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第1話「俺たちのある日の午後」

パラノーマルボーイズ<主要キャラクター紹介>


この作品は、私立天星学園高等学校しりつてんせいがくえんこうとうがっこうに所属するパラノーマルな男子高校生の日常を追ったものである。


<メインキャラ>

橋口遊人はしぐち・ゆうと

本編の主人公。2-I(外部文系甲類)所属の男子生徒。メガネが特徴の16歳。英語と世界史が得意で、英語は入学して初めてのテストから今までずっと学年1位の成績を維持しているが、反面数学など理系科目と体育の成績は最悪。一見真面目な優等生だが実は重度の中2病でアニメヲタでかなりの変人。


西野秀吉にしの・ひでよし

遊人の親友。2-F(外部理系甲類)所属の男子生徒。長髪で首に鈴のついたチョーカーを着けている。(本人曰く、「可愛い」らしい)また語尾に「にゃあ」とつける癖がある。成績はクラスでビリだが、体育は得意。趣味はぬいぐるみなど可愛いものを集めること。なぜか女友達が多い。


尾藤邦夫びとう・くにお

遊人の親友。2-F(外部文系甲類)所属の男子生徒。短髪が特徴。理系科目が得意で周りから一目置かれる優等生。2-Fの学級委員を務めている。天星学園高等学校3年生の姉がいるが、姉のことがあまり好きではない様子。真面目な性格で割と常識人だが、ノリはいい。


<その他外部生>

★サバイバルゲーム同好会「砲火後ティータイム」

鷲尾碧わしお・みどり

2-H(外部文系乙類)の生徒。「碧」という名前だが男。背が高い体育会系の生徒で水泳部に所属しているが、ミリヲタでサバイバルゲーム部を創設した。ただし「部」と言っても実際にはこれと言って特別な活動をしている訳でもなく、部室や顧問もいないので本部は碧の家の碧の部屋。勉強は苦手。


朝倉博人あさくら・ひろと

2-I の生徒。遊人のクラスメイトで2-I の学級委員。常にクールで冷静沈着な二枚目で何事もそつとなくこなす。なぜか常にサンバイザーをかぶっている。ミリヲタでサバイバルゲーム部に参加した。小学校時代にエアライフルの全国大会で優勝した経験を持つ射撃のプロ。実はピアノが得意。


平沢裕輔ひらさわ・ゆうすけ

2-Iの生徒。背が低い。遊人のクラスメイトでPCの扱いで彼の右に出る者はいない。割と優等生。女好きだが実際に女子に話しかける度胸は無いので非リア充。同じくミリヲタ。実は読書家で博識。あだ名は「ポケモン」(「ポケット・モンキー」の略)



★女子生徒

中野里奈なかの・りな

2-Iの女子生徒。美人で成績も優秀な2学年のマドンナ的存在。


天野美里あまの・みり

2-Fの女子生徒。メガネとショートカットが特徴の文学少女。クールな性格で口が悪い。演劇部員。


★3年生

尾藤春姫びとう・はるひ

3-Fの女子生徒で邦夫の姉。眉目秀麗で成績優秀、しかも性格もいいという完璧超人で学園始まって以来の逸材と賞されている。


<内部生>

志村良平しむら・りょうへい

2-E(内部文系甲類)の男子生徒で生徒会の風紀委員


霧島彩雲きりしま・あやも

2-E(内部文系甲類)の女子生徒


藤原義久ふじわら・よしひさ

2-D(内部理系甲類)の男子生徒で、学年1位の成績を誇る秀才で現生徒会長。



<先生>

矢島早智子やじま・さちこ先生

英語ライティングを担当する女性教師。ノリがいい。遊人の担任


藤木文彦ふじき・ふみひこ先生

英語のリーディングを担当する教師。怖い。2-Hの担任


東条昭雄とうじょう・あきお先生

世界史の教師。熱血教師


大島先生

体育の教師。


三谷先生

情報の先生。








パラノーマルボーイズ<第1話>

「俺たちのある日の午後」


 市内の小高い丘の上にある、私立天星学園高等学校(しりつてんせいがくえんこうとうがっこう。偏差値65、県内でも割と進学校の部類で、真面目ながらも自由な校風で愛されている俺達の学び舎だ。学校が好きかって?ああ、そりゃ好きだよ。ん?どこが好きかって?そうだな・・・、まずは「学園」というワードだ。これは些細なワードだが非常に重要なワードなのだ。「学院」でもいいのだが、俺は「学園」の方が好きだな。実に美しい言葉だと思う。次は制服だな。あまり大きな声では言えないのだが・・・、俺は制服が大好きだー!!もちろん男子も女子もな。あ、やっぱ女子の方が好きかな。女子は制服を着ててナンボのもんだ。まぁ、2次元の嫁とクラスの女子を比べれば圧倒的に2次元の方がいいけどな。ちなみに我らが学園は、男子が紺色のブレザータイプ。ネクタイは紺と緑のストライプ柄。で、女子は白地に赤ラインが入ったセーラー服だ。なんで男女の制服のスタイルが統一されてないのかは学園最大の謎だけど、皆肯定的に受け入れてるみたいだね。3つ目は・・・そうだな・・・、生徒1人に1台ノートPCが支給されることくらいかな?あれには驚いたぜ。そこはさすが私学ってところか。


 ああ、自己紹介がまだだったな。我が名は「パラノーマリスト」、世の理を超越した存在だ。

・・・本名は橋口遊人はしぐち・ゆうとだ。クラスは外部文系の2-I。よろしく。で、今俺は何をしているかって?いま下校中だ。私学は土曜日も普通に授業あるからな。ただし半ドンだけど。今日は土曜の補講もないし、腹も減ったから早く帰ろうと思い、靴を履き替えて校門を出たくらいさ。おや?誰かが走ってくるぞ。鈴の音・・・、あ、あれはわが同志、西野秀吉にしの・ひでよしじゃないか!!

 

 「よう西野同志」俺は秀吉に挨拶した。あいつ、走ってきたのに全然息が切れてねぇ。俺は走るとすぐ息が切れる。体育の授業は大嫌いだぜ。あれは文部省のインボーに違いねぇ。体育の得意な生徒を懐柔し、体育の苦手な生徒を精神的かつ肉体的に痛めつけることにより学校権力に対する叛逆を防ぐ。そういうインボーに違いない。さっさと廃止するべきだろあんなクソ科目。話が途切れたな。秀吉は外部の理系2-Fの生徒だ。長髪と鈴のついた首輪が特徴だ。本人曰く「可愛い」のだそうだ。やめといた方がいいように思うが・・・。成績はクラスでベベに近いが、体育はめっぽう得意みたいだ。あと、こいつなぜか女友達がやたら多いんだよな。なんでだろうな?あ、ちなみに俺には一人もいないよ。解せぬ!!まぁ、この学校の女子はどいつもこいつもいけ好かない奴ばっかだから別にかまわないが。あ、別に強がっている訳じゃないんだぜ。本当だぞ。ともあれこいつといるといい具合に気が抜ける。


 「勝手に行くなんて酷いにゃ~」秀吉があいさつしてきた。言い忘れてたけどこいつ、語尾に「にゃあ」ってつける妙な癖があるんだよな。


 「おーすまんすまん。オスマン帝国、そろそろ現れるころかと思ってたさ。」

・・・今のギャグどうだ?中学生のころは実はお笑い芸人になりたかったんだ俺。まぁ・・・それじゃあ将来食べていけないようだから諦めたけどな。


 「それ前も聞いたにゃ。」

秀吉が呆れ口調で言ってきた。


 「リサイクルだ。俺は環境に配慮しているのだ。」

どやぁ!!


 「それも毎回聞いてるって。」

「てへっ♪」

「それキモいにゃ。」

「お前にだけは言われたくないぞ」


 「言ったにゃ~?」

などとふざけ合いながら歩いていると、もう一人の男子生徒が走ってきた。

あれは・・・尾藤邦夫びとう・くにおのようだ。

 「よお同志尾藤。」


 「ひどいぜ先行くなんて。」

こいつは秀吉と同じ2-Fの生徒。だが、こいつは学園内有数の優等生だ。なんであんなに数学ができるのか知りたいぜ。俺は数学が最悪だからな。文系数学で苦しんでいる俺からすれば、理系数学をすらすら解いている邦夫はかなり羨ましい。


 「そろそろ来るころだと思ってたにゃ~っ。」

秀吉が言う。

 「ありがと。帰ろうぜ。」

邦夫が加わる。俺たち3人は学校にほど近いある外資系企業の社員団地に住んでいる。皆親は海外赴任中だ。こいつらとは高校1年の時に知り合った。俺らは高校からこの学校に入った「外部生」だ。一方付属中学から上がってきた連中を「内部生」と言う。一部授業で合同になるときはあるけど、それ以外では部活でもやらなければ基本的に外部と内部が交流するなんてことはない。微妙な対立関係もあったりするしな。こいつらとは1年生の時はクラスが一緒だったが、2年生になる時に文系と理系に分かれたことでクラスが別になった。まぁ、今でもこうして仲良くさせてもらってるわけだがな。ありがたい。


 「あ、クーちゃん、試験の成績どうだった?」

秀吉が邦夫が手に持っていたプリントを目にして言う。

今日は定期テストの成績表が返却される日だ。テストは終わってからが面倒臭いと思う。俺は「テスト直し」が大嫌いだ。テストの答案を書きなおして再提出しろ、ってやつ。なんでって?いや・・・単にメンドクサイだけなんだろうな。数学の直しとかマジうぜー。でも提出しないと成績に影響するしね。背に腹はかえられんから仕方ない。

 「ああ、まずまずだ。」

そう言って結果表をこちらに寄越す。得点や順位が記録されている紙だ。

 「・・・お前いいよな。バランス取れてて」

 本当にうらやましい。こいつの成績はバランスが取れている。得意の理系科目は全て90点台や80点台、苦手らしい文系科目も60点台や70点台である。

 「いいにゃ~。さすがだよクーちゃん。」

 「そういうお前らは?」

見た以上は見せるのがセオリーだから俺も結果表を出して邦夫に手渡した。

 「毎回思うけど、マジで同じ人間の成績とは思えないよな。」

そう、俺の成績は物凄くバランスが悪い。文系科目は得意だから90点台や80点台は楽勝でとれる。自慢じゃないけど好きな英語と世界史が95点以下になったことはない。これらは俺の生命線だ。だが・・・。理系科目、特に数学はまったくダメだ。まったく、世の中に理系科目があるということは海のようにも空のようにも悲しいことだ・・・。

 「数Ⅱ48点・・・数B50・・・生物52点か・・・。」

 「バカ!読み上げるんじゃねぇ!」

 「ごめんごめん。しかし、お前の成績って極端だよな。」

 「ホント、でも英語と世界史は毎回1位だよね。一体どういう勉強法してるのかにゃ~?」

秀吉が言う。正直に言ってまんざらでもない。いや、嬉しいけど、この学校で1位になったからといってどうということはない。世の中には俺をはるかに上回るエースが英語にしても世界史にしても存在するのだから。ま、実際にそいつらに会ったことはないけどね。きっとSF映画に出てくる火星人のような頭をしている化け物に違いない。どうせ性格もアレな連中に決まっているさ。

 「お前が勉強していないだけだろ?俺は授業の予習と復習とその他を適切にやっているだけだ。でも今回リーディングが95点で、2位が93点。少し危なかったな。」

 「誰だよそいつ?」

邦夫が聞いてきた。

 「中野さん。それに今回はあのクソアマがクラス1位だ。」

中野里奈なかの・りな、2-Iの生徒だ。色白でセミロングの髪が特徴だ。クラスの男子ども、いや、2学年のマドンナらしい。学内の噂とかに疎い俺でも知っているのだからきっと本当なのだろう。ま、確かに可愛いくないとは思わないけど、俺は2次元の方が断然イイな。もはや3次元には興味が持てない・・・。俺はボーイフレンドとして需要がないことを充分に理解しているからな。俺は別にイケメンでもないし、特にこれと言って魅力があるわけでもないからな。その点、2次元は差別しない。確かに話しかけても話し返してはくれないし、手に触れることもできないって言うデメリットもあるけど、いつでも俺の傍にいてくれるのだ。俺は自分を理解したうえで2次元と言う選択肢を選んだのだある。だからそんじょそこらのヲタとは一緒にしないでくれよな!?あーっ、おっとと、これはクラスの皆にはナイショだぜ?俺だって最低限のTPOは心得ているつもりだからな。


えーっと、何だったっけ?そうそう。その中野里奈ってヤツは、男子から人気が高いだけでなく。成績も優秀なのだ。英語や世界史でアイツに負けたことはないけど、いつも2位につけて来る。悔しいけどそれ以外の科目ではアイツの方が上なもんだからいつも総合順位では負けている。俺は理系科目がダメすぎて総合順位はいつも5位くらいだ。

まぁ、アイツに恨みがある訳じゃないが(というかまともに話したことがない。いや、アイツも含めこの学校に入ってマトモに話した女子なんていないのだが。もちろんあいさつとか事務的な話はもちろんするけどね。)アイツは俺の敵と断定して個人的に警戒している。


 「クソアマは酷いにゃあ」

秀吉が顔をしかめる。こいつ優しいからな。だから女子ウケがいいのかもしれないな。

 「クソアマはクソアマだ。アイツに恨みはないが気に入らん!!」

とそこで邦夫が俺の耳を引っ張った。

 「イテテ、何すんだよ!?」

 「声がでかいぞ。周りを見ろ。」

邦夫が言う。こいつは本当に真面目だ。

 「大丈夫大丈夫。他人は俺たちが考えているほど俺たちのことを見てな・・・。」

とそこに女子生徒の一団が通りかかった。中野とその友達。俺のクラスメイトのようだ。噂をすれば何とやら、か。幸いこちらの話を聞いてはいなかったようだ。

ほら、他人は俺たちが考えているほど俺たちのことを見てないだろ?はっはっは。

 「あ、バイバイ橋口くん。」

とそこに中野があいさつしてきたので。

 「また明日ー。」

とあいさつした。

  

女子生徒の一団は何事かペチャクチャと話しながら俺達を追い抜いて行った。

邦夫がにやにやしながら言ってきた。

 「何だよお前?本当は気になるんじゃねーの?」

こいつ・・・!

 「ちげーよ!!俺が3次元の女の子に興味ないって知ってるよな!?」

さらに秀吉まで。

 「何を強がっているにゃ?正直に言うにゃ?」

てめぇこのやろう・・・。

 「からかうんじゃねぇよてめえこの。あ、秀吉テストどうだったんだよ?見せたんだから見せろよな?」

 「アハハ・・・。」

秀吉は力なく笑って結果表を俺に寄越した。・・・彼の名誉のために彼の成績について述べるのはよそう。

 「お前さあ、テスト前何してたんだよ!?」

 「え、それはアニメ見たりゲームしたり・・・。」

 「さすがだな。」

 「さすがでしょ?」

ほめてねーよ!!まぁ、俺も毎日登校前の30分にはアニメを1話見てから出かけるのが習慣になってるし、毎日勉強が終わってからゲームしてるけどね。

でもテストの1週間前にはさすがにゲームはしないよ。

 「で、追試とか大丈夫なのか?」

 「追試は無いけど、間違ったところを直して提出だってさ。」

 「ウゼー!!」

そう、テスト直しは面倒くさい。

 「何言ってるの?提出物は踏み倒してナンボでしょ?」

秀吉はけろりとした顔で言う。そこに邦夫のげんこつが飛ぶ。

 「バカヤロー。単位どうすんだ単位!?」

 「冗談にゃ。」

秀吉が舌を出した。そう、いくら面倒くさくても背に腹は代えられない。何せ成績が絡んでいる。

 「あのさぁ、ユーちゃんにクーちゃん、助けてくれないかな?」

秀吉が聞いてきたぞ。こいつがテスト前に試験範囲のヤマを聞いてきたりテスト後のテスト直しの手伝いを頼んだりしてくるのは毎回の事だ。

 「ああ、もちろんだ。」

俺は快諾した。断る理由なんてないからな。苦しんでいる同志を助けない訳がナイ。それに俺も邦夫に数学の直し手伝ってもらいたいし・・・。

 「しょうがねえな・・・。」

邦夫も毎回ぶつくさ言うけど手伝っている。いいやつなんだよ、本当に。

 「じゃあ俺の家に来いよ。」

今回は邦夫の家に集まるようだ。


俺達の親はとある外資系企業に勤めていて、俺たちはその企業の団地に住んでいる。俺の両親はそろってこの企業の社員で、今は夫婦そろってベトナムのホーチミンにいる。

社内恋愛の末にくっついたらしくて、俺の両親はいわゆるおしどり夫婦だ。邦夫の家も両親がそろって海外にいる。あいつは今は姉と二人暮らしだ。ちなみに邦夫の姉は天星学園始まって以来の秀才と言われているらしい。俺も会ったことあるけど、性格もルックスも良くて成績優秀、ありゃあ完璧超人ってやつだな。しかもリア充らしいぜ!?まったく・・・世の中は理不尽だなぁ・・・。でも邦夫とは仲があんまりよくないらしい。その点、一人っ子の俺にはよくわからん。秀吉は母子家庭だ。父親は秀吉が幼いころに亡くなったらしい。で、秀吉の母親も社員なわけで、海外に勤務している。秀吉も一人暮らしだ。あ、もちろん三者面談とかの日には帰ってくるぜ?それに、この企業には俺たちのような一人暮らしの子供が多いもんだから、この企業団地には無料の食堂と浴場がある。だから料理とかはしなくていいから楽だ。警備面でも結構厳重だしね。個人的にはこの環境が気に入っている。


それはさておき、今回は邦夫の家でテスト直しを行うことになった。俺たちはよく誰かの家に集まって様々な活動をしている。ちなみに俺たちはみんな帰宅部だ。

 「あ、春姫はるひさんは大丈夫なの?邪魔とかしたらわるいし。」

秀吉が思いついたように言った。すると邦夫が苦虫を36匹噛み潰したような顔で言った。

 「姉貴なら心配いらねぇよ。今日は補修らしいから。」

 「あっそ、じゃあ邪魔するぜ。」

 「邪魔するなら帰れよ~。」

などと駄弁りながら歩くうちに、俺たちは団地にたどり着いた。俺たちの住む企業団地は結構でかい。A~Eまでの5つの棟に中央管理棟(この中に共同浴場と食堂、コンビニが入っている)がある。一つ一つの棟も5階建てで結構でかい。近くにはショッピングモールもあり、駅にも近い。実に恵まれた環境だと思う。俺たちの家は全員A棟にある。俺たちは皆4階に部屋がある。俺たちは中央管理棟のコンビニで弁当を購入すると、邦夫の家に向かった。

 「まずは飯食おうぜ~。」

 「賛成~。」

まずは飯だ。腹が減っては戦ができぬ。俺たちはそれぞれの飯を取り出す。俺はサンドイッチとプリン。秀吉は豚スタ丼。邦夫はから揚げ弁当だ。

 「お前いつもそれだよな~。」

邦夫が秀吉に向かって言う。秀吉はこのコンビニの豚スタ丼を常食にしている。

 「これ旨いにゃ。ユージンくんいつもOLみたいな昼ご飯食べてるよね。」

秀吉が言うように、俺はサンドイッチとかサラダとかを食うことが多い。それによくスイーツを一緒に買っている。だからOLみたいなんだろうか?

ちなみに俺は「スイーツ男子」という言葉が大嫌いだ。スイーツがお前らだけのものだと思うんじゃねえぞ女子諸君。

 「ゴチソーサン。」

俺は飯を食い終わった。残りの2人はまだ食べている。俺は食べるのがかなり速いらしい。自分じゃ実感ないんだけどね。あ、やべ・・・なんだか・・・眠たく・・・?


 「おいユージン。寝るなあああああああああ!!」

邦夫の声が響き、俺の意識は再び現実世界へ引き戻された。危ない危ない。このまま朝までぐっすり眠るところだった・・・。

 「あ、ごめん。危うく寝てしまうところだった・・・。」

「食べてすぐ寝るとブタになるにゃ~。」

 「ブタじゃなくて牛だろ?大丈夫だよ俺太らない体質だから。で、お前らも食べ終わったのか?」

 「ああ。そろそろ始めようぜ。さっさと片付けよう。」

 「おうよ。」

 「はいにゃ。」


かくして俺たちはテスト直しを始めることにした。提出すればいいのは英語2つと数学2つだけ、とはいえ面倒くさい。まぁ、「3人寄れば文殊の知恵」とも言うから大丈夫だろう・・・。もっとも、勉強に関して秀吉は全くアテにならないが・・・。とりあえず英語から始めることにした。今回俺はリーディングが95点、ライティングが97点で、何を間違ったかと言えばスペルミスが1個あっただけなので直すのは数秒で終わる。・・・なんで気がつかなかったんだろう?

 

 まったく・・・。まぁ、どうせ定期試験なんて記憶力勝負でしかない。だからと言って手抜きしてる訳じゃないけど、本当に実力が出るのは模擬試験だ。俺は詰め込みが苦手で、覚えるのに時間がかかる。だけど遅い分忘れにくいから定期よりも後にある模試の方が俺にとっては有利なのだ。教科書の丸暗記でその場で点が取れても、模試の時にはもう忘れている様で本末転倒だろ?


 とりあえず英語はすぐ終わったので邦夫と秀吉の手伝いをすることにした。邦夫はRもWも60点台、秀吉は・・・彼の名誉の為点数は伏せておこう。

理系の英語は文系のテストと少し問題が違う。彼らには悪いが、あれは文系の英語のテストの劣化コピーでしかない。あれなら普通勉強しなくても80点以上取れると思うのだが・・・?まぁ、こんなこと言ったら理系の連中にフルボッコにされるだろうから言わないけどな。とにかく我が国の英語教育はいろいろ間違っていると思う。


 「ここの文章にソックリ書いてあるだろ?よく読めよ。」

 「いや、時間が無くて・・・。」

「このテストで時間がなくなるようじゃ入試で死ぬぞ。」

 「ここわからなかったんだけど・・・。」

 「どこが?」

・・・なんやかんやで英語の直しは1時間足らずで終了した。


 「少し休憩しようぜ。」

邦夫が提案した。賛成だよ。次は数学だ。体力を回復しなくては・・・。

 「さんせー。」


秀吉は通学かばんからマンガ雑誌を取り出して読み始める。俺らの学校は真面目ながらも比較的自由な校風なので、授業中に取り出さない限り、マンガ本やゲーム機の携帯が黙認されている。俺はウォークマンを取り出してお気に入りのアニソンを聴く。邦夫はというと単語帳を見ている。まったく邦夫ってヤツは真面目だよなぁ。


そして30分後・・・。

 「そろそろやろうぜー。」

邦夫が言った。

 「おー。そーだなー。早いところやろうぜー。」

俺も賛成する。嫌なことはさっさと終わらせた方がいいに決まっている。

だが・・・

 「えーやだよー。もうちょっと休もうよおおお。」

秀吉が情けない声を出す。

 「何情けないこと言ってんだ。さっさと終わらした方がいいだろ?」

邦夫が言う。まったくだ。と・・・ここでピンポーンとチャイムが鳴った。

 「おや?誰か来たようだな?」

 「ちょっと待ってて。はい?あ?姉貴?今開けます。」

邦夫は玄関の方へ行こうとした。

 「春姫さんか?大丈夫か俺らこのままいて・・・?」

 「うんうん。大丈夫?帰ろうか?」

一応気を使う。ここは他人の家で、俺たちはそこに寄せてもらっている訳なのだから。

だが邦夫は玄関に向かいながらけろりとした顔で言った。

 「姉貴なら大丈夫。心配ないって。」

少しして春姫さんと邦夫が歩いてきた。

 「遊人くん、秀吉くん。こんにちは。」

春姫さんがにこやかにあいさつしてきた。性格もルックスも良くて、学園始まって以来の天才と称されている。しかもリア充。まさに完璧超人か?

まったく神は平等に我々を御創りになったと言うけれど、この人を見ていると実に天は理不尽だなぁと思う。だが・・・。

 「姉貴、邪魔だよ。」

どうやら邦夫とは仲が悪いようだ。

 「はいはい。私すぐ出かけるからさ。麦茶だけ飲ませてよ。」

春姫さんは台所に向かって冷蔵庫から麦茶を出して飲んだ。そして冷凍庫からアイスの箱を持ってきた。

 「はい差し入れ。頑張ってね!」

春姫さんはまたどこかへ出かけて行った。

「ありがとうございます!」

 「ありがとうです~。」

俺と秀吉は春姫さんにお礼したが、邦夫は不機嫌そうに黙っていた。

春姫さんは俺達に微笑みかけると出かけて行った。

 「・・・余計なコトしやがって・・・。」

邦夫はなにやらブツクサ言っているが、もうアイスを口にくわえている。

なんだかんだ言っているけど、こいつ本当はお姉さんのことが大好きなんだろうな。絶対そうだ。そう思って邦夫を見ていると・・・。

 「何見てんだよ?さっさと始めるぞ?」

邦夫は言った。心なしか顔が少し赤くなっていた。やっぱりこいつ、なんだかんだ言ってお姉さんのことが大好きなんだな。

 「ああ。ここわからなかったから見てもらいたいんだけど・・・?」

俺は邦夫に自分の答案を手渡した。秀吉はというと・・・アイスをなめ終わって寝てやがる。なんて奴だ!大したものだ。

 「お前さぁ、計算ミスだココ。」

邦夫に言われて見ると、3と5を見間違えたようだった。なんてこった!

そのほかの問題も教えてもらい、1時間ほどで終わらせた。

 「おはよう。」

秀吉が目を覚ました。

 「おはよう。」

 「ようやくお目覚めか?」

俺と邦夫はそれぞれの反応を示す。

 「あれ!?俺寝てたの!?」

秀吉は驚いている。なんなんだこいつは。

 「良く寝てたよ。」

俺は答えた。

 「テスト直しは?」

邦夫と俺はほぼ同時に答えた。

 「終わったけど?」

 「まじかー!?」

秀吉は頭を抱えた。

 「助けてくれにゃ~!」

秀吉は土下座した。こいつ本当に腰が低いな。だからモテるのか?

 「面を上げい。」

と俺が言うと・・・。

 「お前が言うな。ささ、面を上げい。」

邦夫に小突かれてしまった。

 「ほら。俺の見せてやるから。早く終わらせろ。早く終わらせて食堂行こうぜ。」

邦夫は答案を秀吉に差し出しながら言った。邦夫ってヤツは本当に優しいな。

 「邦夫ちゃん!!」

秀吉は邦夫の答案を受け取ると、ものすごいスピードで写しはじめた。


・・・そして30分後。写したから早い。俺も写せばよかったか・・・?だが俺の少しばかりの教養がそれを許さなかったのだ。

 「終わった~!!」

秀吉の元気な声が響いた。

 「よかったな。」

 「ホラ返せ。食堂行こうぜ。」

 「さんせー。」

こうして俺たちのテスト直しは終わった・・・。


俺たちは共同食堂に向かった・・・。

共同食堂はこの社宅の住人ならタダで使えるというすばらしい場所だ。

ま、味はそこそこだが・・・。


俺たちが解散したのは午後8時ごろ。それぞれの家に帰る。俺も家に帰る。俺の自室は6畳。6畳の我が王国。俺は国王だ。

俺はシャワーを浴びて着替えると、デスクトップPCを起動する。

 「おはようございます!」

という某アニメキャラの声で起動音声が響く。

 「おはよう。」

と返してしまうのはもう癖になっている。電子メールを確認した後、お気に入りのオンラインゲームを起動する。

もうすぐ夏休みだし。あの怖い英語の藤木先生も予習はいらないと言っていたから大丈夫だ。

心置きなくオーバーな仮想戦線で暴れることができる・・・。あの2人もログインしてるだろう。

やっぱり、「stargazer (尾藤)」と「にゃぽりたん(西野)」のログイン確認。ちなみに俺は「ダイフク15」と名乗っている。

なんでそう名乗っているかって?このゲームに登録してキャラメイクしてるときにイチゴ大福を食べてたからさ。


ちなみにこのオンラインゲームは人型戦闘兵器をカスタマイズして戦うというゲームである。

1対1の戦いから50対50の大規模戦まで楽しめる。日本最大級のオンラインゲームだ。

基本プレイは無料。課金?しないしない。課金して強くなれるのは当たり前だからさ。

さて、いくか!!今日も俺のガトリングが血に飢えているぜ!


俺の日常はこんな感じ。ツンデレ美少女も可愛い幼馴染もヤンデレの義理の妹もやたら甘い姉貴も巫女さんも魔法使いも財閥の御曹司もロボットも宇宙人も忍者も幽霊もスパイも巨人も小人も妖精も古代人もエスパーもいない。一切出てこない。平凡そのものだ。でも退屈したことなんてない。でもそんな俺の日常だが、ライブで待ったなし。日々メチャクチャ動き回っている。本当にこいつらが日常的に登場してみろよ。俺3日ほどで死ぬよ。まぁ、本当にいるなら会ってみたい気もするが、それは夢の中、妄想世界の中だけで充分だ。


そんじゃあこれから俺は作戦行動に入るからこの辺でな。また会おうぜ!じゃあな!


第1話 FIN


製作:見滝原人民学芸講談会

 




 






 


つづく(と思う)

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