温泉(4)
温泉では完全にのぼせてしまった。浴衣に着替えた俺は畳の上で大の字になっている。
「スズキさん〜大丈夫ですか〜〜?」
ぱいぱいちゃんが団扇で俺の頭を仰いでくれた。
「ああ、身も心もリラックスできたと思う。少し刺激が強かっただけだから……」
部屋の中でくつろいでいると女将さんが料理を持って現れた。
この世界ではなかなか食べられない和食で、天ぷらや刺身、それににんじんやごぼうなどを花の形にカットした煮物もあった。
「ゆっくりしてください」
熱燗のお酒まである。至れり尽くせりだ。
「マスターはおじさまですから、お酒をどうぞ」
そう言って、ロボットのヤヨイがお酌をしてくれる。
「みんなはお酒を飲まないの?」
「うーん、あまり好きじゃないかな」
「わたくしもお酒は苦手ですわ〜〜」
けもままたちの味覚は子どもに近いのかもしれない。まあ、無理に飲ませる必要もないか。
お酒はほどほどなら体にいいけれど、たくさん飲めば毒にもなるし。
透き通った一杯を口に含むとすっきりとした春の味わいがする。
「はぁーーっ、このために生きてるって感じだな」
「そんなに美味しいの?」
俺の反応でけもままはお酒に興味が湧いたみたいだ。
「うーん、どうかなぁ……無理には飲まない方がいいと思うけれど……」
「わたし! 飲んでみたい!」
「わたくしも飲みたくなりましたわ〜〜」
「マスター、ワタシもいただいてよろしいでしょうか?」
「少しならいいんじゃないかな。一口くらいなら」
俺はお猪口にお酒を3人に注いでいった。このくらいなら大丈夫だろうと少なめに。
「いただきまーすっ!」
ぐいっと一口でみんな飲み干してしまった。
「どう?」
「……うーん、目が回ってきました……体中があつひてふぅ……」
けもままには刺激が強かったのか、顔を真っ赤にさせて浴衣をはだけた。
「わたくしは気持ちよくなってきましたわ〜〜」
「ワタシはふつうですかね。マスターのようなおじさまの好みがわかったのは良い学習になりました」
特に反応がないのはロボットのヤヨイだけだ。確かにロボットが酔ったりはしないだろうな。
「うーん〜〜おじさまの匂い〜〜大好きですわ〜〜〜」
ぱいぱいちゃんが俺の体に密着して匂いを嗅ぎ始めた。
「すごく良い匂いだよね! わたしも大好き!!」
ぱいぱいちゃんは上半身を、けもままは俺の下半身の匂いを嗅いでいる。
「お、落ち着いて!」
「身体中が熱いのですわ〜〜」
「わかる、とろけちゃいそう」
わかった、けもままたちにお酒を飲ませたらダメだ。
「ご飯を食べようっ! 食べないとみんなの分も食べちゃうぞっ!」
「えーお腹すいたよー」
「わたくしもですわ〜〜」
よかった。食欲の方が上だったか。
久しぶりの和食に舌鼓を打ちながらみんなで完食。
「はぁー美味しいっ!」
「たまにはこういう料理もいいですわね〜〜」
「とても栄養バランスに優れた食事です」
みんな満足したみたいだ。たまには旅行してみてよかった。
「マスター、おやすみの時間です」
食事が下げられるとヤヨイが布団を敷いてくれた。
「わたくしはスズキさんの隣がいいですわ〜〜」
「あ! ワタシもマスターの隣がいいです!」
「それならわたしだって隣がいいよっ!」
しかし、けもままの願いは却下された。
「「あなたはいつもマスターの(おじさまの)隣で寝ているじゃないですか!」」
こう言われたら仕方ない。俺の両サイドはヤヨイとぱいぱいちゃんが寝ることになった。
「マスターの体、柔らかくてあったかい……」
二人に強く抱きしめられながら寝ることになる。当然、眠れるわけがない。俺は興奮してしまった。だって両腕に柔らかいものが当たるんだから!
ぱいぱいちゃんとヤヨイはすーすーと寝息を立てている。真っ暗な中で何かが頭に近づく気配がした。
「誰?」
「やっぱり眠れていませんでしたか」
「けもままか……」
「わたしが子守唄を歌って差し上げますわ。おじさんはおりこうさんだねんねしな〜おじさんは〜おりこうさんだ〜ねんねしな〜」
小さな声で歌いながら俺の胸をとんとんしてくれる。まるで子どもと母親だ。そんなことを考えていたのだが、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。




