ダンジョン
獣人美少女たちの間で迷路が流行っていた。
森の中に洞窟があって、その中が迷路のようになっているのだそうだ。
ダンジョンの奥にはなんかすっごい宝物があるという噂もあるが、けもままたちは立派な木の枝やビー玉を宝物にしているため、すっごい宝物にはあまり期待しない方がいいのかもしれない。
「スズキさん、わたしたちも迷路に行きませんか?」
「ぱいぱいちゃんたちは?」
「今日はおじさまのお世話をしているみたいです」
そうなのか。ならば、たまにはけもままと二人で冒険するのも悪くないかもな。
「久しぶりに二人で探検に行こうか!」
けもままは銀の斧を、俺はおっさんからモンスター退治のための剣を借りてから洞窟へと向かった。もしかしたらモンスターが出るかもしれない。
この世界には盗賊とか悪人はいないが凶悪なモンスターはいる。そんなものと武器も持たずに出会ったら簡単に死ねる世界だ。獣人美少女とおっさん、それと凶悪なモンスターしかいない世界がここなのだから。
森の中にある洞窟の中は陽の光が当たらないはずなのに仄かに明るい。松明やライトは必要なさそうだった。不思議な世界だ。
洞窟の中の道は結構広くて、地下鉄の通路くらいの広さがある。
俺たちの他にも獣人美少女たちが何人か探検しているのかなと思ったのだが、誰とも出会わなかった。本当に洞窟を探検することが流行っているのだろうか?
「おーいっ!」
おーい、おーい……と洞窟の中でけもままの声が反響する。
「誰かいないの?」
誰かいないの、誰かいないの……。シーンと静まり返った洞窟の中はなんだかとても不気味だった。二人で入って平気だったのだろうか。
「なんだか面白いですね! どんな宝物があるのかワクワクします!」
けもままたちは勇敢で好奇心旺盛な生き物だ。なにしろ外見は幼い少女なのに、おっさんの代わりに恐ろしいモンスターたちと命懸けの戦いをするのだから。たまに怖くなって泣いちゃう子もいるけれど。
「ちょっと待って、何かいるぞ!?」
前方に黒い影が黒い影がある。よく見ると高校生くらいの女の子だ。けもままたちより少し大人びていて、背の高い銀髪の少女。
「大丈夫? 具合でも悪いの?」
人形みたいに透き通った肌と紅い特徴的な瞳をしていた。
「ふふっ、おじさまの匂いがしてみたと思ったら……子どもも一緒なのね」
何を言っているんだ?
「あら? あなたは!!! ようやく巡り会えましたね、おじさま! 妾とおじさまを作りません? 立派なおじさまを産んで差し上げますわっ!」
なっ!? この世界にも女性がいたのか?
「こ、これはモンスターだよ!! おじさまを誘拐する悪いモンスターなんだ!!」
けもままが銀の斧を両手で握りしめていた。
モンスター? ケモミミが生えていない。外見はどう見ても地球の女の子に見えるけれど……でも……確かにけもままたちとは少し違う雰囲気がある。
ただ、女の子と子作りするだけなら誘拐されてもいいかもと……ほんのちょっぴり思ってしまった。いや、ファンタジー世界のサキュバスみたいに精を搾り取られるのかもしれないか。
「残念だけれど、俺はけもままたちと一緒にいるよ……」
「そうだよ! ずっとわたしと一緒にいるんだからっ!!」
「ふふふっ、妾も昔はそんな無垢な少女だったのですよ」
どういう意味だ?
「まあ、今回はいいでしょう。しかし、あなた様には助けていただいた過去もありますゆえ、いつか必ず二人のおじさまを作らせていただきます……」
それだけ言うと銀髪の少女は洞窟の闇へと消えてしまった。
あんな女の子を助けた記憶なんて一つもない。
「とりあえず、ここから出よう! 他にもモンスターがいたら危険だし……」
不思議なことに、銀髪の少女に出会ってから洞窟探検のブームは終わってしまった。まるで俺を誘い出すことが目的だったみたいに……。




