第13話「ゴースト俺、クズどもに復讐を始める」②
その夜。
梨花の部屋に――再び、文哉が現れた。
梨花は、ベッドの上で――泣いていた。
「どうして……どうして、こんなことに……」
涙が、頬を伝う。文哉が、静かに――机に向かう。そして――ペンで、羊皮紙に文字を書く。
『梨花……これは、罰だ』
梨花が、ビクリと体を震わせた。
「だ、誰……!?」
梨花が、机を見る。そこには――新しい文字が、書かれていた。文哉が、続ける。
『お前が、人を見下した――その罰だ』
梨花の目が、見開かれた。そして――梨花が、突然――叫んだ。
「中田さん! 中田さんなのね!? 中田さんが……やってるのね! 私たちを呪ってるのね!!」
梨花の声が、部屋中に響く。
半狂乱になって叫ぶ。
文哉は――その様子を見て、思わず――
(……ファイナルアンサー?)
なぜか、頭の中でそんな声が響いた。
間を置いて――
(……正解ッ!)
見えない拍手と、見えない効果音まで付いた気がした。
ピンポンピンポンピンポーン。
正解のチャイムが、脳内でやかましく鳴り響く。
(おめでとうございます。景品は――恐怖体験でーす)
その瞬間――
部屋中の物が、一斉に動き始めた。
家具がガターン!
ランプがパリーン!
鏡が、景気よくバッリーンと砕け散る。
「きゃああああああ!!」
梨花が、部屋の外へ飛び出した。廊下を、全力で走る。
「中田さんよ! 中田さんの仕業よ! あいつが、私たちを呪ってるのよ!!」
梨花が、叫びながら走っていく。けれど――誰も、梨花の言葉を信じなかった。
「白石様……錯乱されているのか……?」
「あの日記のショックで、おかしくなられたのかもしれない……」
使用人たちが、哀れむような目で梨花を見ていた。文哉は――その様子を、冷たい目で見送った。
(誰も、信じない。お前が、どれだけ叫んでも――誰も、信じない)
◆
それから、一週間。文哉の復讐は――容赦なく続いた。
毎晩、三人の部屋を訪れ――ポルターガイストで、恐怖を与え続けた。森川は、もう魔法を使えなくなっていた。恐怖で、精神が不安定になり――魔力の制御ができなくなったのだ。
葛城も、夜な夜な襲ってくる恐怖で――苛立ちと疲労が溜まっていた。今まで順調だった全てが崩れ、何もかもがうまくいかなくなっている。
梨花は、完全に信用を失っていた。日記の内容が街中に広まり――もう、誰も彼女を「優しい聖女」とは見なかった。
そして――その噂は、城下町にも広がっていった。
城下町の広場。
人々が、勇者たちの噂をしていた。
「勇者様たちが……おかしくなってるらしいぞ」
「森川様は、魔法が使えなくなったとか」
「葛城様も、素行が悪かったしな……。女遊びばかりで」
「白石様は……裏では悪口ばかりで、性格が悪いらしいわよ」
人々の声が、広場に響く。
「勇者様たち……大丈夫なのかしら……」
「こんな状態で、魔族と戦えるのか……?」
「あいつらの召喚のために税も大量に収めたぞ……」
不安の声が、広がっていく。その様子を――一人の少女が、静かに見ていた。
桃色の髪の――エリス。
彼女は、人々の会話を――じっと聞いていた。そして――小さく、何かを呟いた。
けれど、その声は――誰にも聞こえなかった。エリスは――心配そうな表情で、広場を後にした。
(フミヤ……)
◆
数日後。王からの命令が下った。
「勇者たちに、魔物討伐の依頼を与える」
王が、厳しい表情で告げた。
「本来であれば、黒森に出向き、ランドドラゴンを討伐してこい、と言いたいところではあるが……」
「皆、調子も万全ではなかろう。とりあえず比較的、難易度の低い依頼じゃ」
「以前、近隣の村が魔物に占領されて、国民の不満も高まっている。これを解決し、汚名を返上せよ」
葛城、森川、梨花――三人の顔は、青ざめていた。
「……はい」
葛城が、震える声で答えた。三人は――この一週間、まともに眠れていなかった。
恐怖と疲労で――心身ともに、限界だった。けれど――王の命令を、断ることはできなかった。
翌日。三人の勇者は――近隣の村へと向かった。
魔物の群れが出没しているという、森の近く。そこで――三人は、魔物たちと遭遭した。オーク――レベル10程度の、中級魔物だ。
通常なら、三人で協力すれば――簡単に倒せる相手だった。けれど――今の三人に、余裕はなかった。
「葛城、右から来るぞ!」
森川が叫ぶ。
「分かってる!」
葛城が、剣を振るう。けれど、その剣筋は――鈍かった。一週間の不眠と恐怖が、葛城の体を蝕んでいた。オークの攻撃をかわしきれず、肩に傷を負う。
「くそ……! 体が、重い……!」
葛城が、苛立ちを露わにする。
「魔法……! 出ろ……!!」
森川が、必死に魔法を唱える。けれど――魔力が、暴発した。パン! 小さな爆発が、森川の手元で起こる。
「うわあああ!」
森川が、地面に倒れ込んだ。
「二人とも、しっかりして!」
梨花が叫ぶ。
「回復……!」
梨花が、回復魔法を唱える。けれど――その魔法も、治癒が遅い。精神的な疲労が、魔法の制御を妨げていた。
「くそ……! なんで……!」
葛城が、叫ぶ。
「お前らが……! お前らがちゃんとやらないから……!」
葛城が、森川と梨花に怒りをぶつける。
「何よ! あなただって、全然ダメじゃない!」
梨花が、言い返す。
「俺は……俺は悪くない……!」
森川が、震える声で言った。
三人は――疑心暗鬼に陥り、連携が取れなくなっていた。お互いを責め合い、信頼関係は完全に崩壊していた。
オークが――三人に襲いかかってくる。
「逃げるぞ!」
葛城が、叫んだ。三人は――魔物を倒すことなく、逃げ出した。討伐は――完全な失敗に終わった。
◆
その報告を聞いた王は――激怒した。
「なんと……!」
王が、拳で玉座を叩いた。その音が、謁見の間に響く。
「魔物討伐に失敗しただと!? しかも、逃げ帰っただと!?」
王の声が、怒りに震えていた。葛城、森川、梨花――三人は、王の前で――頭を垂れていた。
「も、申し訳ございません……」
葛城が、震える声で言った。けれど――王の怒りは、収まらなかった。
「申し訳ない、だと!? 貴様ら……一体、何をしに行ったのだ!」
王が、立ち上がった。
「召喚されてから、貴様らは何をした!? 女遊び、酒、賭博……! 国庫から支給した金を、湯水のように使いおって!」
王が、三人を睨みつける。
「そして――国民からの信頼も失い、魔物討伐にも失敗した……!」
王の声が、謁見の間に響き渡る。
「もはや――貴様らに、勇者としての価値はない!」
沈黙。重い、沈黙。そして――王が、最後の言葉を告げた。
「よって――勇者たちには、国外追放を命じる!」
三人の顔が、一斉に青ざめた。
「こ、国外追放……!?」
葛城が、絶望の声を上げた。
「そ、そんな……!」
森川も、震える声で言った。
「お願いします、陛下……! もう一度、チャンスを……!」
梨花が、泣きながら訴える。けれど――王は、首を横に振った。
「決定だ。明日、馬車で国境まで送る。そこから先は――貴方がたで、生きていくのだ」
王の言葉は、冷たかった。
三人は――何も言えなかった。
ただ、絶望に――沈んでいた。
悪評が広がり、追放は因果応報ですね。
ただ、復讐心に飲み込まれそうな文哉が少し心配です……
次回はそうなるのかお楽しみに!!③も本日中に更新します!
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