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番外編 不幸な逃亡者

 俺は、背中までの青い髪を持つ少年だ。

 

 俺の名前はテューだ。

 今の名前の方が言いやすいために、自分でも気にいっている。

 花属性だ。


 彼女の名前は、リーベ。

 炎属性だ。

 しかも、一人称は「僕」で、ござる口調で話す。

 

「テュー君、おはようなのでござる」


「おはよう」


 こんな何気ない幸せがいつまでも続くといいな・・・。


 だけど、俺には呪いがかけられていて、その名も「不幸寄せ」と「死に寄せ」だ。


 不幸寄せは、その名の通り、不幸を呼び寄せる。


 死に寄せとは、俺のまわりで、殺人事件が起こるということだ。


 ポスターを見ると、緑髪の男が、指名手配された髪、あっちこっちに貼ってあった。


 さて、今日は勇者に会う日だけど、ロリには嫌気がさしていた。

 幼女のことなんて、面倒みきれない。

 何よりも、ロリにトラウマを持ってしまったことが強いのだけども。


 今回は、ショタを勇者として迎える日なんだ。

 名前は、チーコ。

 右目が青い瞳で、左目が赤のオッドアイで、左目の方に不思議な力を宿していると聞いた。

 そして、青髪の少年。


 リーベと一緒に、チーコを迎えた。


「初めましてなのでござる、僕はリーベなのでござるよ」

「俺は、テュー」


 自己紹介をした。


「おいらは、チーコです。

決して、下ネタを発してはいないですぞ」


 チーコの一人称は「おいら」で、ですぞ口調で話す。


 チーコはとにかく、かわいい。

 年齢は、10代。

 

 リーベと、俺で、チーコをかわいがった。

 

 ちなみに、どういう経緯かはわからないけど、チーコは自分の名前を嫌っている。 

 

「おいらの名前は、下ネタから考え出されたと、友達に言われたのですぞ」


「そんなことないのでござる。

きっと、両親も真剣に考えてくれたのでござるよ」


「名前かあ。

こればっかりは、自分じゃどうしようもできないからなあ」

 

「チーコも、いつか自分に自信を持てるようになれる。

だって、勇者として選ばれたのだから」


 チーコも、名前が知れている有名な勇者・・・。

 まあ、リコルドほどではないけどな・・・。


 リコルドは、世界で一番有名な勇者嬢だけど、この世界での最強で、最低な悪役令嬢だってことを、世間は知らない。

 だって、あいつはいい子を演じることができるから・・・。


 それまでは、幸せな生活を送っていた。

 だけど、その幸せは、不幸な形で、裏切られることになる。


 そう、チーコとリコルドの婚約が決まり、二人は結婚することになった。

 まだ、年齢的には籍を入れられないために、事実婚という形で、一緒に暮らすことになった。


 勇者嬢を倒すことなんて、どうでもよくなっていた。

 俺は、勇者と関わっちゃいけないのかもしれない・・・。


 みんな、裏切るんだ・・・。


 リコルドは、俺の正体なんて気づいていないだろうけど、顔も見たくなかった。

 自分で、自分が惨めになった。


 過去のトラウマを乗り越えられていないことを、痛感した。


 そこで、僕はリーベからこの町を離れることを提案した。


「一緒に、逃げよう・・・・」


「使命は、どうするのでござるか?」


「使命なんて、どうでもいい。


元の世界に帰れなくても、いい。


誰のことも、失いたくないから。


リコルドの味方になってほしくないし、殺されたくないから・・・・」


 僕は、泣いていた。


 大の男でありながらも、泣いていた。


「僕は、わかっているのでござるよ。


君が人の何倍も、頑張っていることくらい・・・。


君は、何度転生しても、変わらないのでござるね。


だったら、僕ができることは、だだひとつ。


テュー君が壊れてしまわないように、支えてあげることぐらいなのでござる」


「ごめんな・・・。


こんな弱虫で。君を振り回すことになって・・・」


「いいのでござる。


いくらでも、僕を頼ってくれても、いいのでござるよ」


 俺は、弱いってことが自分でもわかっていた。

 だれかに支えてもらわないと、簡単に崩れてしまうくらい。プリンのような心だった。


 だけど、リーベはそんな俺を抱きしめてくれた。

 愛してくれた。

 恋人のままでいられる・・・。


「大人になったら、何がしたいのでござるか?」


 俺とリーベは、リコルドやその王様から離れるために、電車に乗っていた。


「どうなるんだろう・・・?

俺は、これから、どうしたいんだろう?


このまま異世界にいるのかわからないし、人間世界に帰れるかもしれないし・・・」


「なら、僕はどの世界にいても、必ずできることをするのでござる」



「するって、何を?」


「結婚と、子供なのでござるよ」


「え?」


「結婚したい人を、決めたのでござるよ。


テュー君と、結婚したいのでござる。


子供は、男の子と女の子、両方ほしいのでござる」


「俺は、自分の子供を愛せるのだろうか?」


「愛せるでござるよ。


自分の子供は、いつでもかわいいのでござる」


 だって、俺は子供にトラウマを抱えてしまったから、子供を愛せるかどうか・・・。


「テュー君は、まずは自分を信じることから始めるのでござる。


僕も、テュー君を信じているから・・・・」



 電車を降りて、俺とリーベは歩いて行った。

 どこまで歩いていくのかわからない。


 だけど、リーベとなら、どこまでも歩いていけそうだった。


 しばらくしたら、リーベは妊娠した。

 男の子か、女の子かは、まだわからない。


 リーベが妊娠したということは、戦えないということになる。


 追いかけてくるはずのない人たちから逃げるのは、また追われるかもという恐怖から。


 だけど、リーベはどうして、こんな俺にいつまでもついて行ってくれるのだろう?

 俺を愛してくれているという証拠なのかもしれないけど、その割には何か違和感がある。


 ここで、頭の中で映像みたいなものがでてきた。


「君は、この世界で、僕に依存するのでござるよ」


 この言葉が、頭の中で響いてきた。

 なんだ、この声・・・?


 初めて聞いた言葉じゃない。

 これは、リーベと同じ声だ。


 何か、身に覚えがある。

 思い出せ、どうしてこの世界にやってきて、どうやって来たのかを。


「君は、僕を選んだ・・・・のでござる・・・・」


 大丈夫。

 少しずつ思い出せ・・・・。


 思い出すんだ・・・・。


 緑の髪の聖女、紫の髪の聖女、ピンクの髪の聖女、赤髪の聖女と、次々と頭の中に映像が出てきた。

 最後の映像は、青髪の聖女のリーベだった。


「リーベ、君は何者なんだ?」


 リーベは、その場でにやりと笑った。

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