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最強魔王のリベンジライフ  作者: 海坂キイカ
4/7

ダンジョンでの異変

それから数時間後。


クラウン達のパーティーは2階層、3階層を踏破した。現在は4階層目を探索している。


新米向けのダンジョンとはいえ、ここまで来ると明らかに魔物の強さが増している。

他の冒険者パーティーの数も少ない。あまり油断すると痛い目を見るだろう。


しかしいまだに危険魔物とは遭遇していない。


もはやこの洞窟に危険な存在はいるのだろうか、と疑問を持ち始めながらも四人は進んでいく。


「暗くなってきたな…」


洞窟内の松明の数が少ない。

魔法的処置がされているので消えることはないが、視認性が低いのはとても危険だ。


いつどのような襲撃に会うか分からない、そのような状態で先程の男が言ってた連中と遭遇してしまったら非常にまずい。


「薄気味悪いわね。罠とか大丈夫かしら」


クラウディアの声色に少し恐怖が混じっていた。


それは仕方のない事だった。

薄暗くてひんやりしているのだ、誰だって不気味に思う。現にクラウンも嫌な雰囲気を感じている。


等間隔に設置してあるたいまつの明かりは、次の光に届いていない。

明かりが弱いのでこの先に何がいるかわかりづらい。


……とはいえ、クラウンには関係ない話だ。

人族であるヘンリー、クラウディア、ティアは不便だろう。


魔族であるクラウンからすれば、暗闇など無いのに等しい。今も昼間の平原の如く視界が澄み渡っている。


こういう魔族にとったら当たり前の能力が、今の自分からすればとてもありがたい。

もしこんな能力を持っていなかったら、弱った状態でこのような場所は来なかったはずである。


「これじゃあ何が来てもわかりやしねぇ。たいまつを灯すから待ってろ」


ヘンリーがたいまつを取り出す。


「…それでしたら私の光魔法を杖に灯しましょうか?」


確かに魔法で照らしてくれるのなら松明よりも明るく、使い勝手が良い。


しかしデメリットもある。


「ありがとう、でもたいまつの方がいいね。ここから先はなにがあってもおかしく無い。いざという時にティアの魔力が少なかったら危険かもしれない。ヘンリー明かりを頼む」


そう判断してティアの提案を断った。


「分かったぜ。

……ほら、これで少しは明るくなったろ?」


松明によって急激に明るくなった。

離れた場所でもよく見える。


松明は闇夜やダンジョンを渡る冒険者には必需品であり、また武器にもなる優れた万能道具だ。


松明に照らされた事で、なにかが近づいているのがヘンリーにはわかった。


その正体はアンデッド。

こちらに気づいてるの気づいてないのか、無言で行進してくる。


暗闇も合間ってヘンリーは一種ギョッとする。

こんな場所で遭遇すれば非常に恐ろしいものである。


「アンデッドが出たわね。それも結構大量みたい、ゾンビにスケルトンってとこかしら?」


「そうだな。大方(おおかた)、ここで生き絶えた者たちというとこか」


服装や武器は冒険者たちがよく身につけているものと同じであった。

アンデッドの種類はいくつもあるが、発生の仕方は大まかに二通り。

 

一つ目は自然発生したアンデッド。

場所は問わずいつのまにか地面から這い上がってくる。

自然発生の真の原因は掴めておらず、巷には様々な噂が飛び交っている。


その中でも有力な説は、大地にマナが多く含まれている。とか、地中の肥沃さが関係している。とか、その土地は呪われいてる。とかなどである。


正直どのような説も抽象的でパッとしないし、実際原因も解明できていない。


二つ目は死体をよりしろにしたアンデッド。

この説は有力視どころか、一般の共通認識である。

実際、死体が放置されている数が多い地域の方はアンデッドが多く発生している。


他にも魔術師がアンデッドを生み出す闇の魔法や、自身をアンデッドにする魔法があるといわれるので、一概にはいえない。


だが、目の前にいるアンデッドは死体ゆえに発生したのだろう。


アンデッドは自然発生する者達を除いて、死ぬ以前の強さに比例する。

冒険者ランクが高かった者のアンデッド方が一般のアンデッドより強いのである。


しかしそれも微々たる差。

クラウンにとっては、いやこのパーティーにしてみれば、いくら強かったところでスケルトンはスケルトン、アンデッドはアンデッドだ。

まだ結成して1年ほどのこのパーティーでも余裕に倒せる。


「たいした事がないっていってもこれだけの量だ。

幸い一方通行で囲まれないが、少し本気でやる必要があるぞ」


ヘンリーはそう言って両腰に帯刀している短剣を引き抜く。


「援護は任せてください」


ティアが後ろへ少し下がり、後ろから魔法の後方支援をする構えをした。


「あぁ、頼むよティナ」


クラウンの声が聞こえるとにっこりと笑って、すぐさま臨戦態勢の真剣な顔になり、前を見つめる。


クラウンは剣を持ち、ヘンリーは双剣を持ってアンデッドに向かって走る。


対するアンデッドは迎え撃つという姿勢のようで、こちらに向かって動かないでいる。


「オラァ!」


「……」


ヘンリーは荒々しくも颯爽と、クラウンは無言で作業の如くアンデッドを始末していく。

脅威は数だけのようで、二人からしてみれば少し強めの冒険者アンデッドもたいした事がない雑魚だ。


さらに追い討ちのようにクラウンの後方からティナが光魔法を放ち、アンデッドやスケルトンに強い光を浴びせる。

そのおかげで一気にアンデッドは崩壊する。


楽勝だろう。


アンデッドやスケルトンのなどの弱い魔物は数で攻めて来ると厄介だが、そんな隙は与えない。

数分と待たず、完全に駆逐されるその前にアンデッドの背後に嫌な雰囲気をクラウンは捉えた。


「ん、レイスか?」


アンデッドの後ろに透明だが、空間が揺らいで何が動いている。仮に、クラウンがこの洞窟を他の者と同じように暗く見えていたり、魔力や生命の気配に感じる事ができない人間だったならば気付くのは困難だっただろう。


「どこにいる?」


聞いてきたのはヘンリー。


「アンデッドの先だ。

今はまだこちらに向かってくる様子はないが、警戒する必要がある」


「……厄介だな」


ヘンリー、いやこのパーティーからしてみればレイスはとても厄介だ。

レイスはよく日が暮れた時に出現する、アンデッドやスケルトンの上位互換のような存在だ。


闇に紛れ人間を狩る。

魔法的な攻撃はしないし、身体能力はたいした事がない。

しかしクラウンを除いて魔力や生命、透明探知能力やアイテムを用意していないこのパーティーには難敵だ。

 

「まあいい、レイスは俺がやる。後ろのアンデッド達は頼んだぞ」


クラウディアは後ろを振り返った。


「えっ、うそ?いつのまに!?」


アンデッドが先ほど以上に大量に湧いていた。

挟撃されないよう後ろはよく確認していたつもりだ、なのにいつのまにかこんなに大量に発生している。


一体どういうことだろうか。

背中に嫌な汗をかくが、そんなことは気にしていられない。

追い詰められる前に素早く背後の敵を叩くべきだ。


「こんな状況にさっきのおっさんもなったのか?だが俺らはこんなとこで挫けねぇぜ、いくぜクラウディア!ティナ!」


「ええ!」


「はい!」


後ろで剣戟や3人の声が聞こえる中、クラウンはじっと目の前のレイスたちの出方を伺っていた。

数は3体。当たり前だがこれと戦うのはクラウンだけ。


さあ、どうでるか…。


パワーダウンしたこの身でレイスと戦うのは正直、少しどころかかなり不安だが、自分の今の力を調べられる良い機会である。


両者は一定の距離で立ち止まり、睨み合う。

アンデッドに睨むなどという概念があるのかわからないが、確実にレイスたちはこちらを注視していた。


先にレイスが動く。

中心にいたレイスが素早くこちらへと移動し、素早く剣を振り下ろした。


キィンン……と、息を呑むような剣戟音が生じる。


クラウンは少し後方へ押される。

魔人の筋力を持ってしても、かなり力を持ったレイスなのが分かる。


クッ…!


その後方斜めから2体目の戦斧を持ったレイスが斬りかかってくるが、バックステップで躱す。


両者は距離を置くがそれも一瞬のうち、再び接近し3対1の格闘戦を始める。


鈍重なアンデッドとは思えない速さの攻撃。

なかなかな連携も相まってクラウンは反撃はおろか、避けることもままならないで、次第に押されていく。


そして遂にレイスの一体の刃が、クラウンの腹部目がけて強烈な一撃をお見舞い


うぉっ!?


しかし間一髪、そこに剣を刷り込ませて腹部は防御することに成功。

しかし勢いを殺せずに後ろへ吹っ飛ばされた。


「うっ!」


虚空に浮かんだクラウンは宙一回転。

お世辞にも綺麗では無い。しかし、膝を折り曲げ爪を地面に引っ掻くようにして、吹っ飛ばされた力を強引に押し殺した。

だがそのせいでわずかだが、視線を地面に移してしまう。

戦いで一瞬でも相手から視線を外すと、命取りになりかねない。クラウンは素早くレイスに視線を戻して状況を確認する。


そしてクラウンの目に映ったのは驚愕の出来事。


なんだと?

魔法も使えるのか!?


真ん中のレイスが指先から暗黒の火の玉を作り出していた。

どうやらここのレイスは肉弾戦だけでなく、魔法にも長けいるらしい。


「こんなレイスが!?」


驚くのも束の間、勢いよく発射された火の玉はクラウンへと飛んでくる。


しかしクラウンはまともに動けない。

そして、ただ、その向かってくる火の玉を眺めることしか出来なかった。


――――――


「こいつら…いったい何体いやがる!?」


倒しても倒してもアンデッドは無数に湧き出てくる。

先程の30体どころの騒ぎではない、今いるだけでも軽く見積もって、50体以上はいるだろう。


果たしてこの数を対処し切れるのだろうか。

倒してももしかしたらまた出てくるかもしれない。


ヘンリーの額からは嫌な汗が一筋落ちていく。

これは長い夜になりそうだ。さっきの冒険者の人が言っていたように、ここは自分達が想像もしていないような恐ろしい場所なのかもしれない。


もしかしたら、ここは二度と出て来られないような迷宮。


そんな風にヘンリーには思えてきた。


横のクラウディアもティナも疲労の色を浮かべている。

絶望的になりつつある状況かもしれないが、進もうと提案したのはヘンリー。


ならばここで言い出しっぺが挫けてはいけない。

横の2人を励ます時だ。




それに…。


前はクラウンが止めてくれてる。

だったらなんとしてもあいつの背中は守らなくちゃいけないのだ。

 

と、その時後ろで大きな爆発が起こる。


「なんだ!」


急いでヘンリーは振り返る。

何が起こったかはよく分からないが、クラウンが何かに当たったのは確実だ。


後ろは砂煙が待っていて何も見えない。

横のクラウディアとティナの2人も、ギョッとしたように後ろを見ていた。


「クラウン大丈夫か!?」


「しっかし困ったもんだね…。こんな器用なアンデッドがいるなんてさ」


砂煙が徐々に晴れて、その中心には仁王立ちしているクラウンの姿があった。


「大丈夫だ!心配はいらない」


返事をするクラウンは声色は普段と同じだった。

いやむしろどこか余裕を感じさせられるかもしれない。

また、剣を杖代わりついている。その姿は必死というより、むしろ上品な佇まいだ。


とても、火球が直撃した後の姿とは思えない。


「さてどうするか…?」


避けようと思えば今のクラウンでも()けれた。

わざと受けたのには理由がある。


一つは目はクラウンが魔法避けたことで後ろにいるヘンリー達に当たってしまうことを危惧した事。

二つ目は闇属性の攻撃、魔法などの攻撃対する抵抗を魔族が持っている事だ。


では次にどう動くか。

刹那で様々なことを逡巡し、再びクラウンはレイス達から距離を取らことを選んだ。


後ろにいるヘンリー達との距離を確認して、レイスの戦斧の間合いに入らないようにしたのだ。

しかしそれは本当に正解なのだろうか。


間合いができたことで、レイスは再び魔法を生み出す。

しかし、今度は一体ではなく三体全員の指から闇の炎が生み出された。


この状況はかなり危ないはずだ。

自分は軽症言えども、もしかしたら後ろの3人を巻き添えにしてしまう危険性がある。


…しかしこれはクラウンの読みどおりだった。


次にクラウンが取った行動は後退ではなく、前進。

猛スピードでレイスの方へと距離を詰める。


無機物的な反応をしたレイスだが、動きは変わらず、そのまま炎をクラウンへと発射する。

そして一瞬。


バアァン!とクラウンと三つの魔法が衝突した。


「なんだぁ!」


「きゃあ!」 


「うっ!」


アンデッドの対応をしていた3人は、魔法の餌食にならなくとも、爆発で生じた衝撃波に吹き飛ばされ、アンデッド共々吹っ飛んでいった。


―――――。




レイスは目の前の男の反応が消えたのを察知した。

意思のない彼らは、残りの3人を排除するべく前にできた巨大な土埃を進んでいく。


……が、それは間違いだった。


土埃に入った瞬間、突如一体のレイスの反応が消える。続いてもう一体のレイスの反応も。


異常だと思ったのか、知識が一部残っているのか、端にいたレイスが後ろへ後退し土埃から脱出する。

何も見えないながらもレイスは索敵を始める。


すると、ある男が土埃から飛び出してきた。

男の名前はクラウン。煙の中でレイス2体を葬ったのだ。

そのままクラウンは先手を取って、レイスの頭蓋骨を叩き切るように大上段の一撃を放つ。


しかしこれは防がれてしまった。

それでもクラウンの攻撃はこれからだ。

強烈な一撃の後に、間髪入れないような素早い乱撃がレイスへと襲う。


「一体になればこっちのもんだ!」


先程防戦一方を強いられていたクラウンだが、今度はレイスの番だ。

そのうち防御が回らず、まともにクラウンの攻撃をくらってあっけなくレイスは霧のように消滅した。


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