少女
よろしくお願いします。
ソラは立ち尽くしていた、というか内心焦っていた。
ファンタジーな見た目の少女がいたからではない。
ただ単に女の子と仲良くなったことなどないから、何を話せばいいのか分からないのである。
「…」
「…」
二人の間に沈黙が流れる。
少女は一瞬、こちらに不満そうな顔をしたかと思うと、今度は満面の笑みで
「待っていたよ!」
と元気に言い直した。
「…」
ソラは思った、なにか喋らなければ…、なにか反応せねば…と。
「…すいません…。ここってどこですか…?」
少女は少しキョトンとした顔になった。
「見ず知らずの少女に声をかけられて聞くことがそれなんだ…。ここは神都、神様のいた街、そして神様に捨てられた街だよ。」
あれ、ミヤコって読むんだ。
ソラは第一印象でそう思った。
少女は柔らかく微笑んでいる、少女から敵意はなさそうだ。
聞けば、何でも答えてはくれそうだが何を聞こうか、とソラは悩んだ。
少女はこちらを覗き込んだ。
「もういいかな?」
ソラはびっくりして後ろに飛び退いて、顔を何度も縦に振った。
「そういえば名前がまだだったね?」
「改めて、ボクの名前は”ツキヨノカナタノミコト”、長いし”カナタ”と呼んでよ。」
カナタと名乗った後にソラも少しずつ口を開き、
「ソラ…です。」
名乗れた?聞こえたよな?と何度も心の中で自問自答していた。
「ソラ…。いい名前だね!」
どうやら聞こえてはいたようだ。
◇◇◇
自分以外の誰かと出会えたのは良いが、神様?カナタ?ミヤコ?色々と混乱していた。
「え…っと…、どうやったら帰れるんですか…?」
ソラはカナタに向けて問いかけた。
「…」
カナタは少し熟考した後、ソラに笑顔で
「分かんない!」
と告げた。
え…!?俺、帰れないの!?
確かに普通には飽きていたし、なんならこういう異世界系にも憧れてはいたけども…!
ソラは色んな事を頭の中で巡らせていた。
「でも…方法がないわけではないと思うよ?」
カナタは微笑みながら優しく言った。
「古来より何か無理なことを為したいときは『神頼み』と言うでしょ?」
「この街に神様はいないけどお社程度だったらあるからもしかしたら叶う…かもね?」
カナタは大通りの奥を指さしながら言った。
ソラはぽかんとしながら聞いていたが、それしか方法がないならそうするしかないと思い
「じ、じゃあ…、そうする…!」
絞りだした声で決意を表明した。
◇◇◇
社に行くまでに周りには出店が並んでいた。
腹は減っていないが、いつまでここにいるかも分からない。
飢え死にしないためにもカナタに聞いた。
「ねぇ…、あの屋台の食べ物って食べれるの…?」
ソラは恐る恐る聞いた。
するとカナタは
「黄泉戸喫って知ってる?」
こちらを見て微笑みながら言った。
黄泉戸喫?聞いた事もない単語だ。
カナタは目を伏せながら言った。
「黄泉戸喫って言うのはね?あの世の食べ物を食べてしまったら、もうあの世の者になってしまうってことなんだ...。」
「つまり、ここはあの世ではないけど食べたら君の戻りたいという願いは一切叶わなくなるよ!」
なるほど...。でも神になれるなら悪くはない...とは思ったが、せっかくの忠告だ。食べないでおこう。
二人はネオンで煌めいた屋台の中を歩きだした。




