プロローグ1 かすかな記憶
初投稿です。
プロローグ1は作品にあまり関係しないのでスキップしてくれても構いません。
ミーンミンミーン………。
ミーンミンミーン…。
八月上旬の雲一つない青々とした空。
蝉時雨がどこからともなく聞こえてくる。
これといったものは何もない、ごくごくありふれた美しい田舎道。
そんななか、二人の子供が歩いていた。
「あっつ〜」
「う〜、クランたらさっきからそればっかり」
「だって暑いんだもん」
「もう少しで着くから我慢して」
「わかったよ」
半袖半ズボンの少年の名前はクラン。
銀髪、黄色の瞳、純白の肌の美しい容姿を持った少年。
彼は額にかいた大量の汗を拭う。
その隣を歩いている少女、名前をラクイエル。
白いワンピースを着ており、真っ白な肌と銀髪、蒼い瞳を持ったとても可憐でありながら、恐ろしいほど美しい少女である。
二人は暑いながらも歩いて海に向かっていた。
貝殻を拾おうと先日約束していたのだ。
「……ん?」
少女が小走りに先を急ぐ。
「ラクイエルどうしたんだよ?」
少し先まで行った彼女はこちらへ向かって手招きをする。
「ねぇ!来てきて!」
「え?何?」
「いいからこっちに来てよ」
言われるがままに走って彼女の元へ辿り着いた。
そして目の前の景色に圧倒する。
「すっげぇ!」
「ふふっ」
そこには視界いっぱいに大海原が広がっていた。
どこを見渡しても永遠に続いていくような青い海。光は反射する姿はサファイアのよう。
今まで見たどんな景色よりも美しく、圧巻である。
光をいっぱいに受けて反射するその姿はさながら最果ての楽園であった。
海を燦々と照らす雲一つない青空は、上に二つ目の海があるよう。とにかく美しい。
海まではまだ1キロほどあった。
それほど離れた坂の上から見ることで、より一層海が綺麗に見え、遠い先まで見渡せる。
「とっても綺麗……」
「そうだな、早く行こうぜ!」
「うん!」
走り始めた少年の後を、少女が楽しそうに追いかけて行く。
どんなに美しい景色の時間も、星の幾星霜と続く果てしない時の中では刹那である。
何十年、何百年とすれば景色も変わり、二人の姿もいないだろう。
しかしだからこそ、今この一瞬は何よりも尊い景色なのであった。
――これから始まる物語は海の先に行ったとしても決して辿り着かない、どこか遥か彼方の異なる世界の物語。
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