迷い
俺たちはこの街を出ていくことにした。モンスターの王である魔王のランとおっさんたちが共に生きていくことは難しいし、俺が地球へ行ってみたいというわがままのために。
「相変わらず、何も見えませんね〜〜」
辺り一面が果てしない砂漠だ。食べられる甘い粉で出来た砂漠。サボテンからは緑茶も出てくる。
「こっちであっているの?」
「妾を信じなさい。というか、信じなければ迷って全員干からびてしまうぞ」
先頭の銀髪少女ランには目的地がわかるみたいだった。魔王だからだろうか。
「少し休憩しないか? もうすぐ日が暮れるぞ?」
「うむ、そうだな……目的地まではあと半分といったところか。休憩にはちょうどいいかもしれない」
昼間から日が暮れるまで歩いてやっと半分かよ。足は乳酸が溜まりきった疲労で棒のようだった。
俺たちは煎餅で出来た茶色い岩に腰をかける。
「マスター、お弁当ですよ」
ヤヨイがみんなのために白米のおにぎりを用意してくれていた。サボテンから出る緑茶とよく合うからぴったりかもしれない。
「酸っぱいですわ〜〜」
「ぱいぱいさん、梅干しは疲労回復に良いのですよ」
ヤヨイはロボットだけあって物知りだ。
「何か乗り物でもあればいいんだけれどな……」
俺がぼそっと呟くと、ランがニヤリと笑った。
「あることはあるぞ。この近くには天使がいるからな」
天使……この世界では地球を繁栄させるためのロボットのことを天使と呼ぶ。ヤヨイも人類繁栄のために作られたロボットなのだが、欠陥品らしくて、ランが言うには天使のなりそこないだそうだ。
「マスター、天使に会ってみたいですっ! 天使ならきっと我々の力になってくれますよっ!」
ヤヨイは仲間の天使に会ってみたいらしい。その気持ちはわかる。俺も地球人がいたら会ってみたいと思うだろう。
「どうかな。天使たちは妾ほど物分かりがよくないぞ……」
「あ、もしかして、魔王と天使は対立しているとか?」
「半分正解だな……」
「半分?」
「天使たちは地球を守る存在。地球から感情エネルギーを搾取するおじさんや獣人のことは敵だと思っているよ」
天使が俺たちの敵?
だが、この言葉に一番ショックを受けていたのは天使になりそこなったヤヨイだった。
「ワタシがマスターたちの敵なのですか?」
ヤヨイの声は震えている。
「お主は天使ではなかろう。気にすることはない」
だが、ロボットのヤヨイは顔が真っ青だ。ロボットなのに地球人と同じように感情が豊か。というか、この常識外れの世界では一番地球人の感情に近いかもしれない。
「ヤヨイ……俺もさ、自分が地球人で……この世界の人からしたら家畜みたいなものだって知らされた時は驚いたよ。だから、あまり落ち込むな。ヤヨイには仲間がいるから」
「はいっ! マスターっ!!!!」
少し立ち直ってくれたみたいだ。よかった。
「それじゃあ、食事が済んだら天使たちから乗り物をいただくとするかな……」
「えー、どんな乗り物なんだろう?」
けもままは興味津々といった様子だ。無理もない、俺もだ。車なのか、飛行機なのか。なんなのだろう。




