第33話「ゴースト俺、追跡者から逃れる」
森の中を――エリスと文哉は、急いで歩き続けていた。
村を脱出してから、半日が経っている。だが――まだ、安心はできなかった。
「ハァ……ハァ……」
エリスが、息を切らしている。
「少し……休もう」
文哉が、心配そうに言った。
エリスは――木の根元に座り込んだ。疲労が、顔に表れている。
「ごめんね……フミヤ……私、足手まといで……」
「そんなことない」
文哉が、優しく答えた。
「エリスは、よく頑張ってる」
二人は――しばらく、休息を取った。
◆
その頃――セレスティア村には、兵士たちが到着していた。
重装備の兵士――十数名。村人たちの要請を受けて、近隣の駐屯地から派遣されてきた。
兵士の隊長――ガードナーという男が、村長の前に立った。
「ヴァランティエール家の末裔が――この村にいると聞いたが」
ガードナーの声は、冷たく響いた。
村人の一人が――前に出た。
「はい……廃墟になった家に、住み着いていました」
「だが――今朝、逃げ出したようです」
ガードナーの目が――鋭くなった。
「逃げた? どの方向だ」
「森の方へ――」
「分かった」
ガードナーが、部下たちに命令する。
「追跡班を編成しろ。逃がすな」
兵士たちが――素早く動き出した。
◆
ガードナーは――王都からの命令書を持っていた。
『ヴァランティエール家の末裔を捕らえよ。生死は問わず』
その命令の裏には――王都の思惑があった。
聖女の力――それは、死者と対話できる力。戦場で死んだ味方から情報を得たり、敵の動きを予測したり――軍事利用できる可能性がある。
王都の上層部は――エリスの力を、「兵器」として利用しようとしていた。
(聖女の末裔か……捕らえれば、昇進は確実だな)
ガードナーは――功名心に駆られていた。
「全員、出発するぞ!」
兵士たちが――森へと向かった。
◆
エリスと文哉は――再び歩き始めていた。
だが――文哉が、何かを感じ取った。
「エリス――止まって」
エリスが――立ち止まる。
「どうしたの?」
「誰かが――追ってくる」
文哉の声が――緊張していた。
文哉は――『鑑定』の範囲を広げて、後方を探った。
【追跡者:12名 / 種族:人族 / 職業:兵士】
【平均レベル:18 / 武装:剣・槍・弓】
【隊長レベル:25 / スキル:追跡術・剣術(上)】
文哉の顔が――青ざめた。
(レベル25の隊長……それに、兵士が12名……!)
「エリス――兵士たちが、追ってきてる」
エリスの顔から――血の気が引いた。
「えっ……もう……!?」
「村人だけじゃない――本物の兵士だ」
文哉が、厳しい表情で言った。
「急いで――逃げよう」
二人は――走り始めた。
◆
森の奥へ、奥へと――二人は逃げ続けた。
だが――兵士たちは、訓練された追跡者だった。確実に、距離を縮めてくる。
「見つけたぞ! 前方だ!」
兵士の声が――背後から聞こえてきた。
「くそっ……!」
文哉が、舌打ちする。
エリスは――必死で走った。だが、体力の限界が近づいていた。
「ハァ……ハァ……もう……」
「頑張って、エリス!」
文哉が、励ます。
その時――矢が、エリスの横を掠めた。
「きゃっ!」
「弓兵がいる……!」
文哉が、警戒した。
エリスは――木の陰に隠れた。矢が、木の幹に突き刺さる。
「このままじゃ……追いつかれる……」
文哉は――決断した。
「エリス――僕が、時間を稼ぐ」
「えっ……」
「大丈夫。僕は幽霊だから――攻撃は効かない」
文哉が、自信を持って言った。
「エリスは――先に逃げて」
「でも……!」
「信じて」
文哉の声が――優しかった。
「必ず――追いつくから」
エリスは――文哉を信じて、頷いた。
「分かった……気をつけてね、フミヤ」
エリスは――さらに森の奥へと走った。
◆
文哉は――追ってくる兵士たちの前に、立ちはだかった。
もちろん――兵士たちには、文哉の姿は見えない。
だが――文哉には、ポルターガイストの能力がある。
「さあ――やってやる」
文哉は――周囲の石を浮かせた。
そして――兵士たちに向かって、投げつけた。
ガッ! バシッ!
「うわっ! 何だ!?」
兵士たちが――驚いて立ち止まった。
「石が――飛んできた!?」
文哉は――次々と、石や枝を投げつける。
兵士たちは――混乱した。
「魔法攻撃か!?」
「姿が見えないぞ!」
だが――隊長ガードナーは、冷静だった。
「落ち着け! これは――聖女の能力だ!」
ガードナーが、叫んだ。
「物を動かす力――書物で読んだことがある!」
「ひるむな! 前進しろ!」
兵士たちは――ガードナーの命令に従って、前進を続けた。
文哉は――さらに攻撃を続ける。だが――限界があった。
(ポルターガイストの力は――そこまで強くない……)
(せいぜい――時間稼ぎにしかならない……)
だが――それでいい。エリスが逃げる時間を稼げれば。
◆
エリスは――森の奥深くを走り続けていた。
息が切れそうになりながらも――足を止めなかった。
(フミヤ……大丈夫かな……)
心配だったが――今は、文哉の言葉を信じて、逃げるしかない。
その時――前方に、小川が現れた。
(川……!)
エリスは――オーク村で学んだことを思い出した。
水の中を歩けば――足跡が消える。追跡が難しくなる。
エリスは――川の中に入った。冷たい水が、足を包む。
だが――構わず、川の中を進んだ。
◆
文哉は――兵士たちを引きつけ続けていた。
だが――ガードナーが、鋭い指示を出した。
「三班に分かれろ! 一班は、この攻撃に対応! 二班と三班は――先に進め!」
文哉は――焦った。
(まずい……分散された……!)
文哉は――全員を足止めすることはできない。
数人の兵士が――文哉の攻撃をすり抜けて、前進していく。
(エリス……!)
文哉は――急いで、エリスを追った。
◆
エリスは――川から上がって、再び森の中を走っていた。
だが――背後から、兵士たちの声が聞こえてきた。
「前方に――少女の姿を確認!」
「追え!」
エリスの心臓が――激しく高鳴った。
(まだ……追いつかれてない……!)
エリスは――オーク村で学んだ護身術を思い出した。
相手の攻撃を受け流す技術――それを、今こそ使う時だ。
兵士の一人が――エリスに追いついた。
「待て!」
兵士が――エリスの腕を掴もうとする。
だが――エリスは、素早く身をかわした。
そして――兵士の手を払い、走り続けた。
「くっ……素早い……!」
エリスは――自分でも驚いた。
(体が……動く……!)
オーク村での訓練が――今、役に立っている。
◆
文哉が――エリスに追いついた。
「エリス!」
「フミヤ!」
二人は――再び、一緒になった。
「このままじゃ――キリがない」
文哉が、考えた。
「どこか――隠れられる場所を探そう」
文哉は――『鑑定』で周囲を探った。
そして――ある場所を見つけた。
【洞窟:入口狭小 / 奥行き約30メートル / 隠れ場所として最適】
「エリス――あそこだ!」
文哉が、洞窟の方向を指差した。
二人は――洞窟へ向かって走った。
◆
洞窟の入口は――木々に隠れていて、見つけにくい場所だった。
エリスは――素早く、洞窟の中に入った。
文哉も――一緒に入る。
洞窟の中は――暗く、ひんやりとしていた。
二人は――奥の方へ進んで、身を隠した。
しばらくして――兵士たちの足音が、近づいてきた。
「どこへ行った……!?」
「この辺りのはずだが……」
兵士たちが――洞窟の入口の近くを通り過ぎていく。
エリスは――息を殺して、じっとしていた。
文哉も――動かずに、兵士たちの様子を探っていた。
◆
兵士たちは――洞窟に気づかず、通り過ぎていった。
「見失ったか……」
「この先を探せ」
足音が――遠ざかっていく。
エリスは――ようやく、息をついた。
「ふぅ……」
「まだ――油断はできない」
文哉が、警戒を続けた。
「しばらく――ここにいよう」
二人は――洞窟の奥で、休息を取った。
◆
エリスは――疲れ果てて、地面に座り込んだ。
「もう……人族の土地には、戻れないんだね……」
エリスの声が――悲しそうだった。
文哉は――エリスの隣に座った。
「ごめん……僕のせいで……」
「違うよ」
エリスが、首を振った。
「私の一族が――背負ってきた運命なんだ」
エリスは――空を見上げた。
「でも……私には、フミヤがいる」
エリスが、微笑んだ。
「だから――怖くない」
文哉は――エリスの強さに、感動した。
(エリス……)
二人は――しばらく、洞窟の中で過ごした。
外では――兵士たちが、捜索を続けている。だが――洞窟には、気づかなかった。
◆
夜になった。
兵士たちは――捜索を一時中断した。
「暗くなった……今日は、ここまでだ」
ガードナーが、命令を出した。
「夜明けと共に――再び捜索を開始する」
兵士たちは――野営の準備を始めた。
文哉は――その様子を、確認していた。
「エリス――兵士たちが、野営してる」
「今のうちに――逃げよう」
エリスは――頷いた。
二人は――静かに、洞窟から出た。
◆
暗い森の中を――二人は、慎重に進んだ。
兵士たちの野営地を――大きく迂回する。
文哉の『鑑定』が――道を照らしていた。
「この先を進めば――魔族領の境界に近づく」
エリスは――不安と期待が入り混じった表情だった。
「魔族領……」
「大丈夫」
文哉が、励ました。
「シルフィアがいる。彼女なら――助けてくれるはずだ」
エリスは――オーク村での髪留めに触れた。
魔族からもらった、この髪留め――それが、自分を守ってくれる。
「うん……きっと、大丈夫」
二人は――魔族領へと、歩き続けた。
◆
数時間後――二人は、ある場所に辿り着いた。
そこは――人族の領域と、魔族領の境界線だった。
目の前には――深い谷があり、向こう側が魔族の土地だ。
「ここを越えれば――魔族領……」
エリスが、呟いた。
文哉は――エリスを見つめた。
「エリス――本当に、いいのか?」
「うん」
エリスが、決意を込めて頷いた。
「もう――戻る場所はないから」
「それに――魔王城に行かないと、フミヤのことも分からない」
エリスが、前を向いた。
「私は――フミヤと一緒に、前に進みたい」
文哉は――エリスの決意を受け止めた。
「分かった――行こう」
二人は――谷を越えて、魔族領へと足を踏み入れた。
それは――人生の大きな転機だった。
だが――二人には、迷いはなかった。
共に歩む道――それが、二人にとっての正解だった。
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【名前:中田文哉 / 種族:ゴースト / 年齢:28歳(死亡)】
【スキル:鑑定 / ポルターガイスト(中) / レベル:2】
【ステータス:HP??? / 攻撃力??? / 防御力???】
【特性:物理無効 / 視認不可 / 壁抜け / 浮遊】
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:魂の視認 / 霊体との意思疎通 / 霊体使役(小)/ レベル:5】
【ステータス:HP115 / 攻撃力+6 / 魔力??? / 精神力:大】
【装備:短剣(攻撃力+2)/ オークの村からの贈り物(お花模様の髪留め)】




