第17話「ゴースト俺、はじめての共闘」
旅立ちから数時間。エリスと文哉は、草原の中を進んでいた。
朝の清々しい空気が、二人を包む。エリスは初めての冒険に緊張しながらも、どこか楽しそうに歩いていた。
「ねえ、フミヤ。こんなに遠くまで来たの、初めて」
エリスが、周囲を見回しながら言った。
「そうなんだ」
「うん。いつも、城下町の中だけだったから」
エリスの声には、わずかな興奮が混じっていた。
文哉は、エリスの横を浮遊しながら――周囲を警戒していた。街を出てから、まだ魔物には遭遇していない。けれど、油断はできなかった。
(この辺りは、比較的安全な地域のはずだけど……)
文哉が『鑑定』で周囲を探る。今のところ、魔物の気配はない。
「少し休憩しようか、エリス」
「う、うん……」
エリスが、大きな木の下に腰を下ろした。水筒を取り出し、水を飲む。
「疲れてない?」
「大丈夫。まだ全然歩ける」
エリスが、笑顔で答えた。けれど、その額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
(やっぱり、慣れない旅で疲れてるんだな)
文哉は、エリスを心配そうに見つめた。けれど、エリスは弱音を吐こうとしない。
「フミヤは、疲れないの?」
「ああ。ゴーストだからね。疲労も、空腹も感じない」
「いいなあ……私、もうお腹空いちゃった」
エリスが、苦笑いを浮かべた。
文哉が、少し考える。
「じゃあ、保存食を少し食べようか。まだ先は長いから、体力を温存しないと」
「うん……」
エリスが、荷物から保存食を取り出した。固いパンと、干し肉。質素だが、これが今の二人の糧だった。
エリスが、パンを齧る。その姿を見て、文哉は――ふと、思った。
(僕も、食事ができたらな……)
(エリスと一緒に、同じものを食べられたら……)
けれど、その願いは――今の文哉には、叶わない。文哉は、その思いを胸に仕舞った。
◆
休憩を終えて、二人は再び歩き始めた。
太陽が、少しずつ高くなっていく。草原から、徐々に森へと景色が変わっていった。
「このまま森を抜ければ、山道に入る」
文哉が、地図を確認しながら言った。
「セレスティア村は、その山の向こうだ」
「まだまだ、遠いね……」
エリスが、少し不安そうに呟いた。
その時――文哉の『鑑定』が、何かを感知した。
(……来る!)
「エリス、止まって!」
文哉が、鋭い声で叫んだ。
エリスが、ハッとして立ち止まる。次の瞬間――前方の茂みから、何かが飛び出してきた。
それは――大きな狼だった。いや、普通の狼ではない。体毛が灰色で、牙が異様に長い。
文哉が、即座に『鑑定』を発動させた。
【種族:グレイウルフ / レベル:6】
【HP:85 / 攻撃力:18 / 防御力:10】
【特性:群れで行動 / 嗅覚鋭敏】
「グレイウルフ、レベル6! HPは85!」
文哉が、エリスに情報を伝えた。
エリスの顔が、恐怖で引きつる。
「ど、どうしよう……!」
「落ち着いて。僕がいる」
文哉が、冷静に言った。
グレイウルフが、唸り声を上げながら――エリスに向かって突進してきた。
「エリス、短剣を構えて!」
「う、うん……!」
エリスが、震える手で短剣を抜いた。
グレイウルフが、エリスに飛びかかる――その瞬間。文哉が、ポルターガイストの力を使った。
(動け――!)
地面に落ちていた木の枝が――宙に浮いた。そして――グレイウルフの目の前に飛んできた。
ガッ!
グレイウルフが、枝に気を取られて――攻撃の軌道がずれた。エリスの横を、かすめて飛んでいく。
「今だ、エリス! 斬れ!」
文哉が叫んだ。
エリスが、短剣を振るった。けれど、恐怖で手が震えている。刃は、グレイウルフの毛皮を浅く切り裂いただけだった。
【グレイウルフ HP:85 → 78】
「くそ……浅い……!」
文哉が、舌打ちをした。
グレイウルフが、体勢を立て直して――再びエリスを狙う。文哉は、必死に周囲の物を動かした。石、枝、土――あらゆるものを、グレイウルフに投げつける。
けれど、グレイウルフは怯まない。むしろ、苛立ったように――さらに攻撃的になっていった。
「エリス、下がって!」
文哉が叫んだ。
エリスが、後ろに跳ぶ。グレイウルフの爪が、エリスの服を掠めた。
「きゃっ……!」
エリスが、地面に倒れ込んだ。
「エリス!」
文哉の声が、焦りに染まる。
(駄目だ……このままじゃ、エリスが……!)
グレイウルフが、倒れたエリスに――最後の一撃を加えようとした。その時――
「光さんたち……お願い……!」
エリスが、必死に叫んだ。エリスの『霊体使役』が、発動した。周囲に漂う霊体たちが――エリスの呼びかけに応えた。
地面の石が――一斉に、宙に浮いた。そして――グレイウルフに向かって、飛んでいった。
バシッ、バシッ、バシッ!
複数の石が、グレイウルフに当たった。グレイウルフが、痛みに悲鳴を上げる。
【グレイウルフ HP:78 → 62】
「やった……!」
エリスが、目を輝かせた。
「いいぞ、エリス!」
文哉が、励ますように言った。
文哉の力が発動する。今度は、鋭い枝が――グレイウルフの足を狙った。
枝が、グレイウルフの後ろ足に突き刺さった。グレイウルフが、バランスを崩して――地面に倒れる。
【グレイウルフ HP:62 → 48】
「今だ! 止めを!」
文哉が叫んだ。
エリスが、立ち上がって――短剣を握りしめた。そして――倒れたグレイウルフに向かって、全力で突き刺した。
ザシュッ!
短剣が、グレイウルフの急所を貫いた。グレイウルフが、最後の悲鳴を上げて――動かなくなった。
【グレイウルフ HP:48 → 0】
【グレイウルフ 討伐完了】
静寂が、戻ってきた。エリスは、荒い息をしながら――短剣を握ったまま、立ち尽くしていた。
「……やった……倒した……」
エリスの声が、震えていた。
「よくやった、エリス」
文哉が、優しく言った。
「君の力で、勝てたんだ」
エリスが、文哉を見上げた。その目には――涙が浮かんでいた。けれど、それは悲しみの涙ではなく――達成感と、安堵の涙だった。
「フミヤ……ありがとう……」
「礼を言うのは、僕の方だよ」
文哉が、微笑んだ。
「君がいなければ、僕も何もできなかった」
二人は――静かに、微笑み合った。初めての共闘。初めての勝利。
それは――二人の絆を、さらに深めるものとなった。
旅は、まだ始まったばかりだった。
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【戦闘結果】
討伐:グレイウルフ×1(レベル6)
エリスの成長:戦闘経験を得た / 霊体使役の実戦活用に成功
【名前:エリス・ラ・ヴァランティエール / 種族:人族 / 年齢:16歳】
【特殊能力:生者と死者の境界視認 / 霊体との意思疎通/ レベル:3】
【ステータス:HP105/ 攻撃力+4 / 魔力??? / 精神力:大】 【装備:短剣(攻撃力+2)】
今回は初戦闘シーンでした。
生前の文哉よりもエリスのほうがステータスが高いことは、そっとしておきましょう。
次回は明日更新予定です!
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