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となりの場所と交わるとき  作者: 西野了
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飼い猫シロの目線

 天井が低い。いや床が浮き上がったのか?

 仏壇のある空間がやけに狭く感じる。空気も薄く息苦しい。

 この家自体も細かく仕切られていて、いたるところにドアや襖、ガラス障子がある。いちいちそれらを開け閉めするのは面倒くさい。

 以前は屋根裏にねずみがいて、私が来る前まで夜中には奴らの走る音が聞こえていたそうだ。

 下の部屋に続くドアは開け閉めすると、いつも「ギャー」というささくれ立った音を発する。

 2階は激しく歪んでいて、廊下を歩くとき少々やっかいだ。2階も私がちゃんと見回りをしているが、ときどき変な奴がやってくる。そいつらは白い服を着て体がぼやけている。

 家族の奴らはどうして彼らに気づかないのだろう。2番目の孫娘は何となく気づいているようだが。彼女はぼんくらばかりの家族の中で一番まともだからな・・・・・・。

 2階の廊下といえば私が若い頃、走り回って階段に転げ落ちたこともあった。大体この家の造りがおかしいから、あんなひどい目にあったのだ。まあ若気の至りとでもいえるが。あの時はみんな心配してくれて、下の孫娘なんかは真っ青になって今にも泣き出さんばかりだったな。私の関節と筋肉の柔軟性、それから身体能力を考えれば大したことはなかったのだが。言葉が通じないということは、こんなとき不便なものだ。

 しかし父親はダイエット中と言っているくせに毎晩ビールや焼酎を飲んで、柿の種やナッツをボリボリと食ってやがる。それから五十肩だとかヘルニアとか坐骨神経痛で運動ができないとかほざいている。それでダイエットでもないだろう。だからあんなに体が重く動きが鈍いのだ。

 まあコイツが早く死のうがそれはどうでもいいことだ。私としては婆さんが私の寿命まで生きてくれればそれでいい。

 ところで人間って奴はほんとうに頭が悪い。いつも私は眠っているだけでいいなあとか、勝手気ままに生きているとか、ニャーニャーうるさいだけだとか話しているが、私はそんな暇ではない。眠っている間でもこうして家族の奴らの頭を巡回しているのだ。そして家族がうまくいくようにあれこれ操作してやっている。人の頭を覗くのは骨の折れる作業だ。澄ました顔をしている奴ほどとんでもないことを考えていてややこしい。まあそれは言わないでおこう。

 そろそろ息子の頭から離脱しよう。こんな不健康な心身の輩にいつまでも留まっているとこちらまでダークな性格になっちまう。疲れた・・・・・・。今から、ちゃんと眠ることにしよう。

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