第14話「ゴースト俺、クズどもに復讐を始める」③
翌日。
城の正門前に、馬車が用意されていた。
三人の勇者は――兵士たちに囲まれながら、馬車へと連行されていた。かつて「勇者」として崇められた三人は――今や、ただの追放者だった。
城門の前には――多くの国民が集まっていた。けれど、彼らの目は――冷たかった。
「あんたたちのせいで、税金が上がったのよ!」
一人の女性が、叫んだ。
「勇者だって? 笑わせるな!」
「俺たちの金を無駄遣いしやがって!」
「魔物も倒せないなら、とっとと出て行け!」
国民たちの罵声が、三人に浴びせられる。
葛城は――唇を噛みしめ、何も言わなかった。
森川は――顔を伏せ、震えていた。
梨花は――泣きながら、馬車に乗り込んだ。
文哉は――その様子を、遠くから見ていた。
(これで……終わりだ)
文哉の心に、達成感が――満ちていた。復讐は、成功した。けれど――同時に、何かが――欠けていた。
(……これで、良かったのか?)
文哉の胸に、わずかな疑問が浮かんだ。けれど、すぐに――その疑問を、打ち消す。
(いや……まだだ。まだ、足りない)
文哉の目に――再び、黒い光が宿った。
(もっと……もっと苦しませたい)
文哉の心が――復讐の炎に、蝕まれ始めていた。そして――文哉は、馬車に近づこうとした。馬車の中で――三人を、さらに追い詰めようと。
(お、俺を殺したんだ!もっと……もっと……!)
文哉の「光」が――どんどん、暗くなっていく。赤と黒が、混ざり合い――やがて、真っ黒に染まっていく。
その時――文哉の背後から――声が聞こえた。
「フミヤ……!」
文哉が、振り返る。そこには――エリスがいた。
息を切らして、涙を浮かべながら――文哉を見つめていた。
「エリス……?」
文哉の声が、震えた。エリスが、文哉に駆け寄ってきた。
「お願い……もう、やめて……!」
エリスが、涙を流しながら言った。
「フミヤの光が……すごく暗くなってるの……! このままじゃ……フミヤ、消えちゃうよ……!!」
エリスの声が、感情的に震えていた。
「消える……?」
文哉の声が、わずかに揺れた。
「うん……! すごく暗い光は、いつか消えちゃうの……! お願い……これ以上、やらないで……!」
エリスが、文哉の手を――掴もうとした。
けれど、手は――通り抜けてしまう。それでも、エリスは――必死に、文哉に訴え続けた。
「フミヤ……私、フミヤがいなくなるの……嫌なの……! フミヤは……私の、たった一人の――お友達なの……!」
エリスの涙が――地面に落ちた。
「だから……お願い……戻ってきて……!」
エリスの言葉が――文哉の心に、響いた。文哉の「光」が――わずかに、明るくなった。
「エリス……」
文哉の声が――優しくなる。けれど――すぐに、また暗くなった。
「で、でも……俺は……あいつらを……!」
復讐の炎が――再び、燃え上がろうとした。その時――エリスが、叫んだ。
「フミヤ!! 私は、フミヤの味方なの!!」
エリスの発言が――空気を震わせた。
「だから……お願い……戻ってきて……!」
エリスの涙が――止まらなかった。
その姿を見て――文哉の心が――壊れかけていた何かが――元に戻り始めた。
文哉の「光」が――ゆっくりと、明るくなっていく。赤と黒が――少しずつ、薄れていく。
「エリス……」
文哉の声が――震えた。
「ぼ、僕は……何を、していたんだ……」
文哉が、自分の手を見つめた。復讐に囚われて――自分を見失っていた。エリスとの約束も――忘れていた。
「ごめん……エリス……僕は……君を、悲しませるようなことを……」
「いいの……! フミヤが、戻ってきてくれたから……!」
エリスが、笑顔を浮かべた。涙を流しながらも――嬉しそうに、笑っていた。
「もう……やめよ……?」
「……うん」
文哉が、頷いた。
「もう、やめる。あいつらのことは……もう、どうでもいい」
文哉が、馬車から――視線を外した。もう、追いかけない。もう、復讐しない。
それよりも――エリスと、一緒にいたい。それが――ゴースト文哉の、願いだった。
◆
馬車が――ゆっくりと、動き出した。
三人の勇者を乗せた馬車が――城門を出て、遠ざかっていく。文哉とエリスは――その馬車を、静かに見送っていた。
国民たちの罵声が、まだ聞こえている。けれど、文哉は――もう、何も感じなかった。復讐は、終わった。
「ねえ、フミヤ」
エリスが、ふと言った。
「光、また綺麗になったよ」
「……本当?」
「うん。透き通ってて、優しい色」
エリスが、微笑んだ。
「これが、フミヤの本当の色だよ」
文哉が、小さく笑った。
「そっか……」
二人は、しばらく――静かに、馬車が消えていくのを見ていた。やがて、馬車は――視界から、完全に消えた。
「……行こうか、エリス」
「うん」
文哉とエリスは――いつもの路地裏に、戻っていた。
エリスが、木箱の上に座り――文哉が、その隣に浮かんでいる。月明かりが、二人を照らしていた。
「ねえ、フミヤ」
エリスが、ふと言った。
「さっき、怖かった」
「……ごめん」
文哉が、小さく謝った。
「僕は……復讐に、囚われていた。君のことも、忘れかけていた」
エリスが、文哉を見上げた。
「でも……戻ってきてくれたから、いいの」
エリスが、微笑んだ。
「フミヤは、優しい色してる。本当は、そんなに怖い人じゃないって、分かってた」
文哉の胸が、温かくなった。
「ありがとう……エリス。君が……いてくれて、本当に良かった」
エリスが、嬉しそうに笑った。
二人は、しばらく――静かに、夜空を見上げていた。星が、綺麗だった。
「ねえ、フミヤ」
エリスが、尋ねた。
「これから、どうするの?」
「……そうだね」
文哉が、少し考えた。
「もう、復讐は終わった。これからは――君と一緒に、いようと思う」
エリスが、目を輝かせた。
「本当?」
「エリスが嫌じゃなかったら」
文哉が、優しく笑った。
「嫌じゃない。ずっと、一緒……」
エリスが、嬉しそうに――木箱に座りながら足をパタパタさせている。
「ああ、君と一緒なら――きっと、楽しい日々が送れる気がする」
文哉が、頷いた。そして――二人は、また――静かな時間を、共有した。
復讐は、終わった。だが、人生はまだ、続いていく。エリスと一緒に。
これから、どんな未来が待っているのか文哉には、分からなかった。けれど――もう、孤独ではなかった。
エリスという、存在がそばにいてくれるから。それだけで救われていた。
月が、二人を――優しく照らしていた。
文哉とエリスの物語は――これから、新しい章へと進んでいく。復讐ではない――本当の、幸せを探す旅へ。
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【スキル変化】
文哉:ポルターガイスト(中)
- 夜間に物理干渉可能
- 中型の物体を動かせる
- ペンなどの筆記具を操作可能
- 制御の精度が向上
文哉:精神状態
- 復讐の炎:消失
- 光の色:透明(優しい色)に回復
エリスとの関係性:深化
- エリスとの、絆が強まる
- 文哉にとって、エリスは「共に生きる存在」へ
第1章 裏切りの果ての亡霊はこれで完結です。
次の章では、エリスと共に過ごす章になります!
本日は地獄の4話投稿でした!
次回もお楽しみに!
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