第24話「ゴースト俺、村に水を取り戻す」
翌朝――
エリスが目を覚ますと、文哉はすでに部屋の中にいた。
「おはよう、フミヤ」
エリスが、眠そうに目をこすりながら挨拶する。
「おはよう、エリス」
文哉が、優しく応えた。
エリスは、文哉の様子が――いつもと少し違うことに気づいた。
「フミヤ……何か、あった?」
文哉の光が――どこか、嬉しそうに揺れているように見えた。
「ああ……実は」
文哉が、静かに語り始めた。
「昨夜――村中を、探し回っていたんだ」
エリスが、驚いたように目を見開いた。
「えっ……寝ないで?」
「僕は幽霊だから――寝なくても平気だからね」
文哉が、少し照れくさそうに言った。
「『鑑定』のスキルを使って――村のあちこちを、くまなく調べてみたんだ」
エリスが、期待に満ちた表情で文哉を見つめた。
「それで……何か、見つかったの?」
文哉は――静かに、頷いた。
「ああ……見つけた」
エリスの目が、キラキラと輝いた。
「本当に!?」
「村の北側――森に近い場所に、古い井戸があった」
文哉が、ゆっくりと説明し始めた。
「それだけじゃない。井戸の近くには――地下水路の入口もあった」
エリスが、息を呑んだ。
「地下水路……!」
「恐らく――人が住んでいた時に使っていた、水の供給システムだと思う」
文哉が、続けた。
「井戸は――土や木の枝で埋もれていて、オークたちは気づかなかったんだろう」
「地下水路も――入口が崩れかけていて、見つけにくい状態だった」
エリスが、嬉しそうに笑った。
「すごい……! フミヤ、すごいよ!」
「まだ、喜ぶのは早い」
文哉が、少し慎重に言った。
「井戸も水路も――修繕が必要だ。でも――」
文哉の声が、希望に満ちていた。
「直せば、この村に――安定した水が供給できる」
エリスが、立ち上がった。
「じゃあ、早く村長さんに伝えなきゃ!」
◆
村長オークに――文哉の発見を伝えると。
「ブモ……! ブモモモ!」
村長の目が、驚きと喜びで大きく見開かれた。
すぐに、村中のオークたちが集められた。
「ブモ! ブモモ!」
「ブモモ!」
オークたちが、興奮した様子でざわめいている。
エリスが、文哉の言葉を――オークたちに伝えていく。
「村の北側に――井戸と、地下水路があるんだって」
「ブモ!」
若いオークが、嬉しそうに声を上げた。
「でも――修繕が必要だから、みんなで協力してほしいって」
村長が、力強く頷いた。
「ブモモ! ブモ!」
オークたちが――一斉に、拳を突き上げた。
◆
村の北側――
森に近い、少し開けた場所に――文哉たちは到着した。
一見すると、何もない――ただの草むらのように見える。
だが、文哉の『鑑定』には――はっきりと見えていた。
「ここだ」
文哉が、エリスに伝えた。
エリスが、オークたちに場所を指し示す。
「ブモ……?」
オークたちが、不思議そうに草むらを見つめている。
「この下に――井戸が埋まってる」
エリスが、説明した。
若いオークたちが――すぐに、草むらを掘り始めた。
力強い腕が――土を掻き分けていく。
「ブモ!」
しばらくすると――土の中から、古い石組みが姿を現した。
「ブモモ! ブモ!」
オークたちが、興奮した様子で声を上げた。
文哉が、『鑑定』で井戸を調べる。
【古井戸:深さ約12メートル / 石組み:一部破損 / 内部:土砂と枯れ葉で埋没】
【水源:地下水脈に接続 / 水質:良好(浄化後)】
【修繕必要度:中】
(なるほど……土砂を取り除けば、使えるようになる)
文哉が、エリスに説明する。
「井戸の中に――土や枯れ葉が詰まってる」
「それを取り除けば――水が湧いてくるはずだ」
エリスが、オークたちに伝えた。
「ブモ!」
オークたちが――さっそく、井戸の中の土砂を掻き出し始めた。
数時間後――
井戸の底から――ゆっくりと、水が湧き始めた。
「ブモ……!」
オークたちが、息を呑んだ。
透明で、澄んだ水が――静かに、井戸の底に溜まっていく。
文哉が、『鑑定』で水質を確認する。
【井戸水:水質90% / 清浄度:高 / 飲用:可能】
(これなら――そのまま飲める)
「水が出た……!」
エリスが、嬉しそうに叫んだ。
「ブモモモ!」
「ブモ! ブモ!」
オークたちが――喜びの声を上げた。
村長オークが――井戸の水を、恐る恐る汲み上げた。
そして――一口、飲んでみる。
「ブモ……ブモモモ……!」
村長の目に――涙が浮かんでいた。
エリスが、文哉に訳す。
「冷たくて――すごく美味しいって……!」
他のオークたちも――次々と、水を飲み始めた。
「ブモ!」
「ブモモ!」
みんなが、笑顔で――喜びを分かち合っている。
文哉は――その光景を見て、胸が熱くなった。
(よかった……)
◆
だが――文哉の仕事は、まだ終わっていなかった。
「エリス――井戸だけじゃない」
文哉が、エリスに伝えた。
「地下水路の入口も、見つけたんだ」
エリスが、驚いた様子で文哉を見た。
「地下水路……?」
「ああ――井戸から、少し離れた場所にある」
文哉が、別の場所を指し示す。
エリスとオークたちが――文哉の導きに従って、移動した。
そこには――崩れかけた石造りの入口があった。
蔦や苔に覆われていて――一見すると、ただの岩場のように見える。
だが――
「この奥に、地下水路がある」
文哉が、エリスに伝えた。
若いオークたちが――入口を塞いでいる土砂や石を、取り除き始めた。
しばらくすると――暗い地下への階段が、姿を現した。
「ブモ……」
オークたちが、少し怖がっている。
「大丈夫――僕が先に行って、確認してくる」
文哉が、エリスに言った。
文哉は――壁をすり抜けて、地下水路の中へと入っていった。
暗闇の中――文哉の視界には、『鑑定』で照らされた水路が見えていた。
【地下水路:全長約200メートル / 石造り:堅牢 / 一部破損個所あり】
【水の流れ:地下水脈から村の中心部へ】
【修繕必要度:小~中】
(これは……すごい)
かつて、人が住んでいた時に作られた――立派な水路だった。
石を積み上げて作られた通路には――今も、地下水が流れている。
ところどころ、石が崩れている場所があるが――修繕すれば、十分に使える。
(この水路を直せば――村の中心部まで、水を引ける)
文哉は、地上に戻った。
「どうだった?」
エリスが、心配そうに尋ねた。
「大丈夫――水路は、ほぼ無傷だ」
文哉が、説明する。
「一部、石が崩れている場所があるけど――修繕すれば使える」
「この水路は――村の中心部まで、水を運んでいたんだと思う」
エリスが、目を輝かせた。
「じゃあ――村の中心に、水が来るってこと!?」
「ああ――そういうことだ」
エリスが、オークたちに伝えた。
「ブモモ!」
「ブモ! ブモ!」
オークたちが――再び、喜びの声を上げた。
◆
その日から――村を挙げての、水路修繕作業が始まった。
文哉が、『鑑定』で破損個所を特定する。
エリスが、オークたちに――どこを直せばいいか伝える。
オークたちが――力を合わせて、石を運び、積み上げていく。
若いオークが、崩れた石壁を――丁寧に修復している。
年老いたオークが、若いオークに――石の積み方を教えている。
子どものオークたちも――小さな石を運んで、手伝っている。
文哉は――その光景を見ながら、思った。
(みんなが、協力している)
(この村は――本当に、変わり始めているんだな)
◆
数日後――
ついに、水路の修繕が完了した。
村の中心部――広場の近くに、水が流れる音が響き始めた。
オークたちが作った、簡易的な水場――
そこに――透明な水が、勢いよく流れ込んできた。
「ブモモ……!」
村長オークが――感動した様子で、水を見つめていた。
そして――両手ですくった水を、口に運んだ。
「ブモ……ブモモモ……!」
村長の目から――涙が溢れた。
他のオークたちも――次々と、水を飲み始めた。
「ブモ!」
「ブモモ!」
喜びの声が――村中に響き渡った。
子どものオークが――水を浴びて、嬉しそうにはしゃいでいる。
母親オークが――優しく、子どもの体を洗ってあげている。
年老いたオークが――ゆっくりと、水を飲んでいる。
文哉は――その光景を、静かに見守っていた。
(ああ……これが、見たかった光景だ)
エリスが、文哉の方を見た。
「フミヤ……すごいよ。みんな、すごく幸せそう」
文哉が、微笑んだ。
「エリスも、よく頑張ったね」
「二人で、できたことだよ」
エリスが、嬉しそうに笑った。
◆
夕方――
村長オークが、文哉とエリスの前に――深々と頭を下げた。
「ブモモ……! ブモ……!」
村長の声は――感謝に満ちていた。
エリスが、訳す。
「ありがとうって……本当に、ありがとうって……」
他のオークたちも――次々と、頭を下げていく。
「ブモ!」
「ブモモ!」
文哉は――その姿に、胸が熱くなった。
(誰かの役に立てた)
(誰かを、幸せにできた)
それが――何よりも、嬉しかった。
◆
その夜――
エリスは、すでに眠っていた。
文哉は――窓の外を、ぼんやりと眺めていた。
(水の問題は――解決できた)
だが――文哉の頭には、もう一つ――気になることがあった。
(昨夜、水路を探していた時――)
文哉は、地下水路の奥で――もう一つ、何か大きな空間を見つけていた。
水路とは別の――人工的に作られた、広い部屋。
石造りの床、壁――そして、排水溝のようなもの。
文哉が『鑑定』で調べた時――こんな表示が出ていた。
【浴場跡:広さ約30平方メートル / 石造り:堅牢 / 排水設備:あり】
【状態:放置されているが、修復可能】
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【名前:中田文哉 / 種族:ゴースト / 年齢:28歳(死亡)】
【スキル:鑑定 / ポルターガイスト(中) / レベル:2】
【ステータス:HP??? / 攻撃力??? / 防御力???】
【特性:物理無効 / 視認不可 / 壁抜け / 浮遊】
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:生者と死者の境界視認 / 霊体との意思疎通 / 霊体使役(小)/ レベル:5】
【ステータス:HP115 / 攻撃力+6 / 魔力??? / 精神力:大】
【装備:短剣(攻撃力+2)/ オークの村からの贈り物(お守り)】
明日も18時に更新する予定です!
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