第22話「ゴースト俺、村に恩返しする」
村長オークに案内されて、文哉とエリスは倉庫の前に立っていた。
重い木の扉を開けると――中には、食料が無造作に積み重ねられていた。獣の肉、野菜、木の実――全てが、雑然と放り込まれている。
「ブモモ……」
村長オークが、申し訳なさそうに呟いた。
「気にしないで。これから、一緒に良くしていこう」
エリスが、光を通じて優しく伝えた。
文哉は、倉庫の中をゆっくりと見回した。『鑑定』で、一つ一つの状態を確認していく。
【狩った獣の肉:鮮度70%】
【野菜:鮮度50% / 傷んだものと新鮮なものが混在】
【木の実:散乱 / 種類ごとに分けられていない】
【腐った肉:危険度20% / 肉の下に埋もれている】
(問題点は……明確だな)
その時――文哉は、倉庫の奥に小さな扉があることに気づいた。
「あれは……?」
扉を開けると――階段が、地下へと続いていた。
「地下室……?」
文哉が降りていくと――そこには、ひんやりとした空間が広がっていた。人間が使っていた貯蔵庫だ。石造りの壁、涼しい空気。
文哉が、『鑑定』で地下室を調べる。
【地下貯蔵庫:温度 約10度 / 湿度 適正 / 日光 なし / 保存環境:優良】
(これは……完璧な保存環境だ)
「ここ、使ってなかったの?」
エリスが、オークに尋ねた。
「ブモ……ブモモ……」
「えっと……暗くて怖いから、使ってなかったんだって」
文哉は、地上の倉庫と地下室の両方を見比べた。
(なるほど……整理の方針が見えてきた)
◆
地上に戻ると――文哉は、オークたちに説明を始めた。
「まず、この村の食料保管には――大きく二つの問題があるんだ」
エリスが、光を通じてオークたちに訳す。オークたちが、真剣な表情で聞いている。
「一つ目は――古いものと新しいものが、ごちゃ混ぜになってること」
文哉が、倉庫の中を指差した。
「新しい食料が手に入ったら、上に重ねちゃうでしょ? そうすると、下にある古い食料が――どんどん忘れられて、傷んでいく」
「ブモ……ブモモ……」
村長オークが、納得したように頷いた。
「二つ目は――保存場所を使い分けてないこと」
文哉が、続けた。
「地下室は涼しくて、肉の保存に最適なんだ。でも、使ってない。逆に、この地上の倉庫には――肉も野菜も木の実も、全部一緒くた」
「これじゃあ――せっかくいい保存場所があるのに、活かせてないよね」
エリスが、オークたちに優しく説明する。
「じゃあ――こうしよう」
文哉が、提案を始めた。それをエリスが説明する。
「地下室は――肉専用の保存場所にする。涼しいから、肉が長持ちする」
「地上の倉庫は――野菜と木の実の保管場所にする。こっちは温度が高いけど、野菜や木の実なら大丈夫」
「そして――それぞれの場所で、『先に入れたものから、先に使う』っていう仕組みを作る」
「ブモ! ブモモ!」
若いオークが、納得したように頷いた。
「でも……オークさんたち、どれが古いか分からなくなっちゃうかも……」
エリスが、心配そうに言った。
「それも、解決策がある」
文哉が、地面に落ちていた木の枝を拾った。そして――倉庫の壁に、簡単な絵を描き始めた。
肉の絵。その下に、縦線を三本。
野菜の絵。その下に、縦線を二本。
「この線は――日数を表してる。縦線が一本なら、一日前。三本なら、三日前」
文哉が、オークたちに説明する。エリスが、光を通じて丁寧に訳していく。
「食料を置く時に、この絵の横に――線を描いておく。そうすれば、いつ獲ってきたものか――すぐに分かる」
「ブモ! ブモモ!」
オークたちが、感心したように声を上げた。
「字が読めなくても――絵と線なら、分かるもんね」
エリスが、嬉しそうに笑った。
◆
説明を終えると――文哉とエリス、そしてオークたちは、整理を始めた。
まず、全ての食料を外に出す。肉、野菜、木の実――全てを、種類ごとに分けていく。
「肉は、こっち」
「野菜は、あっち」
「木の実は――ここ」
エリスが、オークたちと一緒に作業している。
文哉は、『鑑定』で食料の状態を確認しながら――傷んでいるものを選別していく。
【肉:鮮度30% / 劣化が確認 → 本日消費推奨】
【野菜:鮮度80% / まだ食べられる → 保管】
【肉:鮮度85% / 新鮮 → 地下室へ】
【腐った肉:腐敗が進行中 → 廃棄推奨】
「これは、もう食べない方がいい」
「こっちは、今日中に食べた方がいいね」
文哉が、エリスに伝える。
「ブモ……」
オークたちが、悲しそうに頷いた。せっかく狩ってきた獲物を、捨てなければならない。
「でも、これからは――こうならないようにできるから」
エリスが、励ますように言った。
使える食料を、それぞれの場所に運んでいく。
地下室へ――肉を運ぶオークたち。最初は暗くて怖がっていたが、文哉とエリスが一緒に降りて――丁寧に配置を教える。
「奥から――新しい肉を置いていくんだ。手前から、古い肉を取る」
文哉が、地下室の壁に――肉の絵と、日付の線を描く。
「これで――いつ置いた肉か、すぐに分かるね」
「ブモ!」
オークが、理解したように頷いた。
地上の倉庫は――きれいに区分けされた。
左側――野菜の保管場所。
右側――木の実や乾物の保管場所。
それぞれのエリアに――絵を描いた。野菜の絵、木の実の絵。
「ここも、奥から新しいものを置いて――手前から古いものを取るんだよ」
エリスが、オークたちに優しく教える。
「ブモモ!」
オークたちが、嬉しそうに作業を続けた。
数時間後――倉庫と地下室は、見違えるほど整理されていた。
◆
整理が終わると――次は、保存方法の指導だった。
村の広場に、オークたちが集まってくる。
「今度は――食料を、もっと長持ちさせる方法を――一緒にやってみよう」
エリスが、光を通じてオークたちに語りかける。
文哉が、用意した獣の肉に――ポルターガイストの能力を使い、ナイフを宙に浮かせて――薄く切り始めた。
オークたちが、不思議そうに見ている。
エリスが慌てて、「これも私の能力なの!」と誤魔化す。
「肉は薄く切って、天日で干すと――『干し肉』になる」
「これが――『干し肉』。食べる時は、火に通すんだよ」
エリスが、自分たちの保存食の実物を見せる。
文哉が、切った肉を――木の枝に吊るしていく。
「太陽の光で、水分が抜けていく。そうすると――腐りにくくなるんだよ」
「ブモ……」
オークたちが、興味深そうに見つめている。
「干し肉は――何日も、何十日も保存できる。冬の間の、大事な食料になるよ」
エリスが、嬉しそうに訳した。
「やり方は難しくないから――一緒にやってみよう」
文哉が、オークたちに肉を渡す。
オークたちが――慣れない手つきで、肉を切り始めた。
「そうそう、いい感じ」
「もう少し薄く切ると――もっと早く乾くよ」
文哉が、優しくアドバイスする。命令するのではなく――一緒に学んでいく。
「ブモ!」
若いオークが、うまく切れて――嬉しそうに声を上げた。
「ブモ! ブモモ!」
母親オークが、目を輝かせている。
説明が終わると――オークたちは、熱心に新しい仕組みを復習していた。何度も確認しながら、自分たちのものにしていく。
◆
「ブモ、ブモモ!」
一人のオークが、文哉とエリスに駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
エリスが、尋ねた。
「ブモモ……ブモ……!」
「えっと……ありがとうって。本当に、ありがとうって……」
エリスが、微笑む。
「どういたしまして……私たちこそ、泊めてくれて――ありがとう」
村長オークが――文哉とエリスの前に、深々と頭を下げた。
「ブモ……ブモモ……!」
その姿に――他のオークたちも、次々と頭を下げていく。
「ブモ!」
「ブモモ!」
感謝の声が、村中に響いた。
文哉は――その光景を見て、胸が熱くなった。
(誰かの役に立てた)
(サラリーマン時代――いつも感じていた、あの満足感)
(ああ……僕は、こういうことがしたかったんだ)
エリスが、文哉を見上げた。その目は――誇らしげに輝いていた。
「フミヤ、すごいよ。みんな、すごく喜んでる」
「エリスも、よく頑張ったね」
文哉が、微笑んだ。
「二人で、できたことだよ」
エリスが、嬉しそうに笑った。
文哉とエリスは――この村で、確かに――何かを成し遂げたのだった。
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【名前:中田文哉 / 種族:ゴースト / 年齢:28歳(死亡)】
【スキル:鑑定 / ポルターガイスト(中) / レベル:2】
【ステータス:HP??? / 攻撃力??? / 防御力???】
【特性:物理無効 / 視認不可 / 壁抜け / 浮遊】
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:生者と死者の境界視認 / 霊体との意思疎通 / 霊体使役(小)/ レベル:5】
【ステータス:HP115 / 攻撃力+6 / 魔力??? / 精神力:大】
【装備:短剣(攻撃力+2)/ オークの村からの贈り物(お守り)】
無事に恩返しができましたが、想像以上にオークたちが感謝しています。
まだ、困りごとがありそうな顔をしています……
次回も明日の18時に投稿予定です!
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