おっさん=王子様
「ふふふっ、いやいや、ワタシこそが大天使なのだ。さあ、天使たちよ、集まれっ! ワタシと共に魔王を倒そうぞっ!」
たくさんの天使たちが空から降りてきた。みんなアイと同じ顔で、金髪碧眼の色白美少女だ。地球人がみたら天使だと信じること間違いなしだろう。おまけに頭の上には光る輪っかまでついている。
「時間停止が解けたぞ!?」
世界が動き出す。地球人たちはみんな天使を見て驚いている様子だった。人間離れした天使の美しさに、みな驚いて呆然と立ち尽くしている。奇跡を目の当たりにしているようでもあった。そんな天使の中心には黒髪のヤヨイがいる。
「ワタシこそが大天使だ。今までは迷惑をかけてすまなかったな」
天使たちは一斉にヤヨイに向かってひれ伏す。
時間停止が解けたのはアイが破壊されたからだろう。ロボットなので修理すれば助かるかもしれないけれど……。
そう考えた俺はアイを抱き抱え、肩に担いだ。機械の体の割にはとても軽い。それでも人間の女性と同じくらいの体重はあるみたいだけれど。
「天使の数は30といったところか……妾一人でも余裕だな。ただ、スズキくんたちを守りながらというのは少々厳しい。けもままよ、スズキくんたちを守ってはくれぬか?」
「わかった。わっちに任せよ。スズキさんたちが怪我をしたら治す手段の天使はもうおらぬからな」
もしかして……結構ピンチなのでは? RPGで例えたらヒーラーがやられてしまったようなものだ。いくらアタッカーが強くても全員の生存はかなり厳しい。
俺は足りない頭をフル回転させた。なにか、なにか逆転する手段はあるはずだ。そして……こんなやつが大天使のはずがないと、なぜか強い確信があった。
「ヤヨイは大天使とアクセスしていないよ! なんかそんな気がする……」
「そんな気がすると言われても、相手は戦う気がまんまんのようだぞ」
ランは身構えていた。
「大天使じゃないという証明ができないかな? 何か良いアイデアはない?」
「そういわれても……妾も大天使とやらにはあったことがないしのう……」
「あの〜〜天使なら人間を守る愛があるのではないでしょうか〜? どうしたら愛を証明できるのかはわかりませんが〜〜?」
ぱいぱいちゃんはおっとりしているけれどとても頭が良い!! 素晴らしいアイデアだ!!!
「大天使よ! 本当に大天使なら人間を守る愛情があるはずだ……」
「ほう? まあ、そうだな。しかし、魔王は滅ぼさなければならない……」
「だけれど……もしも……もしも、あんたが大天使じゃないなら、そして、大天使ではなく魔王だったら! あんたはおっさんに恋するはずだ!!」
俺のわけわからない話に周りで話を聞いていた地球人たちは呆れている様子だった。地球人の概念ではわからないだろう。だが、異世界にいた俺にはわかる。もしも、こいつが魔王ならおっさんに恋をして子どもを産みたいと思うはずだ。ただ、一歩間違えると魔王はおっさんを食べてしまうらしい。
だけれど、この状況を変えられるのは俺しかいない。
「けもまま、アイを頼む。俺がヤヨイに……大天使に突撃する。そして、大天使、いや、多分魔王を惚れさせてみせる」
「めちゃくちゃだよ? 本当に大天使かもしれないし、仮に魔王だったとしても、スズキさんに惚れる保証はないよっ!?」
「大丈夫だ。けもままは俺たちにバリアを張ってくれ。ランは周りの天使を頼む」
「ほうっ。さすがの勇気だな。妾の惚れたおじさまだけのことはある……やるだけやってみるがよい……」
ヤヨイの指示で天使たちがこちらに襲いかかってくる。けもままは丁寧に周りの地球人のためのバリアまで張ってくれていた。これがなければ大量の死人が出ていただろう。
「いくぞっ!」
俺とランはヤヨイに向かって走り出した。天使たちはビームだけでなく肉弾戦も得意なのか、ランとカンフー映画のような組手を始める。子どもと大人くらい実力に差があっても、さすがに30人も天使がいると大変な様子でもあった。おまけに俺を守りながらだ。
「ヤヨイっ! 今、目覚めさせてやるからなっ!」
俺はヤヨイの唇を奪った。童話の王子様とお姫様の恋みたいな美しいものじゃない。むさいおっさんと美少女のキス。地球人の価値観だと犯罪の臭いがするやばい雰囲気すらあるかもしれない。
でも、俺の気持ちはとてもピュアなつもりだった。おっさんだけど……。




