77独白
私は一番などではなかった。
創造などするべき立場ではなかった。
のぼせていたのかもしれない。
何かを創り出すという作業の過程において、それの持つあまりに大きな責任に向けるはずだった目を曇らせてしまうほど、何かを取り決め、支配する、という絶対的な立場に自惚れていたのかもしれない。
あまりに、横暴が過ぎ、あまりに愚直であった。
天界のルールの中でしか動けない、所詮は小物のくせして、たいそうなことをしでかしてしまった。
愛より先に、欲が立ったのだ。
私はただ、創ってみたかった。
神を、この手で。
そうすることで、一介の神という私の存在を神を創り上げた神へと昇華させたかった。
それだけだった。
それには大変な時間がかかった。
あくまで秩序の範囲内でギリギリ許されたラインを超えることなく、はみ出しかけたほとんど反則のようなルールをつなぎ合わせ、創り上げた。
私だけの世界。
人に溢れ、愛に溢れた世界。
それは、これまでにない、一級品の芸術だった。
自分でいうのもなんだが、間違いなく、最高の出来だった。
だが、それを持ちうるものとしての私自身の器があまりに狭量だったことが、悲劇を招いた。
その芸術品は日々変化し、より高い位置へと自らを完成させていく。
果てもなく産み増え、生産性、機能性をあげていく。
そんな人々の中で生活するうち、私はわかってしまった。
私が本当に欲しかったものが。
私は欲しかった。
ただ、純粋な愛が。
それなのに、私は…
ギリギリで引いていた琴線をふちぎってしまった。
信仰を捨てた人々に怒ってしまった。
それが、すべての終わりを導いた。
一瞬の気の迷い。
それだけで、一級品の所有権は私から離れた。
以前からそれへ目をつけていた、二人の神のものとなり、彼らのギャンブルの会場と成り果てた。
今や、この世界はもう…意味のない戦いに彩られた、金を動かすだけのボードにすぎない。
ああ、ああ、なにが永遠の闘争だ。
私じゃない、私じゃないんだ、ベティ。
醜くてよかった。
誰にも好かれていなくて良かった。
魔女なんかになる必要はなかった。
そう、言えたらどれだけいいだろう?
でも、ダメだ。
もうここは彼らのもの。
私の考えなど、通ることもない。
言葉にした瞬間…いや、そもそもおもったことでさえも、もしやこの瞬間だって、もう、この世界に毒されているかもしれない。
彼ら、白神と黒神に。
彼らのゲームはいつになれば終わるのだろう?
この世界の無限なる抗争はいつ、終止符が打たれるのだろう?
やはり、私には…待つことしかできないのか…。
しかし、それはそれでおかしい。
彼らは、争いを望むのなら、なぜ一度調停許した?
なぜ、ロイ・ハワードという存在を許した?
なぜ…私を生かしているのだ?
どこまでが賭け事か…いや、そもそもすべてがそのゲームの一環なのか?
もし、仮にこの世すべてがゲームなのだとしたら、このゲームには、
イレギュラーが多すぎる。
五人の使者?
そのうちの一人、彼はすべて、わかっていると言った。
お前は一体なにを知っている。
なにを見てきた。
だが、口は思うように動かず、彼は叫び、私は泣いた。
君は本当に、私を救ってくれるのだろうか?
カイ・ルート。
君は、かつてのロイ・ハワードのように、私を、ベティを…救ってくれるのだろうか?
嫌な予感はずっとあった。
見て見ぬ振りをしていたのかもしれないし、実際、本当に目に入っていなかったのかもしれない。
いや、だとすれば私の目はいったいどれだけ衰えているのか?
だが、ここで重要なことは私の視力ではない。
その男はそこに立っていた。
私はその男を知っている。
よく、知っている。
合理的で、仲間思いで、そのくせ口が悪く、疑り深い。
たくさんのパーツがありすぎて組み上げたらうまく噛み合ってない。
ほっとけば勝手に壊れていくような男だ。
いいところも悪いところも極端で一概にどんなやつかなんて言い切れやしない、不思議な男だ。
私はそんな彼を気に入っていた。
誰よりも好いていた。
だからこそ、彼は私を救いたがり、私を探した。
理不尽なゲームのシナリオの中で、見事に役回りを演じ切り、例のおりにぶち込まれた。
君はもう、降りて良かったんだよ。
これ以上、苦しむ必要なんてなかったし、そこで壊れてしまう方がずっと良かった。
救われようとしたくせに、助けようとしたくせに、なにをいうかと言われるかもしれない。
だが、私にはわかる。
痛いほどわかる。
このゲームは、ここは、痛すぎるし、辛すぎる。
君みたいな人間が、ただでさえ不安定な人間が生きていける世界じゃないよ。
どうせ、もうすぐゲームはおわりだ。
私には、わかる。
造り手だから。
産みの親だから。
それくらい、わかるんだ。
だから、もう、君はそこに立ってなくていいんだよ。
そんな顔で、立ってなくていいんだよ。




