第21話「ゴースト俺、村の困りごとと向き合う」
小屋を出たエリスと文哉は、村の中を歩き始めた。
オークたちは、朝の作業を始めている。
狩りに出る者、畑を耕す者、子供の世話をする者――それぞれが、自分の役割を果たしていた。
「まずは、困りごとを聞かないとね」
エリスが、文哉を振り返った。
淡い光が、エリスの周りに浮かび上がる。
そして――近くにいたオークへと、光が伸びていく。
「ブモ?」
オークが、不思議そうにエリスを見た。
「おはよう。昨日は、ありがとう」
エリスが、光を通じて語りかける。
「ブモ、ブモモ」
オークが、何かを答えた。エリスが、その声を聞き取る。
「あのね……聞きたいことがあるの。この村で、困ってることってある?」
オークが、少し考えるように首を傾げた。そして――ゆっくりと話し始めた。
「ブモモ……ブモ……」
エリスが、じっと耳を傾ける。
やがて――エリスの表情が、曇った。
「フミヤ……この方、言ってる。食べ物が……すぐ悪くなっちゃうって」
「食べ物が?」
「うん。狩ってきた獣の肉も、採ってきた野菜も――すぐに傷んじゃうんだって」
文哉は、昨夜見た倉庫の光景を思い出した。
雑然と積まれた食料。保存処理がされていない肉や野菜。
(やっぱり……)
「それで、どうしてるの?」
エリスが、オークに尋ねた。
「ブモ、ブモモ……」
「えっと……傷んでても、食べちゃうんだって……」
エリスの声が、小さくなる。
「それで、お腹壊しちゃうことも……」
文哉の胸に、痛みが走った。
(食料が傷んでいることに気づいていても……)
(他に食べるものがないから、仕方なく食べている……)
「ありがとう。教えてくれて」
エリスが、オークに感謝を伝えた。
二人は、次のオークへと向かった。
◆
村の中を歩きながら、エリスは次々とオークたちに話しかけていった。
ある母親オークは――
「ブモモ、ブモ……」
「子供が、お腹痛いって泣くことが多いんだって……」
エリスが、悲しそうに訳した。
別の若いオークは――
「ブモ、ブモモモ……」
「せっかく狩ってきた獲物も、すぐダメになっちゃうから……もったいないって」
年老いたオークは――
「ブモモ……ブモ……」
「昔、人間がいた頃は、もっと長く食べ物が保存できてたって聞いたことがあるんだって……でも、やり方が分からないって」
文哉は、エリスが訳してくれる言葉を――一つ一つ、心に刻んでいった。
(みんな……困ってるんだ)
(食料の保存方法が分からなくて……)
エリスと文哉は、村の広場に戻ってきた。
エリスが、地面に座り込んで――深いため息をついた。
「みんな……大変なんだね……」
「ああ……」
文哉も、胸が痛んだ。オークたちは、決して怠けているわけではない。
一生懸命働いて、食料を集めている。けれど――保存の方法を知らないから、すぐに傷んでしまう。
「フミヤ……どうすれば、助けられるかな……」
エリスが、文哉を見上げた。
文哉は――昨夜見た倉庫のことを思い出した。そして――サラリーマン時代の経験。
「エリス」
文哉が、静かに言った。
「僕に、考えがある」
「本当?」
「ああ。倉庫の食料の保管方法と整頓方法を伝えてみよう」
文哉が、エリスに説明を始めた。
「まず、食料を種類ごとに分ける。肉、野菜、木の実――それぞれ別の場所に保管する」
「うん……」
「そして、新しいものと古いものを――ちゃんと分けて置く。古いものから使うようにすれば、無駄が減る」
「なるほど……」
エリスが、真剣な表情で聞いている。
「それから――傷み始めた食料は、すぐに分かるようにする。そうすれば、お腹を壊すこともなくなる」
「それ、いいね!」
エリスが、目を輝かせた。
「でも……保存の仕方も、教えないと……」
「ああ。それも含めて、提案しよう」
文哉が、頷いた。
「干し肉の作り方、野菜の保存方法――人間が使っていた道具の使い方も、伝えてみよう」
エリスが、嬉しそうに笑った。
「フミヤ、すごい! それなら、みんな助かるよ!」
「まだ、提案の段階だけどね」
文哉が、少し照れくさそうに言った。
「でも――この村で一番偉いオークって誰だろう……」
「一番偉い……?」
「あ、昨日――木彫りの人形をくれた、あのオークさんだよ」
エリスが、はっきりと答える。
「光の色でわかるの」
文哉は、さすがエリスと感心する。
「よし、じゃあ伝えてみよう」
「うん!」
エリスが、立ち上がった。
二人は――村の中央にある、一際大きな家へと向かった。
そこには――昨日、人形をくれたオークが住んでいる。
「ブモ?」
扉の前で、そのオークが――薪を割っている姿があった。エリスが、光を通じて話しかける。
「あの……昨日は、ありがとうございました」
「ブモ」
オークが、優しく頷いた。
「昨日、泊めてくれたお礼に――何かしたくて……」
エリスが、緊張した様子で続けた。
「この村の、食料の保存について――私たちが、手伝いたいんです」
オークが、驚いたように目を見開いた。
「ブモ……?」
「倉庫の整理の仕方とか、食べ物を長持ちさせる方法とか――お伝えしたいです」
エリスの声が、真剣さを帯びていた。
オークが、じっとエリスを見つめた。
そして――ゆっくりと、何かを語り始めた。
「ブモモ……ブモ……」
エリスが、その言葉を聞き取る。そして――文哉の方を振り返った。
「フミヤ……『本当に、助けてくれるのか』って言ってる。」
「ああ。僕たちにできることを――全部やる!」
文哉が、力強く言った。
エリスが、その言葉をオークに伝える。
オークの目が――わずかに、潤んだ。そして――大きく頷いた。
「ブモ! ブモモ!」
「ありがとうって……! 助かるって……!」
エリスが、嬉しそうに笑った。
「よし」
文哉が、決意を新たにした。
「じゃあ、始めよう。まずは――倉庫から」
二人とオークは――村の倉庫へと向かった。
見えない存在の――本当の恩返しが、今、始まろうとしていた。
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【オークたちの困りごと】
- 食料がすぐに傷んでしまう
- 傷んだ食料を食べてお腹を壊す
- 保存方法が分からない
- 人間の道具の使い方が分からない
【文哉の提案】
- 倉庫の食料を種類ごとに分類
- 古いものから使う仕組み(先入れ先出し)
- 傷んだ食料の判別方法
- 保存食の作り方の指導
次回からはオークの恩返しでお悩み解決編となります!
続きは明日18時に更新予定です!
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