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となりの場所と交わるとき  作者: 西野了
11/24

超高速でキーボードを叩くトラ猫

 久しぶりの休日なので、ネットカフェに行く。

 アイスカフェラテをつくり、オープン席につく。「龍狼伝」と「修羅の門」の単行本と、「キングダム」の最新話が載っておるヤング・ジャンプを持ってくる。

 パソコンのインターネットからキース・ジャレットの音源を引っ張ってくる。ヘッドフォンをしてキース・ジャレット・トリオの演奏を聴く。「俺は真のジャズ・ファンだぁ!」とうんちくを垂れる奴はどうしてキースが嫌いなのだろう? マイルス・デイビスだってキースを認めているのに。

 「修羅の門」の最新刊を読んでいると、派手な格好をした婆さんが身体を傾げながら、ゼイゼイ言いながら歩いてきた。

 僕が優雅に漫画本を読んでいると、婆さんが偉そうに手招きしている。携帯電話を充電するのにプラグの差込口がわからんと言うのだ。それだけしか話していないのに、ヒューヒューと不吉な音が真っ赤な口から洩れている。

 それから婆さんは懐からトラ猫を引っ張り出した。太った大きな目つきの悪いトラ猫だ。婆さんはゲホゲホと咳をしながら、そのトラ猫用に椅子を確保した、トラ猫はパソコンの前に座るとマウスをクリックし、現れた画面を見ながら猛烈なスピードでキーボードを叩き始めた。隣の婆さんもその画面を見ながら手帳に何か書き記している。そして時折トラ猫に耳打ちし、それに対してトラ猫も「ウニャ」とか「フン」とか答えている。

 僕はヘッドフォンをしているが、何故か奴らの声や動作の音が頭に入り込んでいる。僕の至福の時が婆さんとトラ猫に破壊されている。僕はだんだんと怒りがこみ上げてきた。我慢できずにジーンズのポケットから柴犬の五郎を取り出して、彼らの騒がしい動作をやめさせようと試みた。

 五郎はちょっと遠慮しながら「ウー、ワン!」と威嚇した。すると婆さんが「虎八、やっておしまい!」としわがれ声で叫んだ。「シャー!」とトラ猫・虎八は電光石火の右猫パンチをくり出した。「ワオーン」と情けない声を上げた五郎は吹っ飛ばされてしまった。そして我が愛犬は文字通りしっぽを巻いて僕のポケットに逃げ帰ってしまったのだ。その後、婆さんと虎八は何事もなかったかのように、同じ作業を続けていた。

 あーっ、だから僕は婆さんと猫が嫌いなのだ。

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