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前日譚
はじめまして、よろしくお願いします。
──少女は空を見上げていた。
いや、厳密には空ではないのかもしれない。
何もない真っ黒な空、星も月もなくただの暗闇。
「今日もいつも通りだ…」
少女は頭の左右から生えている耳をぴょこぴょこと動かせ、屋根の上に寝転ぶ。
建物の隙間から漏れるネオンの光が少女の銀の髪を照らす。
ー神都、少女がいるこの街はかつては神々が暮らしていた世界だった。
しかし、ある日のことだった。神々はこの街を見限り捨てたのだ。
理由は定かではない、ただ少女一人を残し、だれもいなくなった。
それからこの街はだれもいないネオンが煌々と光るだけの場所となったのだった。
少女は自身が神か人間か何かも分からない。むしろ少女には何の関心もない。
自分、一人の世界で何をしても変わらないからだ。
「今日もいい日だった…。おやすみ…」
少女は目を閉じ、眠りについた。