買い食い
「よく頑張ったね! はい、お給料っと!」
けもままとぱいぱいちゃんは退治のお給料をスーツのおっさんからもらっていた。
討伐した証とかはない。
よくある冒険ファンタジーだと必ず退治した証拠が必要だ。ドラゴンを退治したのならドラゴンの角とかそういうやつ。そうでないと、人間はいくらでも嘘をつく生き物だから。
それなのに、けもままとぱいぱいちゃんは自己申告だけでお給料がもらえる。
けもままたちには嘘をつくという概念がないのだろうか。謎だ。
羨ましい心かもしれない。まあ、かといっていつも本音で生きるなんて地球人には小さな子どもか神様みたいに清らかな心でないと無理だろうけれど。
「はい、スズキさんの分! 剣は返してもらうからね!」
人生で初めてのお給料だった。なのだが、中に入っている硬貨は日本の貨幣と違ってぐにゃぐにゃ曲がっていた。手作りのお金という感じだ。そして、なんの金属で出来ているのかも謎。なので価値は不明。それでも、人生で初めてのお給料は嬉しかった。アルバイトみたいなものかもしれないけれど。
「なにを買いましょうか〜〜」
ぱいぱいちゃんはどんな時でもおっとりとしている。
「ハンバーガーがいいっ!」
けもままが答える。確かに俺もハンバーガーって気分だ。とにかく肉が食べたい。最近は甘いものばかりだったのもあるし、狩りを終えたハンターの気分だったのもある。
けもままたちと並んでハンバーガー屋さんを探す。市場は活気に溢れていて、小さな獣人美少女たちが買い食いを楽しんでいた。
中には本屋さんや武器屋さんもあれば、お洋服屋さんなんかもある。
俺はその内けもままたちに何かお礼がしたいと思った。可愛らしい洋服やアクセサリーなんかをプレゼントしてあげたい。
この世界のお金の価値がわからないので、プレゼントがどれくらい大変なのかもわからないけれど。
「ここはヘルシーで美味しいんですわよ〜〜」
けもままがたまにいくハンバーガー屋さんよりちょっと高そうな緑の屋根のお店に入った。獣人美少女たちの手をみると、トマト、レタス、それに肉の上にたっぷりのソースがかかったハンバーガーを大切そうに持っている。
なるほど、これは美味しそうだ。
「わたくしは野菜サンドにしますわ〜〜」
そう言って硬貨を3枚と交換に野菜サンドのハンバーガーをもらう。
「わたしはテリヤキがいいかなっ!」
「あいよっ!」
おっさんの中でも頭の良さそうなおっさんがカウンターごしに貨幣を受け取った。厨房では獣人の美少女たちが一生懸命に調理をしているようだ。
俺は……というと注文に迷っている。
買い食いなんて地球ではしたことがなかったから。学生時代はぼっち、引きこもりになってからは出来るだけ人とは関わらない生活だった。
「じ、じゃあ俺も野菜サンドを……」
「はーい!」
硬貨3枚と交換に野菜サンドを受け取った。遅れてけもままのテリヤキも到着する。
「おいしそうだねっ!」
久しぶりに食べる肉の味。そして、けもままたちとの買い食いに感動していた。ずっとぼっちだったから。野菜の旨みもクセになる。地球にいた頃は野菜が嫌いだったのだけれど、この世界ではその辺の葉っぱとかをかじっているだけだったので新鮮なトマトやレタスに飢えていた。
無くしてわかるありがたみだ。
「みんなで食べると美味しいよねっ!」
けもままの言葉にぱいぱいちゃんが頷く。俺も同じ気持ちだった。
「とってもジューシーですわね〜〜トマトとたまねぎソースがたまりませんわ〜〜」
気がつくと太陽が沈みかかっていた。
俺たちは夕日に照らされながら3人並んで買い食いをした。どこまでも伸びている影を背にして。




