退治
俺はけもままとぱいぱいちゃんと一緒に森の中へと入っていく。
けもままみたいな美少女獣人たちが街の周りに出るモンスターを退治し、命懸けでおっさんを守っているのなら俺も戦わないといけないと思った。
俺はスーツを着たおっさんからモンスター退治の仕事を貰うついでに剣を借りている。手にはずっしりとした重みがあって、まるで命の重さを感じているみたいだ。
森の中へと入ると、早速モンスターが現れた。狼タイプのモンスターだ。
「いきますわよ〜〜」
のんびりとした口調のぱいぱいちゃんがロールした髪と幼い外見とは不相応な大きなおっぱいを揺らしながら金色の棍棒を振り上げた。
ずしゃっというにぶい音と共に狼の姿をしたモンスターが頭から血を吹き出す。
俺は思わず吐きそうになった。
働いたことがないのと、平和な日本で育った影響で血を見ることに慣れていなかったから。毎日食べている豚肉や牛肉、魚だってなんだって、命というものをいただいていたんだな……そんなことをあらためて感じさせられた。
いや、それは家畜の話、それすらも甘いか。モンスターという獣の前での油断はけもままたちの死につながる。
俺はけもままもぱいぱいちゃんも守りたいっ!!
剣を使って狼型モンスターの牙からけもままたちを守る。剣を振り回してガードするだけでも必死だった。
なんの戦闘訓練も受けていない、学校の体育ですら成績が悪かった俺にモンスター退治ができるわけがない。むしろ、これでも善戦しているのかもしれない。
「トドメですっ!」
けもままのオノによって狼の頭が切り落とされると真っ赤な鮮血が俺の顔を赤く染めた。いや、けもままたちの服も血で赤い。
「やりましたね〜〜大変でしたがモンスターを退治しました〜〜じゃあご飯にしましょう〜〜」
ああ、そうか、命をありがたくいただくわけか。立派な考えだと思う。毛皮は衣服に、血肉は食料になるもんな……。
俺が神妙な顔つきでいたら、けもままはがぶりと狼の頭にかじりついた。
いやいや、いくらなんでも生はだめだろう……うん? よく見てみると……。
狼は皮はチョコレートで中はスポンジケーキだった。
血だと思っていたのはいちごジャムだ。
「お菓子の魔物がモンスターなのか?」
「あれ? スズキさんは知らなかったの? スズキさんはなんでも知っているからモンスターの中身がお菓子だっていうのも知っていると思ってた」
いやいやいやいや……そんな生物は地球にはいなかった。しかし、中身がケーキだとわかるとほっとした。
「じゃあ、狼の牙もチョコレートかなにかなの?」
「退治しないと牙でけがしちゃいますよ〜〜退治するまではものすごく硬くて鋭いんですわ〜〜」
まじかよ……どういう仕組みか謎だが、この世界のモンスターは退治するまでは化け物で、退治した後はケーキとか食べ物に変化するのか。
でも、そういうのも考えてみたら納得だった。
だって、パンやらシュークリームやらが木に成っていて、サイダーやワインの海や川があるんだから。
もしかしたらお菓子がモンスターに変化したって可能性もあるのかもな……。
推測の域を出ていないが。そう考えると納得がいく。
武器を地面に置いて、俺は一口狼の牙を食べてみた。
ホワイトチョコレートだ。しかも地球のお店で買ったらけっこう高いやつ。なんというか味が濃い。
「スズキさん! あーんしてください!!」
けもままが狼の毛皮からできた板チョコを俺の口に近づける。幸せだ。女の子からチョコレートをもらったことなんてなかった。義理チョコすらも縁のない人生だったのだから。生まれて初めてのチョコレートプレゼントはけもままからだった。
「おいしいよっ! けもままありがとうっ!」
噛みしめながらチョコレートを味わった。これが女の子からもらうチョコレートの味か。別格の味だな。モンスターを退治したという緊張感から解放されたせいもあるかもしれない。甘さが身に染みた。
「スズキさん〜〜いちごジャムで顔がベタベタですわよ〜〜」
ぱいぱいちゃんが俺に顔を近づける。吹きかける息のあたたかさとやさしい呼吸の音が聞こえた。
「き、キスはだめだよっ!!」
「あー、わたしもいちごジャム欲しいっ!」
俺の抵抗も虚しく、両頬をけもままとぱいぱいちゃんのやわらかな唇に奪われた。人生で初めてのキスだった。




