終止符の無い始まりの詩
タイヨウは強盗殺人事件に巻き込まれて命を落とした。
何もかも失い、何も遺せなかった自分でも、いつか日の目を浴びる日が来る。
そうでなければ、自分を信じることが出来なかった。
―――彼は再び家族との日常を取り戻すために。
トライアノスは川に溺れた子供を助けようとして自分も死んだ。
あの時、自分を曲げたことを後悔している訳ではない。
己の人生の中で、自分を貫けなかった事を悔やんでいるのだ。
―――彼は不甲斐ない過去を変えるために。
アスピーダは若くして家族もろとも惨殺された。
家族を守れなかった無力さを、強く実感した。
だから今度は、きっと護ってみせる。
―――彼女は家族を守るために。
アルファズルは老衰で息を引き取った。
最期まで、彼の目が開くことはなかった。
世界の全てを見て、知って、確かめたい。
―――彼は再び世界を視るために。
ケイルは暗い路地裏で飢えて死んだ。
親でさえ自分を見捨て、誰も救ってはくれなかった。
自分には価値が無いのだと思った。
―――彼は今度は裕福に生きるために。
アアルはその手に指輪を持ったまま通り魔に刺されて死んだ。
こんな自分でも、彼女は自分を支えてくれようとしていたのに。
最期にあの言葉が伝えられたなら、どれだけ良かったか。
―――彼は愛する人に言葉を伝えるために。
アビスは妻を亡くした後に自殺した。
もしまた会えるなら、どんなことでもやれる。
そのときはまた、二人で。
―――彼は愛妻を生き返らせるために。
ノーマンは戦争の中で撃ち殺された。
争いの酷さを、人の醜さを知った。
心の底から、平和な世界を願った。
―――彼は全ての罪なき者を救うために。
アダムは心を病み自殺した。
ただただ、自分が情けなかった。
何もやり返せず、助けを求める度胸も無かった。
―――彼は短い人生の続きを見るために。
イブは真冬の池に身を投げて凍死した。
もしあの時、自分がこう言っていれば。
救えなかったのなら、見殺しにしたのと変わらない。
―――彼女は過去をやり直すために。
フジコ、アロウ、ホルアーティ、チャン、ルーは病で命を落とした。
皆外を歩くことすらままならず、ただ朝と夜を繰り返すだけの生活だった。
一度で良かった。日の当たる屋外で、思い切り身体を動かせたなら。
―――彼等の願いは叶った。だから、次は誰かの夢のために。
シークは死刑になって死んだ。
普通の生き方を強制される世界には、もう飽きた。
自分は、自分のやりたいように生きるのだ。
―――彼は全てを壊すために。
ユヅキは満月の夜、交通事故に遭って死んだ。
自分には起こり得ないと思っていた。
ただただ、許せなかった。
―――彼女は世界から悪を消すために。
オウルは倒壊した家屋に押しつぶされて死んだ。
台風で破壊された我が家を、見捨てる事はできなかった。
確かに家族と過ごした日々が、そこには在ったのだから。
―――彼は家族《思い出》を取り戻すために。
これはまだ、序章である。
今、神戦《God Games》が、始まる。