第23話「ゴースト俺、村の水問題を知る」
村の広場に、徐々に夕闇が降り始めていた。
作業を終えたオークたちが、疲れた様子で道具を片付けている。夕日がオークたちの姿を長く伸ばし、オレンジ色に染めていく。
エリスが、嬉しそうに村のオークたちと挨拶を交わしている。
皆の笑顔を見ていると――文哉の心が、少しだけ温かくなった。
その時だった。
「ブモ……ブモモ……」
村長オークが、エリスの方へ歩いてきた。
その表情は――感謝に満ちていながらも、どこか重さを含んでいた。
「村長さん?」
エリスが、不思議そうに首を傾げた。
「ブモ……ブモモモ……」
村長が、エリスに何かを話しかける。
エリスが、文哉の方を見た。
「えっと……もう遅いから、一緒に食事をしてほしいって」
文哉は、少し驚いた。
(食事……か)
村長オークが、深々と頭を下げた。
「ブモ……ブモモ!」
「村長さんたちの、精一杯のおもてなしだって」
エリスが、優しく訳した。
「そう……それじゃあ、お言葉に甘えよう」
文哉が、エリスに伝える。
エリスが、嬉しそうに頷いた。
◆
村の中央にある、大きな建物に案内された。
中には、すでに多くのオークたちが集まっていた。
若いオーク、年老いたオーク、そして子どものオーク――みんなが、何かを準備している。
「ブモモ!」
「ブモ!」
オークたちが、嬉しそうに文哉たちを迎えてくれた。
文哉とエリスは、村長の隣に座るよう促された。
そして――料理が、次々と運ばれてきた。
◆
(これは……)
文哉は、目の前に並べられた料理を見て――少し驚いた。
【鑑定】
【焼いた獣肉:鮮度90% / 塩味控えめ / 野生的で力強い味】
【煮込んだ野菜のスープ:温かく、素朴な味わい / 塩分:適正】
【木の実のペースト:自然の甘みが強い / 保存状態:良好】
(思ったよりも……ずっと、豊かな食事だ)
確かに、塩味は控えめだった。だが、素材の味が活かされている。
狩ってきた獣の肉は――焼き加減が絶妙で、肉汁が滴っている。
野菜のスープは――優しい味わいで、体の芯まで温まりそうだった。
決して豪華とは言えない。だけど――
(この村の人たちが、精一杯のおもてなしをしてくれている)
それが、伝わってきた。
エリスが――嬉しそうに、料理に手を伸ばした。
文哉は、思わずエリスを見つめた。
(エリス……大丈夫かな)
文哉は、幽霊だから――食事をする必要がない。
だけど、エリスは違う。
(エリスが、村の料理を食べても――大丈夫なのか?)
(体調に、問題は出ないだろうか……?)
文哉は、内心で少し不安になった。
エリスは、これ旅でずっと――保存食で食事をしてきた。
だが、オークの村の料理は――初めて口にするものだ。
(何かあったら――)
文哉が心配そうに見守る中――エリスは、一口、スープを飲んだ。
「……っ」
エリスの目が、少し見開かれた。
そして――
「おいしい……!」
エリスが、嬉しそうに笑った。
文哉は、ほっと胸を撫で下ろした。
(よかった……)
エリスが幸せそうに食べている姿を見て――文哉の心も、温かくなった。
(自分は食べられない寂しさは、ある)
(だけど――)
エリスが、口いっぱいに料理を頬張りながら――
「ねえ、フミヤ。これ、すごくおいしいよ」
と、嬉しそうに笑いかけてくれる。
(ああ……エリスが、幸せそうで――それだけで、嬉しい)
文哉は、静かに微笑んだ。
◆
食卓は――賑やかだった。
オークたちが、笑顔で会話を交わしている。
子どものオークが、母親オークに甘えながら――嬉しそうに肉を食べている。
年老いたオークが、若いオークに何かを教えている。
この村が――少しずつ、変わり始めている。
文哉は、その光景を見ながら――心の奥が、温かくなるのを感じていた。
(魔物にもこういう時間が――あるんだな)
◆
食事が終わり――少し落ち着いた頃。
村長オークが――ゆっくりとエリスに話しかけた。
「ブモ……ブモモモ……」
村長の声は――感謝に満ちていた。だけど、どこか重さを含んでいた。
エリスが、真剣な表情で聞いている。
内容を文哉に訳す。
「今日、本当に助かったって……これからも、教えてもらったことを、大切にしていくって」
「ブモモ……」
村長が、深々と頭を下げた。
他のオークたちも――次々と、頭を下げていく。
(みんな……本当に、喜んでくれている)
だが――
「でも……」
エリスが、少し戸惑ったような表情で――村長の言葉を訳した。
「実は……まだ、この村には――大きな問題があるって……」
文哉は、村長の方を見た。
村長の顔には――申し訳なさそうな表情が浮かんでいた。
「ブモ……ブモモモ……」
村長が、重い口調で語り始める。
「せっかく……助けてもらったのに」
エリスが、ゆっくりと訳していく。
「さらに、お願いするのは――申し訳ないって……」
村長が、苦しそうに顔を伏せた。
「でも……もし――力を貸してくれるなら……」
文哉は、静かに村長を見つめた。
(まだ、何か――問題があるのか)
エリスが、優しく村長に語りかけた。
「大丈夫だよ。私たち、力になりたいから――何でも話して」
村長が――ゆっくりと、顔を上げた。
「ブモ……ブモモ……」
村長が、語り始めた。
◆
エリスが――一言一言、丁寧に訳していく。
「村の……一番大きな問題は――『水』なんだって」
文哉は、少し驚いた。
(水……?)
エリスが、続ける。
「村から離れた川まで――毎回、水を汲みに行かなきゃいけないんだって」
村長が、辛そうに頷いた。
「ブモモ……ブモ……」
「若いオークや、戦えるオークは――水を汲みに行ける」
エリスが、真剣な表情で訳す。
「でも……子どもや、年寄りのオークは――水汲みには行かせられない」
文哉は、村長の言葉に――深刻さを感じ取った。
(そうか……水を汲みに行くのは、危険が伴うのか)
「それに……」
エリスが、続けた。
「戦えるオークが、みんなで水を汲みに行ったら――その間、村が襲われるかもしれない」
村長が、悲しそうに頷いた。
「だから――全員で汲みに行くことができない」
文哉は、状況を整理し始めた。
(なるほど……)
「水を汲みに行けるのは――ほんの数人だけ」
エリスが、村長の言葉を訳し続ける。
「だから――頻繁には、行けない」
村長が、苦しそうに語った。
「ブモモ……ブモ……」
「水が足りなくて……料理も、十分にできない時がある」
エリスが、悲しそうに言った。
「体を洗うことも――できない日が多いんだって……」
文哉は――村の深刻な状況を、ようやく理解した。
(そうか……)
(食料の保存を改善しても――水がなければ、生活は厳しいままだ)
村長が――文哉とエリスを見つめた。
「ブモ……ブモモモ……?」
エリスが、訳す。
「もし……何か、方法があれば――教えてほしいって……」
文哉は――少し考え込んだ。
(水か……)
(この村に、井戸を掘るのは――難しいかもしれない)
(でも――)
その時、文哉の頭に――ある考えが浮かんだ。
「もしかしたら、井戸や、地下水路が――あるかもしれない」
エリスの目が、少し見開かれた。
「えっ……!」
文哉が、続けた。
「人が住んでいた村なら――必ず、水を確保する手段があったはずだ」
「井戸、水路、地下設備――何かしら、残っているかもしれない」
エリスが、村長にその言葉を伝えた。
「ブモ……! ブモモ!」
村長の目が――希望に輝いた。
他のオークたちも――驚いた様子で、ざわめき始めた。
「ブモ!」
「ブモモ!」
若いオークが、興奮したように声を上げた。
文哉は、エリスに伝えた。
「明日――村の中を、探してみよう」
「もしかしたら――使われなくなった井戸や、水路が見つかるかもしれない」
エリスが、嬉しそうに頷いた。
「うん!」
村長が――深々と、頭を下げた。
「ブモモ……! ブモ……!」
エリスが、微笑んだ。
「お礼なんて、いいよ。私たちも――みんなの役に立ちたいから」
オークたちが――希望に満ちた表情で、文哉とエリスを見つめていた。
◆
その夜――
エリスは、村の宿舎で休んでいた。
文哉は――窓の外を、ぼんやりと眺めていた。
(水路か……)
(もし見つかれば、この村の生活は――劇的に変わる)
文哉は、静かに決意した。
(今のうちに何か――見つけ出してみせる)
月明かりが――静かに、村を照らしていた。
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【名前:中田文哉 / 種族:ゴースト / 年齢:28歳(死亡)】
【スキル:鑑定 / ポルターガイスト(中) / レベル:2】
【ステータス:HP??? / 攻撃力??? / 防御力???】
【特性:物理無効 / 視認不可 / 壁抜け / 浮遊】
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:生者と死者の境界視認 / 霊体との意思疎通 / 霊体使役(小)/ レベル:5】
【ステータス:HP115 / 攻撃力+6 / 魔力??? / 精神力:大】
【装備:短剣(攻撃力+2)/ オークの村からの贈り物(お守り)】
次回も明日18時投稿予定です!
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