第27話「ゴースト俺、魔族軍団長と遭遇する」
オーク村を出てから一日が経っていた。
文哉とエリスは、セレスティア村へと続く街道を――ゆっくりと歩いていた。
エリスの髪には――村長から最後にもらった、お花模様の髪留めが揺れている。
二つ結びにした髪の両側で――可愛らしく、花が咲いているようだった。
「この髪留め――すごく気に入ってる」
エリスが、嬉しそうに髪留めに触れた。
「みんなの気持ちが――詰まってる感じがして……」
「すごく似合っているよ」
文哉は――その姿を、静かに見守っていた。
(ああ……エリスは、本当に――あの村のことが好きだったんだな)
その時――
文哉は、何かを感じ取った。
(……気配?)
空から――何かが、近づいてくる。
高速で――まっすぐに、こちらへ向かって。
「エリス――上だ!」
文哉が、叫んだ。
エリスが慌てて、空を見上げる。
そこには、
大きな翼を広げた、ハーピーの姿があった。
オレンジ色の髪が――風になびいている。
ハーピーが、二人の前に――降り立った。
◆
文哉は、すぐに『鑑定』を使った。
【名前:シルフィア / 種族:ハーピー / 年齢:24歳】
【役職:魔族軍第四軍団長】
【レベル:64】
【ステータス:HP2980 / 攻撃力680 / 魔力370 / 防御力195 / 速度410】
【スキル:風魔法(上) / 物理戦闘(極) / 飛行(極) / 風読み / 疾風剣】
【特性:魔族 / 空中戦闘特化 / 高速移動】
文哉は――息を呑んだ。
(レベル64……!?)
これまで出会った中で――圧倒的に、最強の存在だった。
(攻撃力も、魔力も、速度も――全てが、桁違いだ……!)
文哉は、冷や汗を流した。
(戦ったら――確実に、死ぬ!)
文哉の頭の中で――警鐘が鳴り響いていた。
(どうする……? 逃げるか? でも――あの速度なら、すぐに追いつかれる)
◆
シルフィアが――エリスを見つめた。
「ふーん……」
シルフィアが、にっこりと笑った。
「あんたが――エリスか?」
エリスが――驚いた様子で、シルフィアを見つめた。
「えっ……私の名前、知ってるの……?」
「ああ――オーク村で、聞いたよ」シルフィアが、軽い口調で言った。
エリスの表情が――少し、明るくなった。
「オーク村……! 村の人たち、元気だった?」
「元気も元気――すっごく元気だったよ」
シルフィアが、楽しそうに笑った。
「村、すっごく発展しててさ――驚いたよ」
「倉庫も、水路も、浴場も――全部、あんたが作ったんだって?」
エリスが、少し照れくさそうに頷いた。
「私じゃなくて――みんなで、作ったんだけど……」
「へえ――」
シルフィアが、興味深そうにエリスを見つめた。
「人族なのに――魔族の村を、助けたんだ」
その言葉に――エリスは、少し戸惑った。
「人族……って……」
「ああ、そうだよ」
シルフィアの表情が――少し、冷たくなった。
「お前――人族だろ?」
エリスが、黙り込んだ。
シルフィアが、続けた。
「あのね――私、人族――嫌いなんだよね」
シルフィアの声には――明確な敵意があった。
「人族は――魔族の土地を、奪う」
「魔族の仲間を――容赦なく、殺していく」
エリスが――息を呑んだ。
「だから――人族は、敵なんだ」
シルフィアが、エリスを見つめた。
「お前も――人族だ」
文哉は――すぐにエリスの前に出ようとした。
だが――幽霊の自分には、何もできない。
(くそ……!)
その時――
シルフィアの視線が――エリスの髪留めに、止まった。
「……ん?」
シルフィアが、目を細めた。
「その髪留め――」
エリスが、反射的に――髪留めに手を当てた。
「これは……オーク村の、村長さんからもらったの……」
「見せて」
シルフィアが、一瞬でエリスに近づく。
エリスが――少し怯えながらも、髪留めを見せた。
シルフィアが――髪留めを、じっと見つめる。
「……これ、オークが作ったものだね」
シルフィアが、静かに言った。
「どうして、分かるの……?」
「魔力が流れてるから」
シルフィアが、髪留めに手を伸ばした。
「魔族が作ったものには――必ず、微量の魔力が込められる」
「これは――オーク特有の、土の魔力だ」
シルフィアが、髪留めから手を離した。
「オークたちが――心を込めて、作ったものだね」
エリスが、驚いた様子で――髪留めを見つめた。
「そうなんだ……」
シルフィアが――少し、表情を和らげた。
「……オークたちは、嘘をつかない」
「村長が――お前のことを、いい人だって言ってた」
「それが――本当だっていう証拠が、この髪留めだ」
シルフィアが、エリスを見つめた。
「オークたちが――お前に、心を許したんだな」
エリスが――嬉しそうに、微笑んだ。
「みんな――本当に、優しかったから……」
シルフィアが――深く、息を吐いた。
「……オーク村を、修繕してくれて――ありがとう」
シルフィアが――エリスに、簡単に礼を言う。
エリスが――驚いた様子で、シルフィアを見つめた。
「えっ……」
「あの村は――私の管轄領土なんだ」
シルフィアが、顔を上げた。
「本当なら――私が、もっと早く気づいて、助けるべきだった」
「でも――お前が、助けてくれた」
「だから――感謝はしてる」
エリスが――少し照れくさそうに、笑った。
「どういたしまして……」
シルフィアが――再び、真剣な表情になった。
「でも――勘違いするなよ」
「人族は――やっぱり、敵だ」
「お前が、オーク村を助けたのは――分かった」
「だから――今回は、見逃してやる」
シルフィアが、翼を広げた。
「でも――次に会った時、お前が魔族を傷つけていたら――」
シルフィアの目が――鋭く光った。
「容赦しない」
エリスが――静かに、頷いた。
「分かった……」
シルフィアが――空へと飛び上がり、風のように去っていった。
◆
エリスが――ほっと、息を吐いた。
「怖かった……」
文哉も――緊張が解けて、力が抜けた。
(よかった……何とか、無事だった)
「でも――」
エリスが、シルフィアが去った方向を見つめた。
「シルフィアさん――悪い人じゃない気がする」
文哉も――同じことを思っていた。
(ああ……あのハーピーは、魔族を――本当に、大切にしているんだな)
エリスが、髪留めに触れた。
「この髪留めが――私を守ってくれたんだね」
「そうだね……オークたちの、気持ちが詰まってる」
文哉が、優しく答えた。
セレスティア村へと――続く道を、
二人は――再び、歩き始めた。
◆
シルフィアは――オーク村へと、戻っていた。
(エリス――か)
シルフィアは、さっきの出会いを――思い返していた。
(人族なのに――魔族と、仲良くしようとしている)
(珍しいタイプだな……)
だが――
(それだけじゃない……)
シルフィアは、気づいていた。
(エリスと話している時――もう一人、気配がした)
(誰かが――そこにいた)
シルフィアの勘は――鋭かった。
(見えない誰かと話している――って、村長が言ってたな)
(あれは――本当に、誰かがいたんだ)
シルフィアは――興味を持ち始めていた。
(次に会ったら――いろいろと、聞いてみないとな)
◆
オーク村に――シルフィアが降り立った。
「ただいまー!」
シルフィアが、明るく声をかけた。
村長オークが――シルフィアを迎えた。
「もう戻って来たブモか!」
「うん――ちょっとね」
シルフィアが、村長の前に座った。
「今回、どのような件でこの村に来たブモ?」
村長が尋ねた。
「ああ、それね――」
シルフィアが、説明し始めた。
「この村は――私の管轄領土、第四領なんだ」
「最近、人族に領土を取られ規模が縮小しているだろ?」
「だから――定期的に、巡回してるんだよ。
今回は――数年ぶりに、立ち寄ったってわけ」
村長が、納得したように頷いた。
「そうだったブモか……」
「それで――」
シルフィアが、真剣な表情になった。
「村の状況――報告してくれる?」
村長が――ゆっくりと、語り始めた。
「実は――数年前、村のオークたちで遠征に出たブモ……」
「その間に――人間に、村を乗っ取られてしまったブモ……」
シルフィアの表情が――険しくなった。
「人間に……!」
「でも――今は、無事に取り戻したブモ」
村長が、続けた。
「人間たちは――村にいろいろな設備を作ったブモ」
「井戸、水路、浴場――それを、エリスが直してくれたブモ」
シルフィアが――少し、安堵した様子で頷いた。
「そうか……無事で、よかった」
「でも――これからは、もっと用心するブモ」
村長が、真剣な表情で言った。
「ああ――それがいい」
シルフィアが、頷いた。
その時――
浴場の方から――オークが出てきた。
「ブモー……」
風呂上がりのオークが――気持ちよさそうに、歩いている。
シルフィアは――そのオークを見て、目を見開いた。
(え……すごく、綺麗……?)
シルフィアが知っているオークは――もっと、不潔なイメージだった。
だが――目の前のオークは、肌も毛並みも――とても清潔だった。
「村長――みんな、すごく綺麗だね」
シルフィアが、驚いた様子で言った。
「それも――浴場のおかげブモ」
村長が、嬉しそうに答えた。
「浴場で、毎日体を洗えるようになったブモ」
「みんな――清潔になったブモ」
シルフィアが――浴場の方を見た。
「浴場……か」
「シルフィア殿も――入ってみるブモか?」
村長が、笑顔で提案した。
シルフィアの目が――キラリと光った。
「……入っていい?」
◆
数分後――
シルフィアは、浴場の中にいた。
温かいお湯が――体を包み込む。
「はぁ……」
シルフィアが、ゆっくりと――お湯に浸かった。
そして――
「極楽だァァァァァ――――ッ!!」
シルフィアの歓喜の叫びが――浴場に響き渡った。
「これ――すごい……!」
「こんなに気持ちいいものだったなんて……!」
シルフィアは――お湯の温かさに、心底感動していた。
(人間が作った設備……か)
シルフィアは――少し、考え込んだ。
(人族は――敵だ)
(でも――人族の知恵――これは、認めざるを得ない)
シルフィアは――お湯に浸かりながら、思った。
(魔族も――人族の知恵を、学ぶ必要があるかもしれない)
(次に会ったら――絶対に、聞いてみよう)
シルフィアの頭の中で――何かを考え始めていた。
(エリス――また会おうな。それと、その相方さん)
オレンジ色の髪が――夕日に照らされて、輝く。
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【名前:中田文哉 / 種族:ゴースト / 年齢:28歳(死亡)】
【スキル:鑑定 / ポルターガイスト(中) / レベル:2】
【ステータス:HP??? / 攻撃力??? / 防御力???】
【特性:物理無効 / 視認不可 / 壁抜け / 浮遊】
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:生者と死者の境界視認 / 霊体との意思疎通 / 霊体使役(小)/ レベル:5】
【ステータス:HP115 / 攻撃力+6 / 魔力??? / 精神力:大】
【装備:短剣(攻撃力+2)/ オークの村からの贈り物(お花模様の髪留め)】
【名前:シルフィア / 種族:ハーピー / 年齢:24歳】
【役職:魔族軍第四軍団長】
【レベル:64】
【ステータス:HP2980 / 攻撃力680 / 魔力370 / 防御力195 / 速度410】
【スキル:風魔法(上) / 物理戦闘(極) / 飛行(極) / 風読み / 疾風剣】
【特性:魔族 / 空中戦闘特化 / 高速移動】
次回新しい章に突入です!
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