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となりの場所と交わるとき  作者: 西野了
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道の駅の風景

 道の駅に着いた。そこは南国だった。4月というのに気温は30度を越えている。 道の駅といっても、駐車場は狭く施設も古びていて、寄せ集めのまとまりのないスペースだ。 何かの植物展示会のようなものがあり、どこかの農業高校の生徒が駆りだされているのか、つまらなそうに受付をしていた。「日曜日なのに、どうしてこんなことしなきゃいけないの?」と受付の女子高生は思っていた。100%そう思っていた。 暑さのためのどが渇いた僕は自動販売機で缶コーヒーは買った。すると、その隣で、薄汚れた女が空き缶を整理していた。いや、彼女は整理していたのではなくチェックしていたのだ。ジュースやコーヒーが残っていないかと! そして残っていた液体を平気で飲んでいた。僕は彼女に気付かれないように、飲み干したコーヒー缶をゴミ箱に捨てた。 それから野菜を買っていた妻のところに行くと、そこには酔っ払った爺さんが大きな声で何か喋っていた。僕らに何か問いかけているようにも聞こえたし、独り言を言っているようにも聞こえた。そして彼の喋っている日本語は僕らにはまったく理解できなかった。いやその言葉は日本語ではなかったのだろう。まるでコアラがカマキリの言葉を話しているような不可解な響き・・・・・・

 僕らはその酔っ払いを無視し、そして妻は真っ赤なトマトを1袋買った。 娘はたこ焼きを買ったが食感が悪いと文句を言い、結局3個しか食べなかった。かつおぶしも青海苔もかかっていないシンプルで愛想のないたこ焼き。 僕らは、その不思議な空間で結局1時間過ごした。

 やけに現実感のない場所と時間。

 そこは現実とは違った世界だったのかもしれない。そして僕らはその道の駅に馴染むこともできず、足早に通り過ぎた。

 蜃気楼のような昨年の4月の出来事だった。


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