第三章7 【10月29日/初等部4年生活動中】7/ミステリー・テラー2
【芳一】の公式【ストーカー】、【七無神】の1柱、【万能識のフィナレエンデ】は、彼に近づこうとする謎の存在を察知し、話しかけた。
その男?は、自分のことを【ミステリー・テラー(謎/神秘の語り手)】、もしくは、【ミステリー・ヒストリー・テラー(謎/神秘の歴史の語り手)】で【謎】に引き寄せられた存在だと名乗った。
【フィナレエンデ】は彼に退散を要求し、彼は素直に応じたが、少し、彼についての情報を得るために、【芳一】の家から離れた場所でちょっとだけ話をする事になったのだった。
【フィナレエンデ】は、
『ずばり聞くわ。あなたは何なの?』
と直球の質問をした。
【ミステリー・テラー】を名乗る男は、
『そう来ましたか。わたしはですねぇ~【謎】に対する【調整役】と言った所でしょうか?
この【世】を【ゲーム】に例えれば、【ゲームバランス】を【調整】する役目と言った所でしょうか。
余りにも強大過ぎる【謎】はどうしようもありません。
それだけで、【物語】は終わってしまいます』
と答えた。
『どういう事かしら?』
『簡単な話です。例を挙げましょう。
例えばです。現実世界にはたくさんの【アイドル】が居ますよねぇ~。
その【アイドル】の中に、一目見ただけで、全ての人間を虜にしてしまう、【超越的なアイドル】が出たらどうします?
他の【アイドル】は失業ですよね?だってそうでしょう?
その【絶対アイドル】は一目見ただけで、全ての人間を虜にしてしまうのです。
他の【アイドル】は【色】を完全に失います。
【絶対アイドル】は言葉を発しただけで、【狂い死に】を出すような異常とも言える【魅力】を持ち合わせています。
歌っただけで昇天して天に召される人が続出します。
これでは、【アイドル】としての性質を大きく飛び越えてしまっていますよね?
他の【アイドル】とのコラボや切磋琢磨、ライバル関係などは全てあり得なくなります。
つまり強大過ぎる【超絶対カリスマ】の【存在】は【アイドル】としては許されないのです。他の例も例えましょうか?
【ゲーム】の【ラスボス】の強さを絶対的にして、どんな攻撃も通じなくします。
するとどうでしょう?どうやっても【ラスボス】には勝てませんから、【プレイヤー】は【ラスボス】の所まで来たところで【ゲームオーバー】が決まってしまいます。
これでは、【ラスボス】を倒すための【ゲーム】としては成立しません。
自分の操作する【キャラクター】に対する自殺願望でも無い限り、ほとんどの者は【ゲーム】を止めてしまうか、【ラスボス戦】までたどり着かない様に引き延ばすでしょう。
これでは、【ゲーム全体の内容】が変わってしまいます。
そうならない様に調整するのが私の役目です。
【謎】は何処までも大きくなります。
そうならない様に、適当な所で、【現実化】させて、現実の存在に何とかなるかも知れないと思ってもらうのが私の役目となります。
こんな説明でご理解いただけますでしょうか?』
『あなたが【調整者】だと言うのは理解したわ。だけど、【唯野 芳一】に近づく理由にはならない。そこを説明して下さるかしら?』
『それも簡単です。彼が【謎】を飛び抜けて大きくした。だから、彼の様子を見る必要が出たのです。
【謎】とは【知的生命体】の【想像力】で大きくなります。
今まではそれでもある程度の【レベル】におさまって居ました。
ところがです。彼は、その【レベル】を飛び越える【発想】を思いついてしまった。
今まで【知識】が及んでいない所まで開拓し始めたのです。
彼から学んで、【知識】を増幅させた者も少なからず居ます。
全ては彼の【謎】を強大にさせる【発想力】が引き金になっています。
彼が【謎】を極端に大きくしたのです。
彼以前には、【謎】の性質について研究する者はそれほど多くは無かった。
ですが、彼の【作品】が発端となり、多くの者が【謎】そのものの【性質】について考える様になった。つまり、私としては、彼をそのまま放っておく訳には行かないのですよ。
このままでは、【謎】は、手の付けられない程強大になる。
そうならない様に、調整しに来たと言う訳ですよ。
私が調整出来る内にね』
『なるほど。仕事をしに来ているって訳ね。その【謎】って言うのは何なのかしら?』
『それは上手く答えられませんね。なぜならそれはとても【曖昧】であり、【存在】が確定していません。それは【1名】であり【群体】の様な【集団】であり、全く別々の【複数】でもあります。だから、どれですって訳には行かないのですよ。
ただ、貴女方7柱がついている彼や2人の女性を中心に、【謎】は形を取ろうとしている。
私はそれが大きくなり過ぎない様に、調整しにやって来ている訳です。
そう言う私も【大きな謎】とは別の【謎の塊】ですけどね。
【謎】には色々と【ランク】がありましてね。
私は一番大したことの無い【ランク】で【謎】に対する【小間使い】の様な者ですね。
【謎】は不思議がってくださる【存在】が居てはじめて【謎】である【意味】がありますからね。
誰も【謎】と知覚出来なければそれはそこに【或る】だけです。
【謎】は【謎】で無くなると言う訳ですね。
そのために、私の様な【調整屋】が【謎】を適度に【実体化】させる【調整役】を買って出ているわけです、はい』
『ふぅ~ん。で、【謎】の【ランク】ってのはどれくらいある訳?』
『さぁ?下っ端の私には何とも。上には上がありますからね。
ただ、それでも言える事はありまして【彼】が出そうとしている【謎】は際限なく【上】をあぶり出す危険性があると言う事です。【人間】が【想像】出来る事には限りがありますが、それでも【人間】が考えられる最大級の【謎】が彼の手に寄って生み出されようとしているのは間違いありませんね。
それとですねぇ~、【謎】と一口に申しても色々とありますが、私とその【人智を越え過ぎた謎の塊】以外で、私が確認出来た【力ある謎】は、11種類ほどありましたね。
どれも私のレベルを大きく超えるものばかりですが、【人智を越え過ぎた謎の塊】と比べれば遙かに問題にもならない【格下】ばかりです。
そう言えば、彼が生み出そうとしている【謎】が如何に危険性を秘めているかご理解いただけるかと思います』
『なるほどね。【神魔】を脅かす7つの中でも【謎の何か?】は、完全なる【別格】って事ね。出たら【アウト】ってのはあながちハッタリでも無さそうね。
ありがとう。参考になったわ』
『そうですか?お役に立てて何よりです。では、これ以上私に触れると何が起きるか解りませんから、そろそろ退散させていただきますよ。ではまた、来るべき時にお逢いしましょう』
『出来れば逢いたくないけどね』
『そう、おっしゃらずに。では、また・・・』
『あぁ~怖かった・・・』
と言う会話となった。
【芳一】のあずかり知らぬ所で、【途方もなく大きな物】は確実にうごめいていたのだった。