第18話「ゴースト俺、はじめての野営」
グレイウルフを倒してから、文哉とエリスは慎重に森の中を進んでいた。
文哉が、常に『鑑定』で周囲を探りながら――魔物の気配を察知する度に、エリスを物陰に隠した。
「……また来る。こっちに隠れて」
文哉が、一応小声で言った。エリスが、大きな木の陰に身を潜める。
数秒後――茂みの向こうから、複数のゴブリンが通り過ぎていった。文哉は、息を殺してその様子を見守る。
【種族:ゴブリン / レベル:4~5】
【数:6体 / 群れで行動中】
(レベル5が6体……今のエリスじゃ、勝てない)
文哉は、戦闘を避ける判断をした。ゴブリンたちが完全に去るのを待つ。
「……行ったよ」
文哉が、エリスに合図を送った。エリスが、ホッと息をついた。
「怖かった……」
「大丈夫。ちゃんと守るから」
文哉が、優しく言った。
二人は、再び歩き始めた。けれど――森の中には、至る所に魔物の気配があった。
「また……右から来る」
文哉が、警告を発する。
今度は、別の方法を試すことにした。文哉が、ポルターガイストの力で――遠く離れた場所の石を持ち上げた。
ガラガラガラッ!
石が転がる音が、森の反対側から響いた。
「!?」
魔物たちが、その音の方へ向かって走っていく。文哉とエリスは、その隙に――静かに別のルートを進んだ。
「すごい……フミヤ、そんなこともできるんだ……」
エリスが、感心したように言った。
「音で誘導するのは、基本だからね」
文哉が、少し得意げに答えた。
こうして――二人は、戦闘を避けながら、着実に北東へと進んでいった。
◆
夕暮れ時。文哉とエリスは、森の中の開けた場所で野宿の準備をしていた。
エリスが、地面に落ちている枝を集めて――焚き火の準備をする。文哉は、周囲を警戒しながら――エリスを見守っていた。
「これで……いいかな」
エリスが、枝を組み上げた。
「ああ。あとは火をつけるだけだね」
文哉が、頷いた。
エリスが、持っていた火打ち石で――何度も火花を散らす。やがて――小さな炎が、枝に燃え移った。
パチパチと、焚き火が燃え上がる。温かい光が、二人を包んだ。
「やった……」
エリスが、嬉しそうに笑った。
「よくできたね」
文哉が、微笑んだ。
エリスは、荷物から保存食を取り出した。固いパンと、干し肉。そして――水筒の水。質素な夕食だったが、エリスにとっては――初めて自分で用意した食事だった。
「いただきます……」
エリスが、小さく手を合わせて――パンを齧った。
焚き火の光に照らされて――エリスの顔が、優しく浮かび上がる。文哉は、その姿を――静かに見つめていた。
(何回も思っちゃうけど……)
(僕も……エリスと一緒に食べられたらな)
ゴーストになってから、食事をすることができなくなった。味も、香りも――感じることができない。
けれど――エリスが美味しそうに食べる姿を見ていると、どこか満たされた気持ちになった。
「フミヤも……食べたいよね」
エリスが、ふと言った。
「え?声に出てた⁉」
「ゴーストだから、食べられないんだよね……ごめんね、私だけ……」
エリスの声が、申し訳なさそうに小さくなる。
「いいんだよ、エリス」
文哉が、優しく言った。
「君が元気でいてくれれば、それで十分だから」
エリスが、文哉を見上げた。その目には――涙が浮かんでいた。
「フミヤ……ありがとう……」
「こちらこそ。君がいてくれて、ありがとう」
文哉が、微笑んだ。
二人は、しばらく――焚き火を囲んで、静かな時間を過ごした。
「そろそろ寝ようか、エリス。明日も早いから」
「うん……」
エリスが、頷いた。
エリスは、持っていた毛布にくるまって――地面に横になった。
「おやすみ、フミヤ……」
「おやすみ、エリス」
やがて――エリスの寝息が、聞こえてきた。文哉は、焚き火の番をしながら――周囲を警戒し続けた。
(寝なくてよいゴーストで……良かったな)
初めての野営。
文哉は、一晩中――必死にエリスを守り続けた。
はじめての野営大変そう……
次回は物語が展開しますのでお楽しみに!本日13時にも更新します!
よろしければブックマークの登録/評価よろしくお願いします^^




