抵抗
ほのぼのとした世界にこんな裏があったなんて……。
かといって、俺にできることはなにもない。この世界の俺はあまりにも無力だ。異世界転生でチートスキルを授かったわけでもない。
いや、正確には自分でも何がしたいのかもわからなかった。
ただ、地球で必死に生きていた全てが否定されたような……そんな胸糞の悪さが心にある。必死に生きてこなかったが故に、この世界に来られた俺が言うのも変かもしれないけれど。
このことは……けもままたちには黙っていよう。いや、多分説明しても理解できないと思う。仮に俺が未知の世界からのエネルギーで地球上のみんなが平和に暮らせるようになりましたと聞いたら……まあ、そういうもんだよなみたいに受け入れる。
ほとんどの人間は牧場の家畜に感謝はしても同情をしない。
それで世界が成り立っているのだから。
だから、厳密にはおっさんたちも悪気があるわけじゃないのだろう。それでも……抵抗したいという小さな気持ちが芽生えていた。地球人だったから。
「……以上で映画は終わりになります。これからも人類繁栄と多くの感情エネルギー吸収のために頑張ってまいります」
壇上でスーツを着たおっさんが演説をしていた。
終わったか……。とりあえず、ヤヨイには言っても良いだろう。何かアドバイスが貰えるかもしれない。これからのここでの暮らし方とかについても。
二択だ。
一つは今まで通りのんびりまったり、みんなと仲良く生きていくこと。
二つ目は辛い選択肢だけれど……この街を去ること。荒野の先に何があるかわからないけれど、もしかしたら別の街があるかもしれない。そこでは、ひょっとしたらこことは違う暮らしがあるかもしれない。
俺は会場を後にして、けもままたちと花園で合流した。
「映画は面白かったですか〜〜」
ぱいぱいちゃんが無邪気に尋ねてくる。でも、ぱいぱいちゃんはこの世界のことをなにも知らないのだから仕方がない。
「うん、ただ……俺には少し刺激が強かったよ。なぁ、ヤヨイ。二人で相談ができるか?」
「あ! ずるーいっ! 二人で遊ぶんだねっ!」
「違うよ。俺が昔住んでいたところについて、ヤヨイと話がしたいんだ。いいかな……」
「マスター、ワタシはいいですよ」
「そういうことなら仕方ありませんわね〜〜ほら、けもままさん、いきますわよ〜」
ぱいぱいちゃんはけもままと同じ子どもでも精神的に少し大人びているのか、いろいろと察してくれる優しさがある。
「仕方がないなぁ。わたしにも今度話してね?」
「うん! 二人にもいつかちゃんと話すよ」
ヤヨイと二人きりになった。
「映画の内容はどうでしたの?」
「俺がいた宇宙という……うーん、なんだろう、上手く説明できないんだけれど広い世界の中にある、地球という星の話だった。俺は地球人なんだよ。正確には地球人だった……なのかもしれないけれど、詳しいことは俺にもわからない」
「なるほど、そのデータと消去されたデータを複合してみることにします……うーん、ワタシと似たタイプのロボットが地球に行ったデータが確認できました」
「えっ!? この世界から地球へ行けるの?」
「方法はわかりません。ワタシは欠陥品なので。ワタシの力では地球へ行けません。ですが、ワタシのようなロボットは人類繁栄のための『天使』と呼ばれていたデータがあります」
なるほど、ヤヨイの姿が獣人美少女ではなく地球人とそっくりなところ、そして、頭にホログラムの光る輪っかがあるところは昔の神話で聞いた天使とか神様にそっくりだ。
もしかしたら、人類の祖先はヤヨイのようなロボットを神様と勘違いしたのかもしれない。自分たちを繁栄させてくれる存在として。
なら、第三の選択肢が出来たかもしれない。
「俺は地球へ行ってみたい」




