アイ
「俺たちに敵意はない。ただ、地球へ行きたいだけなんだ。力を貸してくれないか?」
俺の言葉に金髪の天使は迷っている様子だった。
「あなたと天使見習いのロボットが地球へ行くことは許しましょう。しかし、獣人と魔王を地球へ連れていくことはできません。彼らは人間の感情エネルギーを食糧にしているからです。私たち天使は感情エネルギーを摂取しません。その証拠にここは砂漠でしょう? それは、ここが感情エネルギーを利用していないから砂漠なのです。天使はこうした不毛の地で質素な暮らしをしています」
「ええっ! 毎日お煎餅とお茶だけじゃ飽きちゃうよ……」
けもままが驚くのも無理はない。俺だって、流石にそんな生活は無理だろう。
「ワタシたちはエネルギーさえ摂取できれば生きていけますからね」
ヤヨイの言葉には説得力がある。うーん、さすがロボットだ。
「なぁ、テントはいくつもあるけれど……ここではあんた一人で暮らしているのかい?」
「……確かに私ひとりで暮らしています。しかし、そのうち大天使さまが帰ってくるはずですっ! 今は地球を良くするために頑張っていらっしゃるはずっ!」
大天使? そういえばゲームとかでも天使に序列があったな。きっと偉い天使なのだろう。
そんなことを考えていたら、ランが高笑いを始めた。
「あっはっはっはっ!! お主もなかなかに初心だな。大天使がそんな良いやつであるわけがなかろう。地球人のスズキくんは天使を見たことはあるか?」
「え!? いや、ないかな。神話とかで聞いたことはあるけれど……」
「なっ!!」
金髪の天使は口をあんぐりとひろげている。よっぽど驚いたのかな。でも、地球では見たことも聞いたこともない。たったの30余年の人生だけれどね。
「なぜかわかるか?」
「そ、そんなの……大天使さまに聞いてみなくては……」
「聞かなくてもわかるだろう。天使たちも結局は地球を支配したいからだ。魔王と変わらないのだっ!」
「そ、そんなことはありませんっ……たぶん……」
ずいぶんと弱気な天使だな。
「妾たちが地球を支配したほうが、地球人のためになるのだ。それは、地球人が圧倒的な力にひれ伏す生き物だからだっ! はーっはっはっはっ!! その上で、金持ちから富を奪い、力で弱者を救済したほうが余程マシよっ!!!」
「そ、そんなことはありませんっ! 地球人にも崇高な魂を持った人がいるし、愛もあるのですっ!」
「ならば、どれだけ大天使とやらが地球でサボっているか見に行くか?」
「うっ……そ、それは……」
「ワタシは天使のあなたと冒険がしたいです。天使について色々と教えてください」
ヤヨイは同じ天使だからか、ものすごくこの娘に興味があるみたいだった。
「わ、わかりました。ちょっと地球を見に行くだけですよっ! そうしたら、ちゃんと皆さん帰ってくださいねっ! 特に魔王さんっ! あなたに支配は絶対にさせませんからっ!」
「ふっ、仲間になるのなら名前で呼べ。妾はランだ」
「わたしはけもままだよっ! こっちはぱいぱいちゃん! それと、ヤヨイちゃん! あとスズキさんだねっ!」
「わ、わかりました。私の名前はアイです」
アイちゃんか。確かに天使っぽい名前かもしれない。ヤヨイみたいに数字じゃないのは廃棄されたロボットと正規品の違いみたいなものかな?
「ふむ、ならば乗り物を貸して欲しい。妾は良くても地球人のスズキくんは長旅がきついからな。それに、地球人では宇宙で生きていくこともできぬだろうし」
言われてみたらそうだ。宇宙の中に入ったら即死だろうね。宇宙では息ができないし、ものすごく冷たいし。




