温泉(3)
男湯も女湯もなければ着替えのスペースもみんな共有だった。
仕方がないので獣人少女のけもままたちと一緒に着替えることになる。
俺は壁の方だけを向いて周りを見ないようにした。上着をカゴに入れた後、下半身をタオルで巻いてからパンツと一緒にズボンもカゴに入れる。
学生時代の水泳の時間以来の緊張だ。男同士でも裸を見られるのが恥ずかしかったのに、今回は女の子も一緒。緊張するなという方が無理がある。
「スズキさん〜どうしてみんなの方をみないんですか〜〜?」
そう言われてもだな……。
「あ、あのさ、俺はお風呂に入る時は目を閉じるんだよっ!」
とっさに嘘が出てしまった。
「前に一緒に入った時も〜目を閉じていましたわね〜〜」
さすがぱいぱいちゃん!
理解が早くて助かる。
「わたしも頭を洗う時は目を閉じちゃうからわかるかな。スズキさんは水が怖いの?」
「うーん、まあ、そんな感じだよ……」
「そっか、それなら無理はよくないよね」
けもままの優しさが辛い。いや、しかし、これはけもままたちの貞操を守るためだ!
仕方のないことなのだ!
けもままたちの裸がどうなっているのか俺は知らない。上半身をみたこともない。ただ、肌は色白で人間と同じだった。髪の毛が長くて、ケモミミと尻尾がついていること以外はたぶん地球の女の子と同じだと思う。見たことがないので想像なのだけれど。
「マスター、手をお繋ぎします。転んだらたいへんですし……」
ヤヨイと手を結びながら温泉へと向かう。目を閉じていると数歩あるくだけでも不安定だ。
「わぁっ! おじさまだっ!!!」
この声は他の獣人少女たちだ。
「おじさま可愛いっ!」
「おじさまっ! お世話してあげましょうか?」
少女たちの黄色い声援に体が反応してしまう。
「い、いいよ。俺は平気だからっ……」
多分、目を開けたら天国が広がっているんだろうな。それでも目を開けない俺のことを誰かに褒めて欲しい。そんな気分だ。
「マスターのお背中を流すのはワタシの勤めです」
こういう時にロボットとヤヨイは助かる。ロボットの裸なら見ても悪くないだろうし。まあ、見ないけれどさ。
「うん?」
背中に柔らかな感触がする。なんだ? ヤヨイの手か?
「マスター、気持ちいいですか? こうして洗うとおじさまは喜ぶとデータにありましたので」
石鹸の泡越しになにやら柔らかなふたつのものが背中に当たっている。
気にするな気にするな気にするな、相手はロボットだ! 心頭滅却っ!
下半身と頭だけ自分で洗って、それ以外をヤヨイに洗ってもらった。
「いいなーわたしもおじさまのお世話したいよー」
けもままは相当に俺のお世話をしたいらしい。
「またそのうちね……」
ゆっくりと浸かる温泉はとても気持ちが良くて、全身の疲労が取れていく。女の子? に囲まれて神経を使っていたのかもしれない。緊張がほぐれていく。地球にいた時も温泉旅行を趣味にすれば良かったな……そんなことを思ったのだった。




