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けもまま  作者: 苺いちえ
のんびり異世界ライフ
18/22

温泉(4)

 温泉では完全にのぼせてしまった。浴衣に着替えた俺は畳の上で大の字になっている。


「スズキさん〜大丈夫ですか〜〜?」


 ぱいぱいちゃんが団扇(うちわ)で俺の頭を仰いでくれた。


「ああ、身も心もリラックスできたと思う。少し刺激が強かっただけだから……」


 部屋の中でくつろいでいると女将さんが料理を持って現れた。

 この世界ではなかなか食べられない和食で、天ぷらや刺身、それににんじんやごぼうなどを花の形にカットした煮物もあった。


「ゆっくりしてください」


 熱燗(あつかん)のお酒まである。至れり尽くせりだ。


「マスターはおじさまですから、お酒をどうぞ」


 そう言って、ロボットのヤヨイがお(しゃく)をしてくれる。


「みんなはお酒を飲まないの?」


「うーん、あまり好きじゃないかな」


「わたくしもお酒は苦手ですわ〜〜」


 けもままたちの味覚は子どもに近いのかもしれない。まあ、無理に飲ませる必要もないか。

 お酒はほどほどなら体にいいけれど、たくさん飲めば毒にもなるし。


 透き通った一杯を口に含むとすっきりとした春の味わいがする。


「はぁーーっ、このために生きてるって感じだな」


「そんなに美味しいの?」


 俺の反応でけもままはお酒に興味が湧いたみたいだ。


「うーん、どうかなぁ……無理には飲まない方がいいと思うけれど……」


「わたし! 飲んでみたい!」


「わたくしも飲みたくなりましたわ〜〜」


「マスター、ワタシもいただいてよろしいでしょうか?」


「少しならいいんじゃないかな。一口くらいなら」


 俺はお猪口(ちょこ)にお酒を3人に注いでいった。このくらいなら大丈夫だろうと少なめに。


「いただきまーすっ!」


 ぐいっと一口でみんな飲み干してしまった。


「どう?」


「……うーん、目が回ってきました……体中があつひてふぅ……」


 けもままには刺激が強かったのか、顔を真っ赤にさせて浴衣をはだけた。


「わたくしは気持ちよくなってきましたわ〜〜」


「ワタシはふつうですかね。マスターのようなおじさまの好みがわかったのは良い学習になりました」


 特に反応がないのはロボットのヤヨイだけだ。確かにロボットが酔ったりはしないだろうな。


「うーん〜〜おじさまの匂い〜〜大好きですわ〜〜〜」


 ぱいぱいちゃんが俺の体に密着して匂いを嗅ぎ始めた。


「すごく良い匂いだよね! わたしも大好き!!」


 ぱいぱいちゃんは上半身を、けもままは俺の下半身の匂いを嗅いでいる。


「お、落ち着いて!」


「身体中が熱いのですわ〜〜」


「わかる、とろけちゃいそう」


 わかった、けもままたちにお酒を飲ませたらダメだ。


「ご飯を食べようっ! 食べないとみんなの分も食べちゃうぞっ!」


「えーお腹すいたよー」


「わたくしもですわ〜〜」


 よかった。食欲の方が上だったか。

 久しぶりの和食に舌鼓(したつづみ)を打ちながらみんなで完食。


「はぁー美味しいっ!」


「たまにはこういう料理もいいですわね〜〜」


「とても栄養バランスに優れた食事です」


 みんな満足したみたいだ。たまには旅行してみてよかった。


「マスター、おやすみの時間です」


 食事が下げられるとヤヨイが布団を敷いてくれた。


「わたくしはスズキさんの隣がいいですわ〜〜」


「あ! ワタシもマスターの隣がいいです!」


「それならわたしだって隣がいいよっ!」


 しかし、けもままの願いは却下された。


「「あなたはいつもマスターの(おじさまの)隣で寝ているじゃないですか!」」


 こう言われたら仕方ない。俺の両サイドはヤヨイとぱいぱいちゃんが寝ることになった。


「マスターの体、柔らかくてあったかい……」


 二人に強く抱きしめられながら寝ることになる。当然、眠れるわけがない。俺は興奮してしまった。だって両腕に柔らかいものが当たるんだから!


 ぱいぱいちゃんとヤヨイはすーすーと寝息を立てている。真っ暗な中で何かが頭に近づく気配がした。


「誰?」


「やっぱり眠れていませんでしたか」


「けもままか……」


「わたしが子守唄を歌って差し上げますわ。おじさんはおりこうさんだねんねしな〜おじさんは〜おりこうさんだ〜ねんねしな〜」


 小さな声で歌いながら俺の胸をとんとんしてくれる。まるで子どもと母親だ。そんなことを考えていたのだが、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。

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