いかがだったでしょうか?

 リメイク前とは流れを大幅に変えてみました。

 金髪アホ毛や百合先輩、あとは幼馴染さんたちにはお休みいただきました。

 たぶん、今後出るとしても名前くらいではないでしょうか。

 あとは冬道たちの力を取り戻す過程についてクローズアップしてみました。以前に感想で「なんで異世界に行く前に戻ってるのに波導を使えるん?」という疑問があったので。

 いちおう描写してたんですけどさらっとだったので、改めて考えると必要かなと思って少し長めに書いてみました。

 01だけでも十五万字ほどありますけど、実はこれでもだいぶ減らしたんですよね。

 いつか公募に投げてみようかと思い、パソコンも買ってたのでワードに移してみたら見事に十五ページオーバー。

 こらアカンと。慌てて不要な部分を削除しました。手元には残ってるんですけどね。真宵後輩の性格が悪くなりすぎたりしたので非公開になりました。

 気が向いたら掲載しようかと思います。


 では次話になりますが、その章が完結してから投稿したいので、とりあえずプロローグだけになりますが十一月になってからにしたいと思います。

 次章はリメイク前と同じく生徒会関連になりますが、生徒会VS風紀委員にはなりません。

 そしてまた、リストラキャラと新規加入キャラが……。

 といったところで、ここまでにしたいとおもいます。


 02〈スカーレッド・レイン〉編は十一月からの投稿になります。

 その前にいくつか幕間(?)を落とす予定です。あくまで予定です。

 ではここまでお付き合い下さった読者の皆様、次回も引き続き見ていただけると幸いです。

 では!

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