お金
「ねぇ、わたしも可愛い洋服を着てステージに立ちたいな」
けもままが草むらの中で言った。
「それはアイドル〜〜というものになりたいということですの〜〜?」
「そうっ! おじさまをたくさん笑顔にしたいっ!」
けもままたちは赤ちゃんみたいなおっさんのために命懸けで働くことを生きがいにした謎の獣人美少女だ。けもままたちは地球の女の子とはかなり違った価値観をしている。
なので、同じくおっさんの俺のことを可愛いとさえ思っていた。
「いいんじゃないかな」
俺の答えにぱあっとピンク色の瞳を輝かせた。
「でも〜お洋服は高いですわよ〜〜」
ぱいぱいの返事から、この世界にも貨幣価値はあることがわかる。けもままたちは基本的にみんな地味なワンピースを着ていた。おっさんの俺にはそれが純朴で可愛いとも思うのだけれど。フリルのついたドレスなんて着ている子はほとんどいない。
かなり高いものなのかもしれなかった。
「ならさ、俺が買ってあげるよ!」
「ええっ!? 悪いよ。おじさまからお金なんて貰えない。洋服は自分たちのお金で買うから。節約すればいいだけだしっ!」
「そうですわ〜〜おじさまを守ることこそがわたくしたちの生きがいなのですから〜〜」
けもままたちはずいぶんと自立した考え方なんだな。子どもっぽい外見と思考のようで、ある意味では地球の若い子より自立しているようでもある。
「マスター、ヤヨイが稼働していた時代とは価値観が変わったのですね」
「え? どういうこと?」
「いえ、データが破損していました。なんとなくそんな気がしていただけかもしれません」
電源を切られることを恐れる人工知能ロボットのヤヨイは比較的俺と近い価値観なのかもしれない。いつ頃、なんの目的で作られたのかが謎だけれど。
「とりあえずモンスター退治の報酬で考えよう」
俺たちが市場に戻ると、スーツ姿のおっさんがヤヨイを見て驚いていた。
「はい、依頼の報酬だよっ!」
「わぁい! これなら可愛いお洋服買えるかもっ!」
「すみません、ドレスっていくらくらいですか?」
「ドレスは高いからなぁ。そうだねぇ。モンスター退治の依頼30回分くらいかな」
ひえぇ、かなり先の話だ。
「へぇ、こりゃあ珍しいっ! かなり値打ちのある骨董品がいるじゃないか! その子を売ればドレス10着分の報酬をあげられるよっ!」
「ど、どういう?」
「そのままの意味さ! 貴重な機械だから高く買い取るのさ!」
「ま、マスター……」
そんなことはさせない、そう思った時だった。
「だめだよっ! ヤヨイちゃんは友達だもん!」
「そうですわ〜売るなんて考えたこともありませんわ〜〜」
おおっ、けもままたちが初めておっさんに意見するところを見た。娘の成長を見守るお父さんの気持ちだ。
「そ、そうなのかい……いや、無理にとは言わないけれど」
「すみません。ヤヨイは大切なみんなの友達なんです」
俺の言葉にけもままたちが大きく首を縦に振る。
「ふふふっ、仲良しなんだね。まぁ、危害を加えるロボットでなければここで暮らしても問題ないよ」
ヤヨイと一緒に喜ぶけもままたち。
ヤヨイはけもままたちのこころの成長にもいいのかもな。
そんなことを思ったのだった。




