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DEFENDER ~京葉学園防衛記録~  作者: 二樹霖
第一章 防衛校
7/13

第六節

二樹です

ようやく七節につなげました


あと二節で更新再開という形になります

陽も沈み、空には三日月が登り始めていた。

晴れていたの束の間、雲はどんよりと垂れこめていた。

明日は晴れじゃなさそうですね、とその空を見上げて思う本庄。

学園からの帰り道。いつもは学園町からのバスに乗車するところが、今日に限ってはバスに乗り遅れた。

次のバスまでの時間は一五分と微妙であったから、徒歩でのんびりと帰路についた。


危険なのは承知の上で、だった。


最近多発している襲撃事件は、先の報告の通り明らかに防衛校関係者を狙ったものであった。

読んでいない本庄ではなかった。しかし、危険度合いは低い。

気をつけるに越したことはないのだろうが、わざわざそれほどまでに神経質になる必要もないのではない


か。という思いもあった。実際のところ気にすら止めない教員は多かった。

本庄は、案外気にしていた。気にしていたからこその行動だった。

自分を囮としたのだ。

襲われなければ越したことはないが、万が一襲われればそれでもいい。そう思った。

第一、小森同様本庄は教員の中でも教員隊に属する。

最低限自分の身は自分で守り、その上子どもたちの身も守る。

それぐらいの『力』は持っている。


(それぐらいの、力は。ですけどね~)小森先生には及びません、と笑う。笑って、そうして途端に止む。

かかった。

後方、数メートルに人影がついてきていた。

かなり上手い尾行だった。今の状況でなければ気づくのに苦労しただろう。

本庄は、人の心の動きに敏感であったが、それは何かしらの第六感的なところがあった。

それは同様に気配に対する感受性をも高めるようだった。

本庄自身もこの世界に入ってから気づいたことであった。

すぐに襲ってくる様子はなかった。

それはそうだろう。

ここは住宅街のど真ん中。ビルの裏路地などならともかくこんな場所で堂々と襲うなどという軽率な行為を取るとはとても思えなかった。

だったら、と本庄は逆に仕掛けた。

本庄は防衛校の教職員。白昼堂々作戦行動をしようと誰も咎めはしない。

寧ろ、秩序維持のために命をとしてくれているのだとそう考えるだろうから。

大きく一歩を踏み込んだ。

距離は一気に詰められ、右手から放たれるストレートは人影に直撃する。

しかし、

「ッ!」本庄は思わず体重をかけそこねた。人影は一歩後ろに下がるにとどまった。

人影、否身長一五〇センチ後半、パーカーを着てフードを深くかぶった『子供』。

間違いなかった。子供だ。

意外すぎた。意外すぎて本庄は次の一手を出すのに躊躇した。

しかし、相手はお構いなしだった。右手をそのまま受け流し、本庄の懐に飛び込んだ。

投げの姿勢。本庄はそのまま投げ出され、両手をついて一回転。そして、振り返る。

お互いにほぼ無傷。ここからが、本番だった。

本番、というが本庄は戸惑いを隠せなかった。

顔はよく見えない。しかし、子供であるのは間違いない。そんな相手を本気でのせるのか。

本庄たち教員隊が持つ技に非殺傷を目的としたものは少ない。

第一、戦場でそんなものは無意味だから。大抵の場合相手に傷を負わせることが前提になる。

柔道然り、剣道然り。

それでも、やらなければならない。自分を、生徒を守るために。


結果的に、馬乗りになる形で拘束するに至った。

かなりタフであったから苦戦させられた。

「はぁ…、手こずりましたよ?」本庄は手をポンポンと叩く。

「・・・」対し、相手は何も言わない。

むっとした本庄はでは、と言って、

「お顔、見させてもらいますよ」フードに手をかける。

ほんの少しの抵抗を見せたあと、素直に顔を晒した。

「・・・!」本庄は、二度驚いた。

少女、それもちょうど自分の教える学年に近い。

きれいな顔をして、まるで『こっち側』の人間とは思えなかった。

しかし、瞳はうつろ。本庄は見つめて、傷ついた。

どうしてこんな眼をするのか。冷たい、何も見ていないような。そんな虚ろな瞳。

刹那、拘束がわずかに緩んだすきを狙って、少女は反撃に出た。

本庄は、三度驚きこそしたが冷静に対処できた。


しかし、本庄は甘かった。


どうしても、その最後の一手を踏みとどまる。どうしても、倒せなかった。どうしても、傷つけられなかった。



その時点で本庄の負けは確定した。


ここまで来るのにかなり長かったです


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