神社
俺はけもままたちと神社を訪れていた。
ぱいぱいちゃんは旅行が好きで、この世界の神社やお寺にも詳しくて、みんなで神社へ行こうという話になったのだ。
境内には苔むした朱色の鳥居の下にお賽銭箱とおみくじの筒が置いてある。
日本の神社と似ていた。
神様ってわりとどこの世界でも似ているものだ。日本の神話と遠く離れたギリシア神話でも共通点があるらしい。
だから、この世界の神社が地球の日本と似ていてもおかしくはないのかもしれない。
「お参りしましょう〜〜」
ぱいぱいちゃんは旅行に慣れているだけあって所作が美しい。日本ほど厳格ではないけれど、硬貨を1枚お賽銭箱にいれると鈴のついた紐を揺らして手を合わせた。
「すごーいっ! こうやるんだね!」
けもままと俺、それにヤヨイもぱいぱいちゃんの真似をしてから手を合わせる。
「それじゃあ〜帰りましょうか〜〜」
「あ、待ってよ! せっかくだからおみくじを引いていこう!」
俺はおみくじを引いてみた。
結果は吉。『仲間を信じれば道が開かれる』と書かれていた。
なかなか運がいいかもしれない。
「わたしも引いてみます!」
結果は凶。『食べ過ぎに注意』だった。
「これって良くないのかな?」
不安そうに俯くけもままの頭を撫でた。
「大丈夫だよ、今日(凶)は食べ過ぎなければ平気だから」
「そうですね」
人見知りの俺が考えた渾身のギャグがスルーされてしまった。まあ、仕方ないか。気がつけという方が無理がある。
「マスター、今日とおみくじの凶をかけたジョークですね。さすがです」
ヤヨイは気がついてくれたか! さすがロボットだ! 痒いところまで手の届く気配り。
「そうだったんですね! スズキさんありがとうございます!」
けもままの表情が柔らかくなる。よかった。
「ぱいぱいちゃんは?」
「大吉でしたわ〜〜」
おみくじには『待ち人来る』と書かれていた。
「すごいねー!! ヤヨイちゃんは引かないの?」
けもままの言葉にヤヨイは首を振る。
「ワタシは非科学的なことは信じていませんから」
さすがロボットだ。
「でも……」
ん?
「楽しそうですし、マスターが引いて欲しいというのなら……」
なんか、ヤヨイは実はおみくじをすごく引きたいんじゃないか? そんな気がした。我慢しなくていいのに。
「引いてごらんよ!」
「はい! マスター! 気合を入れて引きます!」
そんなに引いてみたかったのか。
しかし、出た結果は大凶だった。『災いが降りかかる』と書かれている。
「おかしいですね……」
ヤヨイはおみくじの筒を再び叩いた。
二度目の大凶。『神様が怒っている。謝るべし』
「大凶2回だなんてっ! 確率的にあり得ませんっ!」
その時だ、境内の奥から白い霧のようなものが浮かび上がった。
「誰じゃ……わしの神社でおみくじを乱暴に扱ったのは……」
神社に似つかわしくない赤い着物にサンタクロースみたいな白いヒゲの生えたおっさんの神様が現れたのだ。
「お、おじさまですよ!」
「おじさまの神様ですわ〜〜なんと神々しいのでしょう〜〜」
もしかしたら、この世界のおっさんはもはや信仰の対象なのかもしれない。
「なるほど……おまえじゃな? 2回も大凶を引いて、わしを起こしたのは」
「ご、ごめんなさい。神様が実在するというデータがなかったもので……」
ヤヨイは深々と頭を下げた。
「ふむ……実はな、参拝客がおらんで、わしも寂しかったんじゃ。驚かせてすまなかったの……」
俺たちは顔を見合わせる。
「また来ますよ」
俺がそう言うと、神様らしきおじさんがにっこりと笑った。
「わたしも来るよっ!」
「わたくしもですわ〜〜」
「ワタシも来ます」
みんなの言葉に満足したのか、神様は消えて、鳥のさえずりが木漏れ日の間から聞こえてきた。
「また来いよ、大吉が引けるように、わしもちゃんと起きているからな」
おじさまの神様がいるというのが噂になって、この神社が獣人美少女の参拝客で溢れるのはほんの少し先の話だった。




