カレー
今日は久しぶりに一人で街を徘徊してみた。
けもままたちとは別々に行動するのは久しぶりかもしれない。
「おじさまっ! モンブランのケーキ食べませんか?」
「おじさまぁ! あたしと一緒にお昼寝しよーよっ!」
様々な獣人美少女に声をかけられる。
これってモテているということなのか?
いや、この世界の獣人美少女たちは俺みたいなおっさんのお世話に命懸けなので少し違うかもしれない。
日本で生活していた時に例えるなら猫になったようなものかも。野良猫ならかわいいって言ってもらえるし、餌をくれる人もいる。しかし、野良猫って案外過酷な生活をしているみたいだし……俺の方がずっと気楽だな。
街をうろうろとしていたら、木の下で昼寝をしている女の子がいた。茶色い三毛猫みたいな獣人だ。
「ふにゃあ〜あ〜っ」
みんな寝たい時に寝ている。食糧は木に成っているから食べたいものにも困らない。単に生きていくだけなら、この世界では働く必要がなかった。
名前も知らない三毛猫姿の獣人の隣で俺も横になる。
地球に居た時は働くことを強要されていた。働かなければ生きていけない。そのためにたくさん勉強したり、ストレスを抱えながら会社に通わなくてはならないのだ。最も、俺はそれができなくて落ちこぼれていたけれど……。
この世界は自分に合っていると思った。
俺は人より金持ちになりたいわけでも、名声が欲しいわけでもないから。
のんびりマイペースに生きていければそれが一番だ。
暖かな日差しに瞼が重くなる。
うとうととして、俺はいつの間にか眠っていた。
……何かが俺の頭を撫でている。母親みたいだ。これは子どもの頃の夢か?
目を開けるとけもままが俺の頭を撫でていた。
「スズキさん、こんなところで寝ていたら風邪をひきますよ。獣人は丈夫な体ですがおじさまの体は繊細ですので」
「ありがとう……」
「どういたしまして。お腹が空きましたか? 何か買ってきましょうか?」
「うーん、大丈夫だよ。俺なら平気。ありがとう……けもまま」
そういえば、地球に居た頃は母親や父親が死ぬことが怖かった。俺は無職で学歴も職歴もない。両親がいなくなったらどうやって生きていけばいいのかわからなかった。
「なにか悩んでいるの?」
「昔のことを思い出してね。昔は未来が怖かったんだ」
「先のことなんて考えても仕方ないですよ。毎日を楽しく生きていれば、きっと未来は明るいはずです。みんなと仲良く、楽しく生きていくんです」
けもままは俺の凍った心を溶かしてくれるみたいだ。
「少し肩の荷が降りた気がするよ」
「それならよかったです。そうだ! 今日の晩ご飯はなににしましょうか? わたしはカレーって気分かな」
「そうだな、俺もそんな気分だ」
「なら、ニンジンやタマネギ、それにカレーのルーも買っていかないといけませんね!」
この世界にはカレーのルーまで売っているのか。
けもままに手を引かれながら市場を巡る。まるで俺の小さなお母さんみたいだった。




