第9話「ゴースト俺、クズたちの本性を知る」②
翌日。
文哉は、三人の勇者たちを観察し続けた。
朝食の席。
三人は、いつものように食事をしていた。
葛城が、パンを齧りながら言った。
「しかし、あのランドドラゴンは強かったな」
「マジで死ぬかと思ったわ」
森川が、苦笑いを浮かべる。
梨花が、紅茶を飲みながら小さく呟いた。
「中田さん……可哀想でしたね」
「まあな」
葛城が、あっさりと答えた。
「でも、仕方なかったろ。あのまま全員で逃げてたら、全滅してたぜ」
「そうだよ。中田も、最後に役に立てて本望だろ」
森川が、軽い口調で言った。
文哉は、その会話を聞いて――全身が震えた。
(……本望?)
(僕が、本望だと?)
怒りが、限界を超えそうになった。
けれど――
その時、梨花が小さく笑った。
「まあ……あの人、戦闘では役に立たなかったですしね」
文哉の動きが、止まった。
梨花が――あの、いつも申し訳なさそうにしていた梨花が――
そんなことを、言った。
「鑑定しかできないくせに、偉そうに警告とかしてきて……うざかったですよね」
梨花の声は、冷たかった。
葛城が笑う。
「だよな。『危険です!』とか言ってさ。臆病なだけじゃん」
「まあ、あいつがいなくなって、正直スッキリしたわ」
森川も、笑いながら言った。
「それに――」
梨花が、紅茶のカップを置いて続けた。
「これで報酬も三人で分けられますし。中田さんの分も含めて、一人当たりの取り分が増えますよね」
「ああ、そうだな。まあ、あいつには悪いけど」
葛城が肩をすくめる。
「でも、どうせ戦闘で役に立たなかったんだし、報酬もらっても使い道なかっただろ」
「そうそう。俺たちが有効活用した方が、中田も喜ぶって」
森川が、軽薄に笑った。
三人が、笑い合う。
文哉は――
その光景を、ただ見ていた。
怒りを通り越して――
深い、深い絶望が、胸を満たした。
(ああ……そうか)
(僕は……最初から、こいつらにとって――)
(邪魔者だったんだ)
文哉の目から、涙が溢れた。
ゴーストになっても、涙は流れるのだと――文哉は知った。
◆
数日後。
文哉は、城下町を彷徨っていた。
もう、葛城たちの顔を見るのも嫌だった。
けれど――
復讐を諦めたわけではない。
何か、方法があるはずだ。
見えない、聞こえない、触れられない――
それでも、何か――
文哉は、考え続けた。
そして――
ふと、城へ戻る道すがら、酒場の前を通りかかった。
そこから、葛城の声が聞こえてきた。
文哉は、足を止めた。
酒場の中を覗くと――
葛城が、数人の女性を侍らせて、酒を飲んでいた。
「いやー、勇者様は強いんですね!」
「黒森を攻略するなんて、すごい!」
女性たちが、葛城を囲んで称賛している。
葛城は、得意げに笑っていた。
「まあな。俺、剣聖の才があるし」
そして――
葛城は、一人の女性の腰に手を回した。
「なあ、今夜、俺の部屋に来ないか?」
「え……でも……」
「大丈夫だって。俺、勇者だし。誰も文句言わないよ」
女性が、困惑した表情を浮かべる。
けれど、葛城は構わず――女性を強引に引き寄せた。
文哉は、その光景を見て――
吐き気がした。
(こいつ……)
さらに奥を見ると――森川もいた。
彼は、テーブルに座り――魔法の炎を手のひらで弄んでいた。
「見ろよ、これ。俺の魔法」
周囲の客が、驚嘆の声を上げる。
「すげえ!」
「さすが、大魔法使い様!」
森川は、得意げに笑いながら――
突然、炎を大きくした。炎が、天井近くまで伸びる。
「うおっ!?」
客たちが驚いて飛びのく。
「はは、ビビるなよ。これくらい、俺には楽勝だから」
森川が笑う。
けれど、その炎で――テーブルの端が、焦げていた。
酒場の主人が、慌てて水をかける。
「も、森川様……店の中では……」
「あー、悪い悪い。弁償するよ。金ならあるし」
森川が、適当に金貨を投げた。
文哉は、その姿を見て――
怒りが再び湧き上がった。
(こいつら……何様のつもりだ……)
そして――
文哉は、酒場の奥に――梨花の姿を見つけた。
彼女は、一人でテーブルに座り――
目の前には、宝石が並べられていた。
「これ、全部買います」
梨花が、宝石商に言った。
「あ、ありがとうございます、梨花様!」
宝石商が、喜んで頭を下げる。
梨花は、宝石を一つ一つ手に取り――
うっとりとした表情で眺めていた。
「綺麗……これがあれば、私も……」
彼女の目には、異様な執着心が宿っていた。
そして――
梨花が、宝石商に向かって言った。
「ねえ、この宝石……城の侍女たちは持っていないわよね?」
「え、ええ……これは高級品ですので、一般の侍女には手が届かないかと……」
「そう。良かった」
梨花が、満足げに微笑んだ。
「私だけが持っている……それが大事なの。みんなが持っているものなんて、価値がないもの」
宝石商が、困惑した表情を浮かべる。
けれど、梨花は気にせず続けた。
「中田さんがいなくなって……報酬、三人で分けられますしね。もっと良いものが買えるわ」
その言葉に――
文哉の全身が、凍りついた。
(……報酬?)
(僕の、死を……そんな風に……)
そして――
梨花の本性が、露わになった。
彼女が欲しかったのは、宝石そのものではない。
「他人より上」に立ちたい――
「他人を見下したい」――
そのための、道具だったのだ。
怒り。
憎しみ。
そして――
深い、深い悲しみ。
文哉は、酒場を出た。
もう、見ていられなかった。
◆
その夜。
文哉は、城の屋上に立っていた。月が、空に浮かんでいる。
文哉は、月を見上げながら――
静かに呟いた。
「……クズだ」
「あいつら、全員……本物のクズだ」
文哉の目に、冷たい光が宿った。
「葛城は、女を弄ぶクズ」
「森川は、力に酔って周りを見下すクズ」
「梨花は、金と物で他人を見下す守銭奴のクズ」
「そして――」
「三人とも、僕を殺した」
「三人とも、僕の死を何とも思っていない」
文哉の拳が、震えた。
「許さない……絶対に、許さない……」
「葛城……森川……梨花……」
「お前たち三人を……必ず、絶望させてやる」
「この『見えない存在』を使って――」
「お前たち全員の人生を、ぶっ壊してやる」
文哉の瞳に、復讐の炎が燃え上がった。
けれど――
その時、文哉は気づいていなかった。
自分がこれから歩む道が――
単なる復讐だけでは終わらないことを。
そして、自分を認識してくれる少女との出会いが――
すぐそこまで迫っていることを。
月が、静かに輝いていた。
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【名前:葛城隼人 / 種族:勇者 / 年齢:24歳】
【スキル:剣聖の才 / レベル:18】
【ステータス:HP590 / 攻撃力210 / 防御力72】
【隠しステータス:女性関係のトラブル3件 / 倫理観:低】
【名前:森川大輝 / 種族:勇者 / 年齢:21歳】
【スキル:大魔法使いの素質 / レベル:17】
【ステータス:HP360 / 魔力255 / 防御力46】
【隠しステータス:器物損壊3件 / 傲慢度:高】
【名前:白石梨花 / 種族:勇者 / 年齢:22歳】
【スキル:聖癒の力 / レベル:15】
【ステータス:HP340 / 回復力235 / 防御力62】
【隠しステータス:借金:金貨150枚 / 物欲:極大】
いまだにゴーストの特性がうまく使えていない文哉ですが、
次回、ヒロインの登場となります!本日の18時に投稿します。ぜひお楽しみに!!
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