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DEFENDER ~京葉学園防衛記録~  作者: 二樹霖
第一章 防衛校
6/13

第五節

二樹です

だんだんと分量が減っていっているのが心配です

巧の言う、立候補というのは防衛校の教師になることを願った者のことを指す。立候補の枠は多く、難易度的にはそう難しいものではない。が、そういった教員はほんの一握りにとどまった。


誰が好き好んで“こんな学校”の教員になりたいというのか。


平和だ、少なくとも今は平和だ。少なくとも、ここ日本は平和だった。

それは、昔から変わらない。平和ぼけした日本は。


「それでは、お先しますね。天田君」本庄は封筒を握ってペコリとお辞儀をする。

「はい。僕もすぐ出ます」巧も軽く会釈。

こう何度もペコペコと頭を下げられると、少なくとも巧にとってはやりにくかった。どう接するのが妥当なのか、その線引が出来なかったから。

机の脇にかかった肩掛け鞄を持って、言うとおりすぐに教室を出た。

教室を出ると、一層大きな銃声がした。音からして拳銃弾。

巧はそれに釣られるようにして昇降口へ向かう。昇降口、下駄箱はあるが靴を履き替えることはない。基本的に校舎内は外靴で、となっている。当初こそ戸惑ったものであったが米国式、だと慣れた。

出てすぐ、垣根に遮られた先に校庭がある。そこからは訓練の様子が窺えた。

「窺うまでもないんだけど・・・」そうつぶやいて苦笑いする。

そこでは怒号が飛び交っていたからだ。

「おい、お前!遅れてるぞ何やってる!」大柄の教師、小森だ。

対する相手は、七年次の今年度編入組。体力的にはやはり七年間下積みを続けてきた防衛生とは違う。

「す、すみません!」こちらも大声で返す。

「謝る前に足を前に出せ!」小森は自分の足を叩きつつがなる。

小森が担当する補習はだいたいこんなものだ。

故に補習だけは避けるべし、と生徒への良い圧力にはなっている。

「よーし、今日はここまでだ!」いちいち声が大きい。悪いことではないが下手をすれば校舎内に音が漏れる。

手元のタブレットを見る小森に巧が声をかける。

「お疲れ様です、小森先生」

「おう、天田生徒。今帰りか?」小森は気づくと、端末を閉じる。巧は眼を細め、それからはい、と笑った。

「そうか、気をつけて帰れよ。最近物騒だ」太陽を見る。赤い空が黒く染まる。

「物騒なのは前からですよ」巧も釣られて見つめる。雲ひとつないきれいな夕焼けだ。

「そうだな。しかし注意して過ぎたことはないぞ」小森のその喋りのニュアンスは、巧を突き放すような。早く帰れと言わんばかりのものだった。

巧はそうしますか、と心のなかで言って踵を返す。

そうして思い出したように一言。

「・・・先生も注意されたほうがいいですよ」

小森は内心、驚き、

「・・・ああ。気をつける」と後ろ姿を見つめる。


巧が見えなくなってから、改めて端末を開く。題は2つ。

『大陸間密輸路一斉摘発作戦実施要項』。

「・・・、あれは気づいてるか。まいったな」

『襲撃事件に関する調査報告』。

小森は横腹を抑えながらつぶやいて、2つ目の題をタップする。

『先月から発生している市近郊の襲撃事件は、一連関係性が認められた』『学園関係者を襲撃したものではなく教員、中でも教員隊に被害が集中している』『防衛校教員隊はこの件について早急に対策をこうじる』

黙って、その項目を次々と進んでいく小森。

最下層に近くなったところで、指を止めた。

『被害』と書かれた。

被害者の氏名が淡々と並べられたその最下には、

『教員隊 小森』の名前があった。

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