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DEFENDER ~京葉学園防衛記録~  作者: 二樹霖
第一章 防衛校
3/13

第三節

二樹です。

連続で改稿していってます。

もうしばらくは見づらい状態が続きますのでよろしくお願いします。

実技訓練が終わり生徒たちの多くは、汗やら塗料やらを洗い流すためにシャワー室にいた。

シャワー室、とは名だけで大浴場に近い。源泉を使用している浴場が設置されており一時期雑誌に取り上げられたリもした。

国防機関にも関わらず、だ。その点は、敢えてということらしかった。

京葉その他防衛校は開校後、入学希望者倍率は右肩上がり。宣伝する必要もなさそうなものだが。


勝利を収めた第九分隊もシャワーを浴びるため、休憩室にいた。

多くの生徒が先に入浴しているため待っていなければならない。そこまで小さいものでもないので出入りはスムーズではある。が、人数が人数だ。

巧たち同様に入れず、未だ桃色の制服を着たままの生徒もざっと2,30人はいる。が休憩室はかなり広く混雑するようなことはない。

「ん~。しかし、バランスはとれていないね」巧があたりを見渡して、不意に呟く。

分隊の組み合わせはそれぞれ自由とされていて、『仲良し分隊』などのように何も考えず分隊編成を行うと戦力差が出たり、人があぶれたりその逆になることも有り得る。

その辺は、今回の件のように助っ人を入れるなどして対応したりもする。

尤も全分隊編成が適当なわけはないが実質、分隊同士の戦力差はとれていないといっていい。

んだなぁ、と真治。続けて、「でも、いいんでねぇの?楽しいし」笑う。本当に楽しそうだった。

「楽しければ全て良し、ともいかないんだよね実際」巧は苦笑。実戦を見通しての言葉だった。

防衛校の生徒が訓練をする理由は実戦があるからである。

実戦が来ないほうが良い自衛隊とは、全く勝手が違う。常に目前の実戦のために行っている。

この学園での生活は可もなく不可もなく、楽しいものだった。訓練は軍隊と比べるような厳しいものでもない。

しかし実戦はたしかにそこに存在する。明日隣にいる仲間が、友達が家族がいなくなるかもしれない。

そう考えると、訓練を楽しんでやる訳にはいかない。そういった緊張感を持つべきなのだと巧は考えている。

(でも、だとするとさっきのは甘いのかな)そうして、自分の甘さを垣間見る。巧の悩みだった。

そんな巧を視て、

「いいじゃねぇか、別に。『楽しくなかったらやってけねぇよ』」その台詞は呑気、そう捉えることもできる。彼の表情は明るくはない。きちんと、巧のことを視ている。だからこそ、真治なのだ。

「そう、だね」ある意味、真治が正解なのかもしれない、と巧は思う。実践で使える人材かどうかを見るため、の演習だが実戦とはやはり違う。ある種、お遊びだ。

表情を曇らせる巧の背中を真治が叩く。

「考えこむなよ、銃降ろせ。いつまでそんな重てぇもん持ってんだよぉ」

「うん、ごめん」我に返る。真治は銃もリュックも置いていた。

「・・・それとも何か、鍛えてんのか?」茶化す。辛気臭い話は誰でもしたくない。真治は、なおさらそういうのが嫌だった。

「いや、鍛える必要はあるんだろうなあとは思うけど、」今はいいかな、巧は握る銃と装備一式を長机に置く。

生徒たちの中には自分の銃を整備メンテしている者もいる。こういうものにも向き不向きがある。

できない生徒は何回やってもできないし、できる者は一度習うだけでひと通りのことができるようになる。

自分で整備できない生徒のために、専門の整備士が学園にいる。訓練で使ったあとや、調子が悪い時など、『気楽に声をかけてください』と定期新聞には書かれていた。

細かいところまでは出来ないため、最終的には整備場に行くことになる。

机の上には真治のリュックから出た罠と手榴弾が数種類ずつ並んでいる。これだけの量を持ち歩くのだから、拍手する他ない。

「・・・そんなに必要なのか毎回疑問だよ、それ」巧は長机を挟んで真治の向かいに座り頬杖をつく。

「これは俺のデフォルメ装備なんだよ」構わないでくれよ、と返す。

「デフォルトだね。・・・まあ、いいならいいんだけどさ、重くないかなぁって」たまに出る適当ボキャブラリに呆れながら、リュックを指さして言う。

「役に立ってるってことを忘れちゃならねぇよぉ?」自信に満ちた顔で言う真治。実際のところ真治の商売道具は役に立っているから、憎めない。作戦を立てたのは巧だったが、結局途中で変更してしまった。

その際頼ったのは商売道具、例の罠だった。

「なにも無理して持つことないよ。真治君」巧は真治のことだけを考えて言っているわけではない。指揮者として、隊のことを考えた上でのことだ。

「そんなにか?」少ししょんぼりする真治。巧はしまったと思った。そこまで言う気はなかった。

「あ~、違うんだごめ」「おぉ!写ってる写ってる!」と巧の声を遮って真治が立ち上がった。

「・・・」巧は意気阻喪させられた気分だった。

真治が見るのは大型モニタ。試合のリプレイが映しだされていた。

それを釘付けになってみている真治を見て巧は微笑む。普通の中学生というのはこういうものなのだろう。

「司令官たるもの、リプレイを見るのもいいんじゃねぇの?」真治が唐突に言う。巧が、呆れてるとでも思ったのだろうか。

違和感を感じた、その台詞に。

「え、なんだい藪から棒に」見るが、真治は目を合わせはしなかった。


真治にいつの間にか先を越された巧は、紗希と共にシャワー室に移動する。

「って感じなんだけど」巧は先程の違和感を紗希に聞いた。

そうですね、と少し考えた紗希は

「巧さんは考えすぎるんでしょう、なんでも」言って笑う。

笑われた巧は頭をかく。

「参ったなぁ・・・そんなこと言われるなんて」

「真治もそう思ってたんでしょう」紗希はそう言って上を見る。

巧はうーん、と腕組みをして、

「こんなに心配されるなんて、隊長としてどうなのかな」と悩む。

紗希は、横目で見てまたくすっ、と笑うと言った。

「いいんですよ」目をつむる。

(たっくんは、それでいいんです)

そしてまた笑う。

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