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沼の王  作者: 月夜
2/2

ドブネズミ


       「泥のように眠り、沼のように沈みたい…。」




沼は、湖や池と何が違うのか?

その定義は実に曖昧である。


そもそも、この世界に存在する万物を勝手に分類し

解かった気になっている人間、知的生命体の定義など根源から曖昧なのだが


人同士で認識を擦り合わせておくのは、円滑なコミュニケーションを形成する上で

どうしても必要だ。


一応、湖よりは浅く沈水植物が最深部で繁殖できているとか、何とか

基準はあるようだが


だったら、底なし沼はどうなるのか

そもそも、どのくらい浅ければ湖ではないのか

やはり不明確だ


だが、不明確だからこそ沼たり得るのかもしれない



僕に言わせれば、沼なんてモノは汚い水が溜まっているかどうかだ


水場という清くなくてはいけない場所に、ひたすら陰湿な

汚泥が溜まっている場所


沼とは、生き物だが 死んでいるのだ。


植物から、動物…あらゆる生物の死骸の水塊


水分をやや多めに含んでいる汚物、それが沼だ


ある意味、人間と一緒である。



だが、そんな死骸の滞留した場所にも そこに住み着く生き物がしっかりと存在する


僕たち人間も含めて



よく我々は上の人間から”ドブネズミ”と揶揄される。


だが、ここにいる人間の多くはその言葉に別に腹も立てない


自分たちでも自覚があり、卑屈になりながら開き直って受け止めているからだ。



自分としては、このネズミと比べれば無駄に大きい身体を捨て去り

本当にネズミとして生きたいくらいだ


ドブネズミ共は、人間には絶対に通れないような道を見つけ使い、あるいは掘り

この沼世界を縦横無尽に行き来している。


我々には飲めないような沼の水を平気で啜り、爆発的に繁殖する

そして、病気を溜め込んでは、時々 上の世界にまで出没し

病気を撒き散らして、イケ好かない奴等、人間共を大勢殺す。


まったく、尊敬に値する生き物だ

人間の価値観で醜いと罵ったところで、神はネズミの方を愛しているのかもしれない


自分の歩く道の先を、我が物顔でゾロゾロと闊歩する鼠を見ていると

本気でそう思えてくる。



が、僕が住む階層には そんな小さく可愛げのあるネズミと一線を画すモノたちが別にいる。


”化け物ネズミ”


ただただ普通のネズミより大きく、丸々と太った豚くらいの大きさのあるネズミというだけであるが


彼らとの遭遇は命がけだ。


さっきの、小さいから人間の通れないところも通れる

という利点を捨て去ってはいるが、浅い沼ならガンガンと進んでいき

小さいネズミも捕食して

自分たちの縄張りを確保している。



実際、僕の前の仕事の相棒は化け物ネズミの襲われ死んだ。


ここでは、メジャーな死因の一つだ



『汚い』『穢れ』『不浄、不潔』『廃棄』『不衛生』『毒』『混沌』『死骸』



死骸の沼にたかるドブネズミ同士


人間とネズミの生存競争はここでは熾烈を極めていた。





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