第19話「ゴースト俺、オークの村に潜入」
翌日。
二人は、再び旅を続けた。
森の中を進むこと数時間――エリスの足取りが、徐々に重くなっていった。
「はあ……はあ……」
エリスの息が、荒くなっている。
「エリス、大丈夫?」
文哉が、心配そうに尋ねた。
「う、うん……大丈夫……」
エリスが、強がるように言った。けれど――その顔色は、明らかに悪かった。
(慣れない森歩きで……疲労が溜まってるんだ)
文哉は、エリスを休ませようと――適当な場所を探した。
その時――前方の木々の隙間から、何かが見えた。
「あれは……村?」
文哉が、目を凝らした。
確かに――木造の建物が、いくつか見える。煙突からは、煙が上がっていた。
「村だ! エリス、村があるよ!」
「本当……?」
エリスが、顔を上げた。
「ああ。あそこで休めるかもしれない」
文哉が、嬉しそうに言った。
エリスの表情が、パッと明るくなった。
「良かった……休める……」
二人は、村へと向かった。けれど――近づくにつれて、文哉は違和感を覚えた。
(人の気配が……ない?)
文哉が、『鑑定』で村を調べる。その瞬間――文哉の顔が、青ざめた。
【種族:オーク / レベル:10~12】
【数:約20体 / 村に定住】
「待って、エリス! あの村は――」
文哉が、叫んだ。
けれど、時既に遅し。
村の入り口から――巨大な影が現れた。
それは、オークだった。身長二メートルを超える、筋骨隆々とした魔物。
豚のような顔に、鋭い牙を剥き出している。
「ブモォォォ!!」
オークが、咆哮を上げた。
その声に呼応して――次々と、他のオークたちが姿を現した。
「う、うそ……!」
エリスが、恐怖で震えた。
(この村……魔物に占拠されてる……!)
文哉の脳裏に、記憶が蘇った。
確か――葛城たちが討伐に行って、失敗した村があったはずだ。※汚名返上で依頼させられた村
(まさか、ここが……!)
「エリス、逃げるよ!」
文哉が、叫んだ。
けれど――エリスは、動かなかった。オークたちを――じっと見つめている。
「エリス!? 何してるの! 早く逃げないと――」
「待って、フミヤ」
エリスが、文哉を制した。
「この子たち……光の色が、違う」
「光の色?」
「うん。他の魔物たちとは、違う色をしてる」
エリスが、真剣な表情で言った。
「穏やかな色……怒ってない。怖がってるだけ」
「怖がってる……?」
文哉は、改めてオークたちを観察した。確かに――攻撃してこない。ただ、警戒するように――こちらを見ているだけだった。
「話し合えば……分かってくれる気がする」
エリスが、小さく言った。
「待って、エリス! 危険だよ!」
文哉が、慌てて止めようとした。
けれど――エリスの瞳には、強い意志が宿っていた。
「大丈夫。私……信じてる」
「エリス……」
「お願い、フミヤ。信じて」
文哉は――エリスの目を見て、観念した。
「……分かった。でも、何かあったらすぐに逃げるんだよ」
「うん」
エリスが、ゆっくりとオークたちに近づいていった。
◆
オークたちは、エリスを――警戒した目で見つめている。
「ブモ……?」
一体のオークが、エリスに向かって唸り声を上げた。けれど――攻撃はしてこなかった。
エリスが、深呼吸をして――目を閉じた。
「光さんたち……この子たちと、お話しさせて……」
エリスが、小さく呟いた。その瞬間――エリスの周囲に、淡い光が浮かび上がった。
光が――オークたちへと伸びていく。そして――オークたちの体を、包み込んだ。
「!?」
その光は、文哉にも見えた。
(これは……新しい能力……!?)
エリスが――光を通じて、オークたちと繋がっていく。やがて――エリスが、目を開けた。
「……聞こえる。この子たちの、声が……」
エリスが、静かに言った。
「ブモ……ブモモ……」
オークが、何かを語りかけている。エリスは、じっとその声を聞いていた。
数分後――エリスが、文哉の方を振り返った。
「フミヤ……この子たち、話してくれた」
「何て……?」
「この村は……元々、この子たちの村だったんだって」
エリスが、静かに語り始めた。
「魔王から遠征の命令が来て……この子たちは、村を離れたの」
「そして、戻ってきたら――人間に村を奪われてたって」
文哉の胸に、衝撃が走った。
「人間に……奪われた?」
「うん。だから、追い返しただけなんだって」
「誰も……殺してないって、言ってる」
エリスの声が、悲しげに揺れた。
「でも……勇者が襲ってきたんだって。何もしてないのに」
「この子たち……すごく怒ってる。悲しんでる」
文哉は――言葉を失った。
(葛城たちは……一方的に、オークを悪者だと思い込んで……)
(何も知らずに、攻撃したのか……)
「あの勇者たちは……もう、追放されたよ」
エリスが、オークたちに向かって言った。
「もう、襲ってくることはない。約束する」
オークたちが――驚いたように、顔を見合わせた。
「ブモ……?」
「本当だよ。私の知り合いも……あの勇者たちに、ひどいことをされたから」
エリスの声が、震えた。
「だから……分かるの。理不尽に傷つけられる気持ち」
オークたちの目が――わずかに、和らいだ。
「ブモモ……」
「今日はもう日が暮れるから泊まっていけって……言ってくれてる」
エリスが、微笑んだ。
「ありがとう……」
オークたちが――ゆっくりと、道を開けた。村の中へ――招き入れるように。
文哉は――その光景を見て、胸が熱くなった。
(魔物だって……心がある)
(話せば……分かり合える)
エリスが、文哉を振り返った。
「行こう、フミヤ」
「……ああ」
二人は――オークたちの村へと、足を踏み入れた。
新しい出会いが――ここから、始まろうとしていた。
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【エリスの新能力】
光を通じた意思疎通:霊体だけでなく、生きている魔物とも対話が可能
※ただし、相手が心を開いている場合のみ有効
【オークの村の真実】
- 元々オークの村だった
- 魔王の遠征命令で村を離れた
- 戻ったら人間に占拠されていた
- 追い返しただけで、誰も殺していない
- 勇者に一方的に襲われたことに憤慨
【エリスの状態】
疲労:大(休息が必要)
精神状態:新しい能力に驚きつつも、前向き
心優しき魔物がいてびっくり!魔物とはさせるエリスにもびっくり!
本当に魔物の住む村に滞在して平気なのか?次回もお楽しみに!
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