表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<連載版>悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた  作者: ちくわ食べます


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/12

1話 悪役令嬢に睨まれて

こちらは短編を連載版にしたお話です。

6話までは短編の内容になります。

 僕は――この世界のモブだ。


 自分を卑下しているとか、自暴自棄になっているとか、そういう後ろ向きな話じゃなくて。

 未だに信じられないけど、どうやらこの世界は乙女ゲームなのだ。


 僕は、メインキャラはおろか登場人物でもなんでない。名もなきその他大勢、つまり脇役。

 これがモブと言わずに、なんと言えば良いのだろう。



 前世では川で溺れている子供を助けたところで力尽き、その生涯を終えた……はずだった。

 子供を助けた特典なのか分からないが、僕は運良く(?)転生することが出来た。

 


 問題なのは、まったく馴染みのない乙女ゲームの世界に転生してしまったことだ。


 広告を見て気になったから調べたことがあるだけで、ストーリーの内容なんて大まかなあらすじしか分からない。知識無双なんて夢のまた夢。


 僕が覚えているのは主要な登場人物くらいで、登場人物たちの関係性も知らない。ゲームの名前に至っては、もう忘れてしまったくらいだ。


 

 そんな馴染みのない恋愛至上主義の世界に、しかも学園を舞台とした乙女ゲームに転生してしまったわけだ。

 

 だけど僕は……やっぱりモブなのだとわからされた。

 待っていたのは恋愛とは無縁の生活を送る日々。


 良かったのは、ストーリーに絡むこともないからゲームのことなんて分からなくても生活に困まらないこと。


「次は席替えか。やっぱり俺は窓際が良いな。日差しが暖かいから」

「ははは。ダリウスは相変わらずだね」

「トリスタンはどこの席がいいんだ?」

「僕は目立たない後ろのほうがいいな」

「なんだよ。トリスタンだって相変わらずじゃん」


 王立学園の教室で、友人のダリウスといつもの様に何気ない会話をする。

 それは僕にとって居心地がいいものだ。

 

 だけど――今日は何かが起こりそうだった。

 

「なあトリスタン。セリスさんなんだけど……さっきからこっちを睨んでないか?」

「えっ?」

「待て、トリスタン。……凝視したら殺されるぞ」

「そんなわけ無いって、大袈裟な……」

「彼女……多分、トリスタンの方を見ている気がするんだよ」

「僕を……? そんなわけ無いって」

「いいから、こっそり見てみろって」


 ダリウスに促されてセリスさんの方を見る。

 侯爵令嬢、セリス・エリシュオン。

 

 黒髪ロングのストレートヘアー。

 身長は女子としては少し高い方。

 ツリ目でシャープな瞳は、アメジストを思わせる輝きがある。


 

 そんな彼女の評価は『怖い・恐ろしい』だった。

 

 セリスさんは、切れ味の鋭い目を更に研ぎ澄まして僕を睨んでいた。

 一瞬目が合ってしまい、気まずさから僕はあわてて視線を逸らす。


 うろ覚えだけど、セリスさんは悪役令嬢のポジションだったと思う。


 彼女はメインキャラなだけあって相当整った顔立ちをしている。

 どう控えめに言っても、綺麗な人だ。


 でも眉間には凶悪なシワが刻まれていて、世界を相手取って戦争をしかねない危ない目つきをしている。


 悪役令嬢としての役割もあるだろうけど、その見た目もあって彼女は周りから恐れられていた……。


 武闘派の上級生も彼女に逆らえないとか、背後に大物がいるとか……セリスさんには物騒な噂がついて回る。


 だけど、僕が見てきた限り彼女は悪い人じゃない。

 彼女は授業だって真面目に受けているし、悪いことをしているのは見たことがない。

 

 ただ、眉間にシワを寄せていて、威圧的で、眼光鋭く睨んでいるだけ。

 悪鬼の如く恐れられているが、彼女は怖い人じゃないというのが僕の結論だ。


「本当だね……僕、セリスさんに何か悪いことしたかな?」

「そんなわけ無いって。トリスタンみたいなお人好しが悪いことなんてするかよ」

「僕はそんなお人好しじゃないよ……」

「何いってんだ。充分お人好しだぞ。まあ、俺はお前のそういうとこが気に入ってるんだけどな」

「そ、そうかな。なんか恥ずかしいな」

「照れるなって!」

「照れさせたのはダリウスだろ?」


 僕がお人好しかどうかはさておき――。


 ダリウスと僕は、去年知り合ってから意気投合して以来ずっと仲が良い。

 3年制であるこの学園で、去年に続き2年生でもダリウスと同じクラスになれたことは、とても幸運なことだ。


「でもさあ。セリスさんって……本当に怖いよな」

「パッと見ると……そう見えるかも知れない。でもセリスさんは悪い人じゃないと思ってるよ」

「えぇ!? そうか?」

「うん、みんなが誤解してるだけだと思うけどね」

「あの凶悪な顔を見てそんなこと言えるなんて。トリスタンはお人好しにもほどがあるぞ」

「本当に悪い人じゃないんだけどなあ……」


 

 ダリウスを含めて学園のみんなは、セリスさんを恐れて声をかけようとしない。

 セリスさんが、まるで悪魔やドラゴンであるかのように。


 くどいかも知れないが、彼女は何も悪いことをしていない。

 それなのになぜ、こんなにも恐れられているんだろう?

 

 僕には……それが不思議で仕方なかった。

 もしかして、僕だけがおかしいのだろうか?


 彼女を怖いと思わないのは……。

 僕がゲームの外から来た存在だからなの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ