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the third  作者: 深雪
43/83

39見せしめ

「ではではぁ!大実験の大公開と行きましょうか!!」


男は緑という珍しい色の眼をカッと見開き、大仰な身振り手振りで観衆を煽った。


痩身のその男の顔はまるでよくできた人形のように整っており、見ているものに魅力を感じさせるのはもちろんだが、それ以上にいいようもない不安感を抱かせる。


それが緑色の瞳と合わさり、彼を神秘のオーラのようなもので包み込んでいた。


生まれながらにして他を圧倒するその様は王の資質と言っても過言ではない。


そんな彼の名はパーツ・ブラッドリー。


つい先日パール最高議員へと昇格を果たした者だった。


地方の議員としてもトップクラスの能力を持ち合わせており、今回の事件についての会議においてその実力をいかんなく発揮し、万を時してその位へと上り詰めた男だ。


だが、実際に彼の上に立つものがいた。


遥か高みへ、生まれながらに選ばれ、そうなることが前提とされてきたといっていい男を踏み台とし、さらに上へと駆け上がった者が。


その男の名は、オール・ブラッドリー。


パール国最高議長代理という立場にありながら、それを誇示せず、現在、ただ静かに弟の一挙手一投足を一瞬足りとも見逃すまいと目を光らせていた。


男の目の前で、弟は派手に踊り回るピエロのようにくるくると多様な動きを見せる。


ここ、大会議場前広場、公開処刑場は本来、なんの見所もない、観光地には逆立ちしてもなれないような場所だ。


もし、仮にここへ観光をするとなれば、さびれた棘だらけの背の高い鉄柵とその中央に位置する不気味な断頭台だけが見所と言える。(無論、物好きでなければ見る価値などないが)


そのような場所に現在集まった観衆の数は一万をゆうに超える。


国民の一パーセントがこの場に集まっていると言うことになるのだから、恐ろしい。


その上、その数は時間と共に増えつつある。


なんとまあ、ここも人気のある観光地となったものだなぁなんて軽口を叩きたくなるレベルだ。


もちろん、なんの目的もなしに観衆は動かない。


ただの目的のためにこのような数の観衆が動くはずがない。


皆がみな求めているのだ。


これから始まる、目の前で踊る見知ったジョーカーの企画したあるショーを見ることを。


男は黒衣をたなびかせ、つぶやくようにいった。


「なるほど。この時のためにわざわざ生かして置いたと言うのだな」


男は表情はろくに動かさず、口元も最小限の動きしか見せなかった。


だが、そこには明らかな感心の念と一抹の不安もまた、含まれていたことに気がついたものはこの場にはいなかった。


そんな男に振り返ることもなく男とそっくりな顔をしたピエロは踊り続ける。


それはますます激しく、よりいっそう民衆を刺激した。


「さぁて、では本日のゲスト、一人目の登場です!どうぞっ!」


ピエロは右手を思い切り斜め上へと突き出した。


その先には背の高い鉄柵の切れ目があり、そこに小さく簡素なドアが取り付けてあった。


そのドアは錆び付いているのか、ギギィと言う嫌な音ともにゆっくりと内側に開き出す。


民衆のわぁわぁと言う声で耳がちぎれてしまいそうな騒音を作り上げていた。


それはドアが開いていくに連れてより大きく、よりうるさく、より耳障りになっていく。


そして、民衆が、騒音が最高潮に達した時、そのドアをくぐったのは、人よんで『千本の鎖』にして、『惨劇から人々を救った英雄』、その名も、フラメル・ルート。


彼が身にまとっていたのは『選別官』特有の白のコートではなくて、『選別官』統括者である証、赤いコートだ。


それも、従来のものに手を加えたもので、豪奢な見た目に反してより機能的、かつ軽量化されたそのフォルムはもはや芸術と言っても過言ではない。


そして、そのコートの左の胸元に輝くは英雄の証、『白龍』の刺繍だ。


これまた、どれほどの手間暇をかけたのか、龍の鱗や髭などの細部に至るまで丁寧に仕上げられていた。


そして、そんな肩書きを持った彼、フラメル・ルートは大観衆には微塵も動じず、まるで機械のように精密かつ無駄のない素早さでうるさい観衆を黙らせ、かつその目にありありと存在感を見せつけた。


彼は左手を掲げたパーツ・ブラッドリーの元へと到着すると、静かに用意された座り心地の良さそうな椅子に腰掛けようとしたが、しばし、その動作を止めたあと、立ち続けることを決めたようだった。


なんと殊勝な男か。


以前から彼を知っていたオール・ブラッドリーはその上でさらに感心した眼差しを向けた。


しかし、フラメルはなにやら困った表情を浮かべていた。


と同時にさみしそうな顔だ。


自分は人とは違うと、そんな風に考え出してしまった障害者のような目をしていた。


考え方によっては彼は多いにその反対なのだが、表現としてはこれが一番妥当だろうと思う。


「………それも、そうか」


オールは威厳を保とうと先ほどと同じように眉一つ動かさずつぶやこうとしたが、そこにこもった『意味』にあてられ、それはうまくいかなかった。


これから始まるショーは感がいいものならとっくに気がついたはずだ。


士気を高揚させるため、魔人との戦争に勝つためのプロセスの一つであるショー。


それをこの公開処刑場で行うわけ、そして、そこに英雄、フラメル・ルート、通称『千本の鎖』が呼ばれたこと。


最後にこれからあのさびれたドアの向こうから出てくる人物をみればいくら勘の悪いものにだって嫌でも察しがつく。


「さてさてぇ!今回のショーに当たっての意気込みを皆さんに向けてぇぇどうぞっ!」


パーツが叫ぶ。


観衆がどよめく。


苦しげな表情で椅子の背に手をかけたままのフラメルが顔をあげる。


「魔人とは人にあらず。魔人とは殺人者であり、魔人とは我らの敵であり、魔人とは悪魔なり。さらば、これを打ち砕かん」


彼は呻くように答えた。


期待通りの展開とはいかないまでも、十分にパーツの意思に応えるものだった。


「素晴らしぃぃ!さすが我が国最強の英雄。それでは本日の実験台を務める、この世に生ける悪魔。狂った殺戮者であり、先日の『惨劇』を起こした者にご登場願おう」


パーツは巧みに言葉を操り、声を高めつつ、暗い部分ではまるで観衆の気持ちを汲み取るように低くその音量を上手く合わせた。


そうして、律儀にも一度開かれてからすぐに閉められた、あの鉄柵の切れ目のドアが先ほどよりも嫌な音を立てて開く。


その上先ほどより速度が遅いものだから、ギギギギィと嫌な音も長引く。


そうしてその者、ついに観衆の前に姿を現す。




その名も、ギン。


だが、彼にもはや人権はない。


尊厳はない。


あの夜を境に彼は、ここに集まった人々、いや、全国民を敵に回してしまったのだから。


関わりがない魔人と人との間に裁判権などの取り決めはない。


ゆえに彼は今なされるがままの人形であり、現状からしていえば生贄だ。


彼の背にある、二メートル以上はあり、闇色に美しく、妖しく艶めいているはずだったその翼は、所々羽が剥げ、血やその他のものに汚され見る影もない。


根元の背中との接合部は傷だらけで、骨が折れてしまったのか、翼を支える機能は上手く働くことができないようだった。


彼の顔はやつれ、過去に持っていたはずの少年っぽさと引き換えにくたびれた表情を貼り付けていた。


羽ばたくことはおろか、展開することすらできない翼はダランと地に垂れ、彼は重そうにそれを引きずり、たくさんの拘束具をまるで衣服のように身にまとってこのショーの会場へと入場した。


オールはその光景を見て自らの胸が疼くのを感じた。


いや、それはただの疼きと言い切ることのできない、強い衝動だった。


自らが視界にいれ、冷徹に見守るこの光景は一体なんだ?


と自問する。


これが自らの求めてきた国民の理想像か?


これこそが指導すべき国民たちか?


違う、断じて違うはずだ。


だけれど、彼は動き出せない。


己の中で出した結論。


それに従うことはできない。


彼は測りにかけているのだ。


自分の意思に従うことによって動いた時、どれだけの国民を救えるか、また、このまま状況を維持した場合、どれだけの国民を救えるか。


どちらがより国のためになるのかを。


無論そのはかりはとうの昔に片方へと傾いてしまっている。


だから彼は動かない。


ただ、震える唇を噛み締め、動き出そうとする片腕をもう一方の腕で押さえつける。


これが一番だと、決めたから。


進み出してしまった時は戻すことができない。


ギンがよろよろと断頭台へ近づく。


そこには抵抗の色は浮かがえない。


ただ、運命を受け入れ、その流れに従ってやっとのことで体を動かしているかのようだ。


彼を押さえつけている拘束具はかろうじて足を動かせるように設定してあるようだが、タワーオブホワイトに収容されていた時のダメージは大きさを考慮すると、それは少々酷な重さであると考えられた。


だが、彼は一言も文句を言わず、泣き言も言わず、うめき声すら漏らさずにただパーツの元へと向かう。


もしかすれば、もう口を開くのも億劫なのかもしれなかった。


だが、彼は足を止めない。


折れた漆黒の翼をなんとか引きずり歩く様は、さながら神話の中の堕天使のようであった。


罪を表す拘束具に身を固め、その重さに顔を歪めながら、少しでも自らの罪を贖うために足だけを動かす。


いつか、その翼に光が戻り、また元いた大空へと飛び立てる日が訪れることを願うかのように…。


だが、当然のことながらそんな日は訪れない。


彼の犯した罪は彼と言う器に入るには大きすぎ、多すぎ、重すぎた。


溢れ出した罪は彼と言う器自体を捻じ曲げ、外側からもそれを破壊しようとする。


奪った命は返すことができず、壊したものは賠償することなどできない。


そして、その罪によって直接被害を受けたものたち、間接的に被害を受けたものたちが、恨みの炎を鎮めるため、ここにやってきた。


そんな彼らが堕天使の登場に、湧き上がった。


ようやっとはけ口を見つけたのだ。


奪われたものは帰ってこず、壊されたものは修復不能だ。


だから、彼らはその元凶を嘲笑い、罵り、痛めつけ、その心に宿る炎で燃やし尽くしてしまおうとしている。


中にはこんなことに反対と言うものもいるだろう。


もともとこの国に死刑はない。


遥か昔に歴史の流れにかき消された野蛮な刑だ。


しかしながら、怒りはそれすらも呼び起こす。


そしてその怒りの炎は反対派のものもその一部として取り込み、その火力を増していった。


ギンがズザザーッと拘束具を引きずりながら一歩を踏み出すたび、民衆は湧き、ピエロは踊り、黒衣の男と英雄はその表情に影を落とす。


そうして、数分後、世紀の大実験と言う名目の公開処刑が始まる。


「さぁてぇ!キャストは出揃いました!それでは始めましょうかぁぁ!世紀の大実験を!!!」


「「「おおーーーーーーーーーーーー」」」


観衆の野獣のような雄叫びが錆びれた処刑場に場違いなまでの熱を与える。


その雄叫びと同時に、断頭台へと堕天使はその身を横たえた。


仰向けになった堕天使の視界に過去の異物である鈍く光る肉切り包丁を巨大化したような刃が映り込む。


その刃は誰のものともつかない乾いて黒ずんだ血のあとにまみれ、見ただけで生命の終わりを予期させる。


黒衣の男は照りつける日差しの中にその鈍色の光と堕天使の顔を順に見た。


その眼差しにどんな感情の色が浮かんでいたのかは誰も知ることはできない。


ただ、堕天使は誰の目から見ても清々しい顔をしていた。


やっと努力の報われた苦労人と同様に、疲れきっているがあたかもこれから幸福が待ち構えているとでも言いたげな表情だった。


黒衣の男はそこに胸の痛みを覚えたのは確かだろう。


なぜなら彼はこれからその表情がどんな色に『歪む』のかを知っているから。


そんな黒衣の男のことなど気にした様子もなく、ただ個人的な影をその顔に落とした英雄は湧き上がる歓声の熱に浮かされるでもなく、登場と同じように機械的な動作で断頭台へとまっすぐに向き直る。


そして、緑色の瞳を油断なく光らせながら踊るピエロへとなにやら指を立てた。


それは何かの合図のようだった。


ピエロはその合図に反応し、踊りをやめると、声を大にして叫んだ。


「それではぁぁ!世紀の大実験の始まり始まりぃぃ!!…と行きたいところですが、その前にもう一度実験の概要をご説明させていただきます。そうでないと実験をしっかり楽しめませんからね」


そう言ってパーツ・ブラッドリーは真剣な口調で実験について改めて語り出した。


それはかなり簡略化したもので、『人は光を持っているように、魔人はその対局にある闇を持っている。その二つの種族、二つの力は本来、互いに打ち消し合うものだが、「光の成長」という現象によって強化された光は闇に勝る力を持ち、闇を食らうことが確認された。それを持つものはごく少数で今回のゲストとして呼ばせていただいた英雄殿がその一人である。その光の成長を遂げた光を直接魔人にぶつけた場合、どうなるのだろうか?という素朴な疑問を解決するための実験である』という具合だ。


彼はその説明の最後に、


「ではぁぁ!英雄殿、やってしまってくださいな!」


と付け加えると、『世紀の大実験』は幕を開けた。


英雄殿はその手を高く掲げた。


すると、公開処刑場の整備されていないボコボコとした土の中から、鎖が一本、飛び出した。


それはもちろんただの鎖などではない。


真昼間の日差しに勝るとも劣らない輝きを放ち、地中から飛び出した光の鎖はこの世のものとはとても思われないほどの美しさを持つ。


それは一つの輪だけで数十センチを誇るとても大きなものだ。


集まった人々はその美しさと桁外れなサイズに驚き、感動し、魅入られ、歓声をあげるのも忘れてしばしだまってそれを見つめた。


その長さを測ることはできない。


だが、少なくとも、地上に見えている部分だけで数十メートルを越しているだろう。


これぞ、光を超えた光、罪人を縛り付ける断罪の輝きを持った、神聖なる拘束具。


その名も『千本の鎖』。


だが、それはもちろんその名の通り一本などではすまない。


黙り込んだ群衆を、地中からあとを追うように出現した『千本の鎖』の数々がさらなる驚きへといざなう。


ある中年の男は口をポカンと開き、間抜けヅラでその大蛇のようにうねっている鎖に目を奪われた。


またある若い信心深い娘はそのあまりの神々しさに頭を垂れ、祈りを捧げた。


またある少年は暴れ回る巨大なミミズのように見えたその鎖を恐れるあまり、一緒にきていた両親を振り返りもせずにその場から逃げ出した。


大蛇のような光の鎖達はさらにその数を増やし、視認できる数はとうに百を超えていた。


そして、それらはその鎌首をもたげ、遊びは終わりだとばかりに翼の折れた罪人の横たわる断頭台へと一斉に進んだ。


そうして、世紀の大実験の検証が始まる。


鎖の一本が堕天使の身体に巻きついた。


とても、自然な動作で。


彼の背に潜り込むように。


と同時に放たれた、やつれた堕天使の叫びは普通ではなかった。


「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁおぉおおぉおぉぉぉぉぁぉ具ぁぉぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


寝たままの体勢でどうしたらここまでの叫びがあげられるのかわからない。


そんなレベルの声が観衆の、英雄の、オールの、パーツの耳に突き刺さり、その罪悪感を刺激し、掻き立てる。


光の鎖はまるで新聞紙が水を吸い取るみたいに、堕天使を構成する成分のような闇を吸い取って行く。


とてもまともな光景ではなかった。


一秒ごとに、いや、一瞬ごとに、ギンの何かが削り取られ、それと同時に体のいたるところから血液という血液が、内蔵という内蔵が飛び出す。


ぐちゅり、ぐちゅぐちゅという嫌な音と共にコップに入れすぎた水みたいに身体の中の構成物が溢れ、その耐えようもない苦痛に地獄絵図を彷彿させる絶叫が広場を支配した。


断頭台へと新しい血が流れ、染み付き、血だまりを作った。


それが断頭台を赤く彩り、その本来の色を取り戻したかのように見せた。


断頭台はそれを喜んでいるかのようにギシギシと音を立て、そのギロチンを揺らす。


人々はそのあまりにおそろしい光景に目を伏せ、断末魔の叫びに堪えきれず、その耳をふさぐ。


だが、その叫びはあまりに大きく、あまりに痛みを伴った。


それは人々の心を高揚させるどころか、逆に締め付けられるような窮屈な気分にさせた。


目の前に起こり得ている自体に自らの生命の危機にも似た感覚を持ったのだろう。


そんな国民達に冷めた目を向けた黒衣の男はつぶやく。


「………お前たちの望んだことはもっとおぞましいことだろ」


男のつぶやきをまるで草刈り鎌みたいに刈り取ったのは悲鳴、絶叫。


「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


血反吐とともに身体の中のものを吐き出しながら、光に自らの存在を削り取られながら堕天使は泣く。


その目に涙はない。


もうすでに目玉など吸い取られた。


その天へと救いを求めるように伸ばした手には肉がなかった。


最後にその骨だけになった翼をピクリとだけ動かすと、堕天使は力尽き、光の鎖にまるで棺の中にいるように包まれて永眠へとその意識を飛ばした。


あまりに大きく、あまりに耐え難い、苦痛を伴った、『世紀の大実験』という名目の『公開処刑』の生み出した、史上もっとも辛い死にざまがそこにあった。


そして、英雄は剣をさやに戻すように光の鎖を地中へと返した。


それから、機械のような動作で今度こそ椅子に腰をおろした。


そこには遠慮などの色は見えない。


そうしなければならないという意思のようなものが感じ取れた。


そして、公開処刑場にはただならぬ空気とともに、死臭と血の匂いが混じり合い、救い様のないまでの闇が影を落としていた。


時刻としては正午であるのに、真夜中の闇よりも深い暗色に染め上げられていた。


誰も、声を発しない。


誰の顔にも感情の色は読み取れない。


ただ、そこに立っているだけのマネキンの群れのようであった。


彼らはこの実験を通してようやく気づくことができたのだ。


英雄殿の至った考えに。


『復讐が蜜より甘いなんて嘘だ』


英雄は心の中でまた自らの言葉を反芻した。


こうして英雄にとっては二度目の復讐が、民衆にとっては『世紀の大実験』が、パーツ・ブラッドリーからすれば大失敗と言える公開処刑が、オールにしてみれば愚かな行為が、幕を閉じた。


断頭台の上へ無造作に置かれた堕天使の翼が、土台のカードを抜き取られたトランプタワーのように、音も立てず地に崩れ落ちる。


粉末と化したその翼はどこからか流れた風にだかれ、飛ばされた。


風だけはギンを気遣い、その骨だけでも故郷へ届けよう…そんな優しさを持ち合わせていたのかもしれなかった。



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