表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【 悲報 】異世界転生して即死した俺、種族ゴーストで再転生!? ~唯一、俺を認識する少女と始まる異世界逆転生活~  作者: おでこ
第1章:ゴーストで再転生!? 裏切りからの復讐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/34

第1話「召喚―理不尽な始まり」


「中田さん、またお願いしていいっすか?」


 声をかけられた瞬間、中田文哉は心の中で小さくため息をついた。またか。今日で三回目だ。


「はい、大丈夫ですよ」


 けれど顔には笑みを浮かべて、書類の山を抱えた後輩に手を差し伸べる。

 中田文哉なかた ふみや28歳、独身・彼女なし、中堅商社の一般事務職。

 煩雑な書類整理や他部署との調整、在庫管理――そんな地味な仕事を淡々とこなす日々。


「中田さん、本当に助かります! いつもありがとうございま~す」


「いえいえ、僕がやれば済むことですから」


 後輩が軽く手を振って去っていくのを見送りながら、文哉は自分の仕事に戻った。

 今日も定時では帰れそうにない。いつものことだ。


 誰かが困っていたら手を貸す。

 面倒な仕事も嫌な顔をせず引き受ける。

 それが文哉という人間だった。 


 自分を前に出すことが苦手で、いつも一歩引いて他人をサポートする。

 争い事を避け、理不尽な要求にも「まあ、僕がやれば済むことだし」と笑って応じてしまう。


 損な役回りばかりだと、自分でも分かっている。


 けれど、それで周りが助かるならいいじゃないか――そう思ってきた。


 その日も、文哉は深夜まで残業して、最後に会社を出た一人だった。


 誰もいないオフィスビルの廊下を歩きながら、ふと空虚な気持ちが胸をよぎる。

(このまま、ずっとこんな人生なのかな)


 そんな考えが頭をかすめた、その時だった。

 足元が、消えた。


「え――?」


 視界が光に包まれる。

 体が浮遊する感覚。

 何が起きているのか理解する間もなく、文哉の意識は闇に沈んだ。

 

 ◆


 次に目を覚ました時、文哉は石造りの広間にいた。


「……ここは?」


 周囲を見回す。

 荘厳な天井、壁に刻まれた紋章、そして足元には複雑な幾何学模様が描かれた魔法陣。


 その中心に、文哉は立っていた。


 いや、文哉だけではない。


 隣には見知らぬ三人の人影があった。

 二十代前半と思われる若い男性が二人と、一人の女性。彼らも困惑した表情で辺りを見回している。


「な、何これ……?」

 女性が震える声で呟く。


「おい、誰か説明しろよ!」

 短髪の男が怒鳴った。


 その声に応えるように、魔法陣の外から人影が現れた。

 豪奢なローブを纏った初老の男性、その後ろには甲冑姿の騎士たちが控えている。


「ようこそ、異界の勇者たちよ」


 初老の男――恐らくこの国の高位の者だろう――が厳かに告げた。


「我々は人族。そして貴方がたは、我が国ルミナス王国が命運をかけて召喚した、救世の勇者なのです」


 勇者。召喚。異世界。

 文哉の頭の中で、これまで読んできた小説やマンガの記憶が高速で駆け巡る。


(まさか、本当に……?)


「この世界は今、魔族との戦いで滅亡の危機に瀕しております。どうか、どうか我々人族をお救いください!」


 男が深々と頭を下げた。その姿に、周囲の騎士たちも一斉に膝をつく。


 沈黙。


 やがて、三人のうちの一人――茶髪の若い男が口を開いた。


「……つまり、俺たちが勇者ってこと?」


「その通りです」


「マジで?」


 男の表情が、驚きから興奮へと変わっていく。

 隣のもう一人の男性と女性も、戸惑いながらも期待に満ちた目で顔を見合わせていた。


 そんな中、文哉だけが冷静に状況を観察していた。

(これは、現実なんだろうか)


 地面の感触、空気の匂い、周囲の人々の息遣い――全てがあまりにもリアルだ。


 夢とは思えない。


「さあ、勇者たちよ。まずは貴方がたの力を確認させていただきます」


 男が手を掲げると、一人の魔法使いらしき人物が進み出た。

 彼が呪文を唱えると、四人の頭上に光の文字が浮かび上がる。


 ステータス、と呼ばれるものだった。


「おお……!」


 周囲がどよめく。


 短髪の男には『剣聖の才』、

 茶髪の男性には『大魔法使いの素質』、

 そして女性には『聖癒の力』という文字が輝いていた。


 そして、文哉の頭上には――『鑑定』とだけ、小さく表示されていた。


「……鑑定?」


 周囲の空気が、微妙に変わった。


「それは……その、物の状態を見る力、ですな」


 魔法使いが言いよどむ。


「戦闘には、直接は……」


 言葉を濁すその態度が、全てを物語っていた。

 他の三人が「当たり」で、自分だけが「外れ」。


 文哉の胸に、じわりと不安が広がった。けれど彼は、いつものように笑顔を浮かべた。


「まあ、僕は皆さんのサポートができればいいですよ」


 その言葉に、誰も応えなかった。

 石造りの広間に、微妙な沈黙が降りる。


 魔法陣の光が、ゆっくりと消えていく。



 文哉は、その時まだ知らなかった。

 この「サポート役」という立場が、自分をどんな運命へと導くのかを――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ