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the third  作者: 深雪
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どうして人の国と魔人の国は存在するのにハーフの国が存在しないのだろうか。


そうしたらこんな思いをしなくてもいいはずなのに…。


と、いつものように考え事にふけりっぱなしの僕、カイ・ルートはこんな時代に生まれてしまった人と魔人のハーフだ。


父が人で母が魔人である。


そこから生まれた僕は相反するものどおしの血を足してどちらかわからない位ぐちゃぐちゃになるまで混ぜ合わせたような存在。


幸いなことに翼はないので、人の世に溶け込むことはできた。


それに、もしかして光も闇も使えるすごい奴なのかと、何も知らない小さい時は喜んだものだが、現実は甘くなかった。


いくら訓練しても光がいっこうに使えるようにならない僕は、病院の先生から絶望的な一言を言われた。


「今の時代にハーフはかなり珍しい。であるからして、資料も非常に少ない。まあ、光と闇は相反するもの、言って見ればプラスとマイナスなんだよ。お互いを打ち消し合い、ゼロになろうとするんだ。おそらく、君の中でもそれと同じことが起こっているのだと思うんだな。ああ、小さいのに難しい話はわからないか。結論は、君は光も闇も使えない、欠陥品というところだね」


と。


当時の僕には欠陥品という言葉の意味がわからなくて、褒められたみたいで喜んでいたけれど、今さらながらひどいことを言われたなあと思う。


確かにその表現は嫌というほど僕の型にはまっていたけれど、もう少し言葉を選ぶべきだろうとも思う。


まあでも、事実として僕は欠陥品だった。


しかし、本当は僕が欠陥品だとみんなに知られるはずもなかったし、必要もなかった。


であるのに、この学校では、五年前から光学と光学実習が必修科目となりそのせいで僕が、ハーフで欠陥品であることがみんなに露見してしまったのだ。


みんなの反応は至極まっとうで、この上なく普通なものだった。


クラスメートに一人だけみなと違うものがいる。


それは典型的なイジメへとつながるのには充分な理由だった。


仲がいいと思っていた友達には近寄るな穢れると言われて、誰からも話しかけられなくなった。


痛かった。


心に何度も何度も刃物をこれでもかと突き刺されたような心地だった。


人間不信に陥り、毎日が斜線の入った漫画の背景のように、つまらないものとなり、学校に行くのも嫌になった。


それから、様々なイジメを受けた。


たとえば、登校したら自分の席が無くて、隣の教室にてそれを発見するが、その机の上には黒いペンキで欠陥品と大々的に書かれていたり。


誰に話しかけても無視されたり、給食を半分しか分けてもらえなかったり、ハーフだからって調子こいてんじゃねえなんてわけのわからないことを言われたり。


それはもう言い出したらきりがないほどのバリエーションだ。


でも、みんなは単純で馬鹿で飽きっぽいので 一年ほどの間、ずっといじめ続けた僕に対して、


「お前、つまらないよ」


と一言だけ言って終わった。


僕は誰からもイジメられなくなった。


そして、僕がその経験から得たものは人なんてクズヤローばっかりだということだ。


僕は父以外の人を絶対に信用しない。


そう決めたのだ。


でなければまた、あんな風に傷つくことになるから。


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