廃墟
俺とけもまま、それにぱいぱいちゃんはモンスター退治の依頼を受けていた。
森の奥に潜むモンスターの退治……危険な臭いしかしない。一歩間違えたら死ぬ依頼だと思った。
うっそうとした森に伸び放題の草。
俺は先頭に立ち、けもままたちの腰まで伸びた草を剣で切り裂いて道を作っていった。
「ここまで来るのは初めてですわ〜〜」
ぱいぱいちゃんはいつも通りのおっとりとした口調で喋る。大きな胸が特徴の癒し系キャラだ。
「あ! なにかあるよっ!」
桃色の長い髪をしたけもままが指を差したのは鉄筋が剥き出しの廃墟だった。
まるでかつて人間が暮らしていたかのようでもある。
昔見た映画みたいに、ここが未来の地球だと言うなら笑ってしまうな。この世界は地球と似ている部分もいくつかあったからそんなことを思った。真実はわからないのだけれどね。
「真っ暗ですわね〜」
廃墟の中はひんやりとした空気が漂っている。お化けでも出そうな雰囲気だった。
「これは……なんだ?」
俺が見つけたのは機械だった。タマゴの形をしたカプセル。人間が入れるくらいの大きさがある。
俺は埃を手で払い、機械を操作してみることにした。この世界のことがわかるかもしれない。
よくわからないスイッチが並んでいたので、適当に押してみる。
「スズキさんは機械を操作できるなんてすごいですわ〜〜」
「いや、俺もわからないよ。なんだろうね」
プシューっと空気が抜ける音と共にカプセルが開いた。不気味だ。もしかしたらエイリアンとかゾンビが出てくるかもしれない。あるいは恐ろしいモンスターとか……。
「おはようございます、マスター」
人間の年齢なら女子高生くらいだろうか。けもままたちよりもやや年上の女の子が出てきた。獣人ではなく人間と同じ姿をしている……あ、いや、頭の上に光り輝く天使の輪っかのようなものがあった。
「これはなに?」
輪っかに手を伸ばすと透けてしまう。ホログラムのような技術だろうか。
「マスター、わたしは人類繁栄ロボット841型でございます。なんでも命令をしてください」
そう言われても命令なんてない。
「人類繁栄ロボットってなに?」
「マスターの質問にお答えします……人類繁栄ロボットとは……すみません、データが消去されています……」
廃墟にあるロボットなんだから壊れていても仕方ないか。それにしても可愛らしいロボットだ。長い黒髪をツインテールにしており、前髪の下には大きな黒い瞳がある女の子型のロボット。日本の学生服のようなセーラー服を着ている。東洋人っぽくも見えた。
「マスター! 敵がいます! 攻撃っ!」
手のひらに穴が開くと、そこからまばゆい白い光を発射した。レーザーかなにかだろうか。火花が飛び散ると巨大なイカの姿をしたモンスターが倒れ込んだ。
最強クラスの戦力じゃないか。この娘がいればどんなモンスターも怖くないかもしれない。
「つよーいっ!!!!!」
けもままがロボットに近づく。
「今の攻撃でエネルギーを使い果たしてしまいました……次の攻撃発射までこの惑星が15796回ほど自転する時間が必要です」
自転て確か1日に1回だったよな。それなら次の攻撃をするまで15796日かかるってことか?
1回の攻撃にとんでもない時間がかかる。
全く役に立たないじゃないか。
「マスター、841型はダメな子でしょうか?」
うっ、まるで俺の心を見透かしているかのような質問だ。
「841型はエネルギー効率の悪い欠陥品として使用されてきませんでした……マスター、841型の電源を切らないでください……暗くて寂しいデータの中はもう嫌です」
「そんなことないよ。役に立ったよ。もしかしたらモンスターに全滅させられていたかもしれないし」
「ありがとうございます、マスター。841型は役に立ってみせます。どうか電源を切らないでください……」
「電源ってなぁに?」
けもままが不思議そうに訊ねる。
「そうだな、ロボットが動かなくなっちゃうみたいな意味かな」
「えええっ!! それはかわいそうだよっ!!!!」
「そうですわ〜その子の電源は切らないであげてください〜〜」
俺はけもままとぱいぱいちゃんの優しさが嬉しかった。
「電源を切ったりしないよ。それに841型なんて名前は変だよ。ヤヨイって名前はどう? 841型だから8(ヤ)4(ヨ)1(イ)」
「ありがとうございます、マスター。ヤヨイはマスターとその仲間のために頑張ります」
「わぁーすごーい!!!! わたしの名前はけもまま、けもままだよっ!!」
「わたくしはぱいぱいといいますわ〜〜」
「了解しました。けもままサマ、ぱいぱいサマ……ワタシの名前はヤヨイです。人類繁栄ロボットです」
人類繁栄ってのが良い意味なのかよくわからないが敵ではなさそうだ。モンスターを退治してくれたところを見ると仲間だと考えた方がいいだろう。
「マスター、あなたはなにものですか?」
「えっ?」
「マスターの情報がありません。削除されたデータなのか区別できません」
「ただのおっさん」
「了解しました、おじさまですね。守るべき人類だと判断しました」
もしかしたら、ヤヨイは気づいていたのかもしれない。俺がこの世界の住人ではないことに……。




